新任営業部長・榊原は業務改革をどのように進めたか(第6回)

「課題解決のパートナー」になるために-榊原の実践

2013.09.30 Mon連載バックナンバー

 会社が市場から取り残され、このままではまずいと考えているが、変革に向けた第一歩を踏み出すためのヒントが欲しい方、必見。
 創業38年、従業員数300名の中堅企業で突然営業部を率いることになった新人営業部長・榊原が取り組んだ12ステップの業務改革を紹介する。
 ステップ6では、キックオフ合宿で得た結論を、プロジェクトメンバー各自が実践の場に移す。顧客への徹底したヒアリングから始まるあらたな取り組みは、どのような成果をもたらすのか。

 

プロジェクトメンバーによる議論

 キックオフ合宿の最も重要な結論は、新たに設定した「第二営業部の役割」に端的に現れている。無論、榊原を加え、6名のプロジェクトメンバーによる結論であり、現段階では第二営業部のメンバー全員の賛同を得ているわけではない。

 これまでの第二営業部の役割は、顧客の事業が順調に拡大していくことを前提に考えられていた。顧客は新製品を次から次へと開発し、市場に投入することで事業を拡大してきた。よって、彼らが曙テクノの営業担当者に求めるのは、安定した品質の製品を短納期、低価格で提供することである。それが曙テクノのとって最大の付加価値であった。

 だが、市場環境は大きく変わり、「良い製品を作りさえすれば売れる」という神話も崩れつつあった。市場で一定のシェアを維持し続けるためには、常に他社とどう差異化を図るかを深く追求しなければならないし、製品以外のプラスアルファも求められている。そうなると、自社製品の部材を納める発注先に求めるニーズもおのずと変化する。しかし、曙テクノはこうした顧客の変化にも鈍感なのだった。

 

顧客のパートナーになるための仮説とは

  榊原が思い出すのは、8月下旬に訪問したB社の購買責任者である中山からの指摘だ。中山からは「担当者を通じて当社の抱えている問題を伝えているのに、御社からは一切提案が無い」と厳しく言われた。そういった背景を踏まえ、現状の「お客さまの購買ニーズに適確に応える部材の提供者」から一歩先に進んで、「お客さまの課題解決のパートナー」になろう!というのがプロジェクトメンバーの一致した意見だった。

 しかし、「お客さまの課題解決のパートナーになるために何をするべきか」という議論の結果出てきた解決策は、極めて当たり前の内容だった。それは、お客さまの声を徹底的に「聞き」、分析により「考え」、課題を解決するための企画提案書を「書く」ことであった。プロジェクトのメンバーは、その「聞く・考える・書く」の3つを「パートナーの基本動作」と名づけ、この動作を実践することで、パートナーとしての信頼を獲得し、結果として業績を回復していくことができるはずだと考えた。

 

仮説検証の第一歩

  仮説検証の第一歩として実施したのは、第二営業部メンバーが過去半年間に顧客に提示した提案書の実地調査だ。第一営業本部全体では、顧客に提示した提案書は社内サーバーの所定の場所に顧客ごとに整理し共有することになっているのだが、実際その手順を全員が遵守している状況にはない。榊原も着任早々あまりの共有率の低さにマネジメントのしにくさを感じていた。この状況を改善することが、上半期の榊原のテーマであった「営業活動の見える化」の狙いのひとつになっていた。

 担当者が最低毎週1件は顧客に提案するとして、半年であれば360件程度の提案書が集まってもおかしくはない。だが、実際に共有されていたのはその1/3以下の102件であった。実際に半年でどれほどの提案書が作成されたのかは現時点では把握できていない。しかし、榊原が危機感を深めたのはむしろその内容と質だった。まずは、傾向を把握するために提案書102件を山積みにして、プロジェクトメンバーとともに一件ずつ仕分けをしてみた。
 すると、80%以上のものが「提案書」というより「見積書」と呼ぶべきものであることが分かった。また、残りの20%も、自社製品の紹介と価格表がついているだけなのだ。提案書の中に顧客が抱える問題点に言及したものはほんの3件だけで、それも極めて簡単な内容である。分析されてはいないし、解決策ではなくそのまま自社製品の紹介につながっている。さらに、提案書は使い回しをされているようで、同じ頁に共通の誤字が見られるものもある。文字のチェックもおざなりのようだ。提案書を軽視する傾向がこれほど強いとは……。

 これでは、第二営業部が顧客の状況を捉えた適確な営業活動が出来ているとは到底思えない。だからこそ、パートナーの基本動作を徹底しなければならないのだ……榊原は決意を新たにした。

 

顧客むけ仮説検証のための実践へ

 部長の榊原や課長の鶴井を含め、プロジェクトメンバーの6名は各々が設定した顧客に対して徹底して基本動作を実施した。榊原も部長ではありながら、自ら仮説をぶつけるターゲットを1社選び検証活動を実践することとした。リーダーが率先して動くことがメンバーにも良い影響を与えるだろうとも考えたが、それ以上に自分でやってみなければ判断できないと思っての行動であった。榊原は、仮説検証のターゲットとしてB社を選択した。
 8月下旬に購買責任者の中山から、「下期には発注先を他社に変えたい」と伝えられてから何度か接点を持って説得を続けてきたのだが、とうとう9月中旬、B社のある製品に使用する半導体の調達案件が他社に流れてしまう事態に陥った。これは社内的にも問題となり、「榊原は何をやっているのか」と本部長の高橋が漏らしたとの噂が聞こえてきた。榊原としては言いたいことは山ほどあるが、今は全ての責任を引き受けて腹を括るしかないと考え、改めて原点に立ち戻り、中山の抱える問題に向き合おうと気持ちを抑えた。… 続きを読む

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NTTラーニングシステムズ

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人材コンサルティング部 コンサルティングユニット

「業務変革のスモールスターター」を標榜し、今までの仕事のやり方を変え、自走できる組織作りを支援。事業開始から15周年を迎え、これまでに聞いたお客様の業務変革・人材育成上の課題は2万件を超える。本連載では、弊社が変革をご支援した複数の企業の取り組み事例を組み合わせ、わかりやすい小説仕立てのストーリーを構築した。

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