銘酒ふれあいの旅(第4回)

アボット・エールとパブ「ハミルトンホール」

2013.08.31 Sat連載バックナンバー

 皆様ご機嫌いかがでしょうか。株式会社ミントスの大石敏夫です。いつも「銘酒ふれあいの旅」にお付き合いいただき有難うございます。今回は最近訪れました、イギリスのパブとおいしいエールのお話です。

 

リパプールストリートのパブ「ウイザースプーン・ハミルトンホール」

リパプールストリートのパブ「ウイザースプーン・ハミルトンホール」 重いスーツケースを引きずって、ヒースロー空港からエアポート・エクスプレスでパディントンに行き、そこから地下鉄サークルラインに乗り換え、リバプールストリート駅についた。日本を出発して既に15時間ほど経っている。飛行機の中では、うとうとしたがほとんど寝ていない。

 これからナショナル・レールウェイ(国鉄)に乗ってコルチェスターまでさらに50分はかかる。なんとも長い旅だ。コルチェスターにあるエセックス大学の旧知の先生に会いに行くのだ。

 コルチェスターに行く際は、いつもこの乗換駅のリバプールストリート駅頭にあるパブ「ウイザースプーン・ハミルトンホール(Wetherspoon Hamilton Hall)」に寄ることにしている。疲れてきて、一服するのに丁度良いロケーションにあることも理由のうちだが、それよりも何よりも、まずイングリッシュエールを一杯ひっかけるために寄るのだ。

 ウイザースプーンはロンドンに数多くのパブを持つ安くてポピュラーなチェーン店だが、その数ある店の中でもこの「ハミルトンホール」は、大好きなパブの一つだ。理由は簡単だ。「あーイギリスに来たな!」という思いを抱かせてくれるからである。いかにも“イギリスのパブ”らしいパブ、つまりイギリスの老若男女、各層の人々がこの伝統ある古風な建物に集まり、入り乱れて混ざり合い、ワイワイ騒ぎながら好き勝手にビールを飲んでいる、そんなパブなのだ。人のことはお構いなし、これがイギリスの大衆酒場である。

 本物の上流階級の人々(貴族)は今でもパブには行かない。しかし、上層中流階級つまりブルジョアジーは昔からパブに出入りしていた。
 かつて、パブには入口が二つあった。ひとつは豪華な飾りドアーのブルジョアの入り口、もう一つは粗末なプロレタリアートの入口である。入口だけではない、ホールの中まで区別した。ブルジョアのエリアにはソファーや布張りの椅子が並び、プロレタリアートのエリアには質素な木の椅子しかなかった。飲むエールも違っていた。プロレタリアートは主に、アルコール度数の低いマイルド・エールを飲んでいた。
 イギリスは階級社会だ。いまでも日本と比べるとはっきりした階級がある。がしかし、ブルジョアジーだのプロレタリアートだのという言葉が遠い響きに聞こえる今日この頃では、パブの入口は一つであり、ホールの椅子もみな同じなのだ。今では、貴族を除き、他のどんな階級の人間でも、パブに入ったら、同じように飲み、同じようにワイワイしゃべるのである。階級社会のイギリスでも、パブは例外なのだ。それが私には、伝統と革新が入り混じって次々と新しいものを生み出すイギリスのしぶとさを象徴しているように思えるのだ。

 

イギリスのパブと日本の居酒屋

イギリスのパブと日本の居酒屋 ロンドンの街を歩いていて、私はニューヨークよりもパリよりも東京よりも、どこよりも過激な印象を受ける。ビートルズを生み、ミック・ジャガーを生み、ミニスカートを生み、フーリガンが暴れる国。一方イートン校に代表されるパブリックスクールのように上流階級、上層中流階級の子弟しか入れない学校が存在し、階級が固定化されている国。一つの国の中に、相反するものが混在し、それらが接触する時に発する過激で強烈なエネルギーを私は感じる。
 パブはそのようなイギリスを代表する場所に思えてならないのだ。

 日本にも居酒屋がある。だが、本質的にイギリスのパブとは違う。… 続きを読む

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大石 敏夫

大石 敏夫

株式会社ミントス 代表取締役社長

1972年日本航空株式会社入社、勤労部、客室乗員訓練部、日航財団事務局長、運航乗員訓練部副部長等を務め、JALシミュレーターエンジニアリング常務取締役にて2007年退職。主に人材管理・育成部門を担当。
現在、ビジネスマナー、コミュニケーション中心とした研修会社、株式会社ミントスを経営するかたわら、大学にて講義を行っている。元桜美林大学特任教授、城西国際大学講師、日本観光研究学会会員、日本国際政治学会会員、メンタルヘルス資格(ラインケア)。

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