銘酒ふれあいの旅(第5回)

バス・ペール・エールとパブ「ザ・プレイハウス」

2013.09.17 Tue連載バックナンバー

 皆様ご機嫌いかがですか。株式会社ミントスの大石敏夫です。今回はイギリス、コルチェスターのパブとバス・エールについてお話しようと思います。最も有名なペール・エールと少々変わったパブのお話をお聞きください。

 

コルチェスターとマナ・ハウス

 リバプールストリートから国鉄で北東に向かい、途中ロンドンオリンピックのメイン会場だったストラットフォードを過ぎ50分程でコルチェスター(Colchester)に着いた。カエサルがブリテン島に侵攻し、その後クラウディスの時代にローマは北部を除くブリテン島全域を支配下に置いたが、そのころこの地に砦を築いた。
 その後ローマ人が去ったあとも、コルチェスターは交通の要衝として栄えてきた。サッカーのスーパースター、ベッカムはこの地の生まれだ。

 コルチェスターでの宿となるウイーベンホー・ハウス(Wivenhoe House)は、駅からタクシーで15分ほどのところにある。このホテルはエセックス大学の広大なキャパスの中にあり、1964年に大学が創設された際、この地の大地主であったゴーチ兄弟から敷地ともども大学が購入したのだという。今では主に大学関係者が利用しているが、れっきとした4つ星ホテルだ。18世紀に建てられたころは、この地方の領主のマナ・ハウス(荘園に建てられた地主の邸宅)であった。
 さすがに内装は今風にリニューアルされているが、外観やロビーは昔の風情を残し、イギリス貴族の生活をしのばせている。
 昔の高級ホテルによくあった、深く大きな棺桶のようなバスタブにつかってぼんやりしていると、足がバスタブの向こう側に届かないため、体を支えきれず、滑っておぼれそうになった。

ザ・プレイハウス

 あと10センチ背が高かったら、人生変わっていたかなあ、と取り留めのないことを思っていると、部屋の電話が鳴った。
 エセックス大学のPHD(大学院ドクターコース)のR君から、今晩一杯飲みませんか、との誘いであった。私は、もちろん即座にアグリーだ。目指すはダウンタウンのパブ「ザ・プレイハウス(The Playhouse)」である。

 

ザ・プレイハウス

 ザ・プレイハウスと聞くと、一体何のプレイをする場所なのか、カジノかあるいはいかがわしい場所ではないか、と首をひねるが、実は芝居小屋(劇場)なのだ。正確に言うと、昔芝居小屋だった。今は改装してパブになっている。
 いかにも劇場らしい石造りの重厚なポーチを入り、ドアーを開けると、照明を落とした薄暗い店内の真ん中に、円形の大きなバーカウンターがあった。そこがあたかも舞台のように光り輝き、大理石の天板や、その上に並ぶグラス、ビアーハンドル、あるいは、そこに群がる人々までもきらきらと照らし出していた。

ザ・プレイハウス 本物の舞台は、正面の奥にある。今は舞台の上にもテーブルを置き、客席を見ながら飲むことができる。舞台から二階客席を見上げると、なんと、燕尾服の紳士やローブ・デコルテを着た淑女がこちらを見ているではないか。一瞬ぎょっとして、目を凝らしてみると、それはロウ人形の紳士、淑女であった。19世紀の頃までは、まさにこのような人々がこの劇場に集いシェークスピアを観ていたであろうと思うと、なにやら我々が陣取っている舞台の袖から、今にも白髪をふり乱したリア王が出てくるような錯覚に陥る。… 続きを読む

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大石 敏夫

大石 敏夫

株式会社ミントス 代表取締役社長

1972年日本航空株式会社入社、勤労部、客室乗員訓練部、日航財団事務局長、運航乗員訓練部副部長等を務め、JALシミュレーターエンジニアリング常務取締役にて2007年退職。主に人材管理・育成部門を担当。
現在、ビジネスマナー、コミュニケーション中心とした研修会社、株式会社ミントスを経営するかたわら、大学にて講義を行っている。元桜美林大学特任教授、城西国際大学講師、日本観光研究学会会員、日本国際政治学会会員、メンタルヘルス資格(ラインケア)。

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