「面白い」には理由がある!大ヒット漫画を分析(第1回)

戦え!と叫ぶ『進撃の巨人』~アナクロニズムの逆襲

2013.12.29 Sun連載バックナンバー

 マンガにおける、肉体、根性、執念、熱血、命懸け……といった要素が「時代遅れ」だと感じられるようになって久しい。現在は頭脳、知略、クール、合理性、スタイリッシュ、ナイーヴといった要素が主流になっている。しかし『進撃の巨人』はそのような「今風」の業界戦略を無視し、剥き出しのまま忽然と現れた。

 

戦わねば食われる

 命懸けで努力して、欲しいものを手に入れようとしたり、恋人をつくろうとする……その果てが成功であったり幸せであったり、はたまた挫折であったり失望であったりするわけなのだが、今の時代は「情報」が豊富で、努力する以前からヘンに見通しが立っていたりする。または繊細でありすぎて、勝算の低い勝負には挑まず、行動しないことによる「可能性」だけを担保に心の安寧を守っている。恋愛にしても、傷つくくらいなら、敢えて一人の平穏を選ぶ。「足るを知る」は「強欲」に対する戒めを含んだ言葉なのだが、「欲」の基準をうまく落とせば「敗北」の危険を冒さずとも平穏が手に入るという、「戦わない」ことへのキレイな理由として遣われる傾向もある。

 マンガにせよ、ドラマにせよ、今は「戦う理由」をなかなか見つけ出せないでいる。逆にいえばその「理由」をうまく見つけ出した作品が成功の可能性をたぐり寄せられるわけだが、「進撃の巨人」は問答無用にその世界観を提示したのである。つまり、「戦わねば巨人に食われる」世界。最初から人間に天敵が存在する世界だ。人間は、立体機動装置と刃がなければ、画面でちんまり描かれている「3m級」にすら蹂躙される存在であり、限られた壁の中で暮らすことを余儀なくされている。

「な…何でお前らは…戦えるんだよ」
「仕方ないでしょ?世界は残酷なんだから」

 人体模型のような巨人に人間が宙を飛び挑みかかる、まずそんな絵面のインパクトに引き寄せられる。連載開始からほどなくアニメ化や映画化の話が出たのには、その奇妙キテレツな絵面に映像クリエイターが飛びついたという理由もあったと思う。そして、身体の描線は心許なくとも目線だけはやたら強烈に描かれた人間たち、「戦わなければ勝てない」と叫び、命懸けで挑み、血を流し、次々に仲間が死ぬ、そんな「アナクロ(時代錯誤)」といっていい物語は、今の時代、逆に鮮烈なインパクトを与えたのかもしれない。… 続きを読む

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酒式/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

酒式/studio woofoo(www.studio-woofoo.net)

脱サラして漫画家を志し、週刊少年サンデーで漫画デビュー。その後さまざまに名前を変えて作品を出しながら、漫画の世界にしがみつく。日本酒党。

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