城メグリスト・萩原さちこの「名城に学ぶ」(第18回)

松江城/美しさの裏に闘志を秘めた現存天守

2014.08.25 Mon連載バックナンバー

 こんにちは。城メグリストこと城郭ライターの萩原さちこです。前回の金沢城の記事はいかがでしたか? 人気の城や話題の城にスポットを当て、魅せられる理由や感じたことを、時にビジネス視点も交えながらお伝えするこの連載。第18回は、松江城(島根県松江市)です。

 

現存天守のなかでも人気のビジュアル

 松江城の天守は、全国に現存する12棟の天守のひとつです。天守の平面積は姫路城天守(兵庫県姫路市)に次ぐ第2位。タワーのように縦長ではなく、どちらかというと横に長いどっしりとしたフォルムです。下見板張りの黒壁は、姫路城天守の白漆喰壁の優美さとはひと味違う、落ち着いた力強い印象。壁面には大きな入母屋破風が配され、千鳥が羽を広げたように見えることから別名・千鳥城とも呼ばれます。

 天守は四重五階とする説と、五重六階とする説があります。それは、ニ重目の東西に張り出している屋根を一重にカウントするか否かの違いです。よく見ると、入母屋の屋根が漆喰壁までしか伸びておらず、1メートルほどのスペースがあります。これを理由に屋根ではなく出窓とすると、四重になります。

 

内部に向けられた狭間に注目

 天守の最大の魅力は、繊細でバランスのよい外観の裏に隠された、異常なまでの臨戦態勢です。松江城は城下町の雰囲気もあいまって穏やかな雰囲気に包まれる城ですが、築城が開始されたのは、1603年(慶長11)のこと。尼子氏に代わり月山富田城(島根県安来市)に入城した堀尾吉晴・忠氏父子が、藩政にふさわしいこの地を選び新築しました。まだまだ戦乱の時代ですから、実戦仕様なのです。

 それを実感できるのが、天守の入口に付属した付櫓(つけやぐら)です。現在、天守へ上がる際の玄関となり、靴箱が置かれている小さな建造物が付櫓です。見学者用の入口としてうまく活用されていますが、もちろんおもてなしを意識して広いエントランスにしているわけではありません。敵が天守へすんなりと侵入できないよう、城兵が射撃するスペースとして設けられています。

 天守に敵兵が近づいてきたなら、城兵は付櫓に陣取って狭間石落としから射撃し、天守への侵入を阻止します。攻撃スペースは半地下になるため、地階入口に敵が足を踏み入れても即座に斜め上から射撃できるようになっています。

 付櫓の役割はこれだけではありません。… 続きを読む

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萩原 さちこ (城メグリスト)

萩原 さちこ (城メグリスト)

城郭ライター、編集者

執筆業を中心に、メディア出演、講演、講座もこなす。著書に『わくわく城めぐり』(山と渓谷社)、『戦国大名の城を読む』(SB新書)、『日本100名城めぐりの旅』『「現存」12天守めぐりの旅』(学研パブリッシング)、『お城へ行こう!』(岩波ジュニア新書)など。『月刊歴史読本』(KADOKAWA)で「萩原さちこのこだわり城郭探訪」連載中。文化財石垣保存技術協議会会員、日本城郭検定公式サポーター。公式サイトはhttp://46meg.jp

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