新任営業部長・榊原は業務改革をどのように進めたか(第11回)

明らかな成果を創出し、変革成功の確信を得る

2013.12.15 Sun連載バックナンバー

 創業38年、従業員数300名の中堅企業で突然営業部を率いることになった新人営業部長・榊原が取り組んだ12ステップの業務改革を紹介する。

 ステップ11では、榊原と営業本部長高橋が激突する。形を取り始めた変革の芽は摘まれてしまうのか? 期末へ向けた追い込みに奔走する榊原は、顧客である山中氏から連絡を受ける。

 

岩が転がり始めるとき

 1月下旬、榊原は少し拡大した業務改善プロジェクトのメンバーと、「顧客のパートナーになる」というビジョンを実現するための標準営業プロセスを愚直に実践していた。この頃はメンバーにも、顧客の声を「聞いて」、「考えて」、「書く」というパートナーとしての基本動作が確実に定着していた。これまでは、過去の提案書の微修正で済ませていたものを、今では自分の頭で考え、しっかりと顧客のお困り事ややりたいこと、つまり問題や課題の解決につながる提言を書くことが習慣化している。

 特に、白紙のA3用紙を使ったヒアリングの手法にはメンバーの間では改善も加えられていた。文章で顧客が口にしたコメントを忠実に書き込もう、そしてそれを共有しようという段階から、重要度や緊急度を顧客に判断してもらい、その場で提案書に盛り込めそうなイメージ図を顧客と共に描いて持って帰ってくるメンバーも出てきた。

 そして心強いことに、参画間もない安藤江梨花がプロジェクトで活躍し始めていた。昨日の午後、初めてA3用紙のヒアリングを実施し、大胆にも顧客のキーマンである部長にその場でメモを大量に書き込んだA3用紙と赤ペンを渡して修正をお願いしたら、熱心に書きこんでくださったと喜んで帰ってきた。安藤らしいアレンジだが、これはすぐにメンバーから標準的なプロセスに取り込もうと前向きな意見が出て、有効性の検証活動を進めることとなった。

 榊原は正直なところ別の観点で驚いていた。それは、安藤を代表とする社員の変化だった。自分たちで作ったビジョンを実現するための戦略を自分たちで立て、貪欲に仮説・検証を進めてメンバーで共有し、標準マニュアルという形あるものに残し共有し始めたのだ。こうした改善の動きを後押ししたのは、ちょっとした顧客の前向きな反応だった。

 榊原は大きな岩を連想していた。静止している大岩を動かすには途方もない力が必要だ。だが苦しくても押し続けると「じりっ」と動く。さらに汗を流しながら押し続けると「ごろっ」と動く。さらに……。そうやって諦めずに押し続けると、ついには動かそうとした当の榊原が止めようとしても止まらないのではないかとさえ思えるほどの加速が生まれる。

 メンバーの熱の入れようを見ていると、そう思えてならなかった。安藤江梨花が職場で笑顔を見せるのを榊原は初めて見たからだ。そして、それを驚いて見ているのは榊原だけではないのだ。反対派や中立派のメンバーも見ている……。彼らは内心焦りを覚えているはずだ。あの動かない岩の象徴だった安藤の変化を目の当たりにすれば。

 岩が転がり始めた……。業務を変えることよりも人が持つ意識が変わることの重要さ、その力強さに榊原はマネジャーとして、いやそれ以上にリーダーとして極めて重要なことを学んだ気がした。

 

縮まらない計画との差分

 遂に1月末となり、本部長の高橋にリカバリープランの期限として指定されていた営業本部会議が明日に迫った。数字の取りまとめを終えた榊原は、岩が転がり始めた高揚感から一転、どん底の気分を味わっていた。数字がまったく足りないのだ。… 続きを読む

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NTTラーニングシステムズ

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人材コンサルティング部 コンサルティングユニット

「業務変革のスモールスターター」を標榜し、今までの仕事のやり方を変え、自走できる組織作りを支援。事業開始から15周年を迎え、これまでに聞いたお客様の業務変革・人材育成上の課題は2万件を超える。本連載では、弊社が変革をご支援した複数の企業の取り組み事例を組み合わせ、わかりやすい小説仕立てのストーリーを構築した。

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