城メグリスト・萩原さちこの「名城に学ぶ」(第20回)

備中松山城/雲海に浮かぶ、日本で唯一の現存天守

2014.09.22 Mon連載バックナンバー

 こんにちは。城メグリストこと城郭ライターの萩原さちこです。前回の犬山城の記事はいかがでしたか?人気の城や話題の城にスポットを当て、魅せられる理由や感じたことを、時にビジネス視点も交えながらお伝えするこの連載。最終回は、備中松山城(岡山県高梁市)です。

 

山城に天守があるのはなぜ?

 備中松山城は、日本に現存する12棟の天守のなかで、唯一の山城です。山城とは山全体を城地にする城のこと。天守が誕生する以前は、山城が主流でした。天守を備えるようになると、城は小高い山や平地に築かれるようになります。ですから、あえて山城を選んで天守を築くことはほとんどありません。

 では、なぜ備中松山城は山城なのに天守があるのでしょうか。それは、中世の城から近世のスタイルへとリフォームされた、新旧ブレンドのお城だからです。中世には全山を一大要塞化した巨大な山城でしたが、後にその一部だけを現在の姿に大改造。リフォームされた際にニューアイテムとして天守や石垣が築かれたのです。

 備中松山城はめまぐるしく変わる時代に応じてさまざまに変化を続け、しかもいろいろな時代の片鱗が残る、全国でも貴重な城。ひと粒で二度おいしい、見どころ満載の欲張りな城でもあります。

 

現存する天守と二重櫓

 備中松山城のある標高480メートルの臥牛山は、北から大松山、天神の丸、小松山、前山の4つの峰から成ります。小松山の山頂に建つ天守は、二重二階で高さは約11メートルと、現存する天守のなかで最小ですが、なんといっても日本最高所の現存天守ですから一見の価値あり。西側から見ると二重三階のように見えるのは、かつて渡櫓という廊下のような建物が天守に直結していて、その連結部だけが残っているせい。扉のない素朴な入口になっているのもこのためです。

 特徴のひとつは、内部に囲炉裏があること。おそらく籠城時の備えなのでしょう。装束の間と呼ばれる、籠城時に城主一家が籠る部屋もあります。装束の間は、忍びの者も侵入できないように床下に石が詰め込まれているという工夫も。入口の前をわざとクランクさせたり、裏側は石垣を屈曲させたり、石落としを狭い間隔で設けたりと実戦に備えたしかけもみられます。… 続きを読む

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萩原 さちこ (城メグリスト)

萩原 さちこ (城メグリスト)

城郭ライター、編集者

執筆業を中心に、メディア出演、講演、講座もこなす。著書に『わくわく城めぐり』(山と渓谷社)、『戦国大名の城を読む』(SB新書)、『日本100名城めぐりの旅』『「現存」12天守めぐりの旅』(学研パブリッシング)、『お城へ行こう!』(岩波ジュニア新書)など。『月刊歴史読本』(KADOKAWA)で「萩原さちこのこだわり城郭探訪」連載中。文化財石垣保存技術協議会会員、日本城郭検定公式サポーター。公式サイトはhttp://46meg.jp

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