新任営業部長・榊原は業務改革をどのように進めたか(第10回)

かすかに見える、暗いトンネルの出口~変革の兆し~

2013.11.30 Sat連載バックナンバー

 創業38年、従業員数300名の中堅企業で突然営業部を率いることになった新人営業部長・榊原が取り組んだ12ステップの業務改革を紹介する。

 ステップ10では、榊原の愚直な取り組みがついに実を結ぶ。成果が数字として見え始め、部内反対派メンバーの挙動にも変化の兆しが表れる。

 

若手社員、小野からの相談事

 1月も中旬になると少しずつ案件の確度が向上し始めた。だが、果たして年度末までにクローズできるのか……、極度の焦燥感の中で陣頭指揮に当たるしか、榊原に選択肢はなかった。

 そんな中、課長の藤代の部下である若手社員、小野海斗から顧客のH社への訪問に同行してくれないかと相談を受けた。顧客側のキーマンの時間が取れたのだが、藤代課長が同行できない状態なのだという。どうも、今期の業績が芳しくなく藤代に相談しにくいのだと察せられた。小野も業務改善プロジェクトとは距離を取っており、榊原は水を向ける好機でもあると考え気さくに応じた。
 だが、よくよく聞くと小野が「キーマン」と呼んでいるのは窓口となっている担当者らしい。H社からは小額ながら毎年発注があるが、その担当者は気難しくなかなか会えない上に、会っても事務的な会話以外は受け付けてもらえないのだという。小野にとっては、この窓口担当を突破することが重要であり、それゆえ「キーマン」と呼ぶのだそうだ。榊原は、「キーマン」という言葉の定義が人それぞれで、明確に定まっていないことも問題なのだと改めて認識した。
 実際には、その担当者の上司である課長とはずいぶん前に一度面談をしたことがあるが、新たに着任した意思決定者である部長には会えていないそうだ。榊原は、せっかく出向くこの機会を活かしたかった。小野に、少し遅くなったが部長に新年のご挨拶をさせていただこうと伝え、榊原から担当者に連絡を取ることにした。

 

藤代との対立

 どうやら小野は、すぐ課長の藤代にエスカレーションをしたようだ。藤代が血相を変えてやってきた。「榊原部長、先方に電話するのは止めていただきたい」、その剣幕に、近くで仕事をしていたメンバーも驚いて顔を上げた。二人の応酬はしばらく続いた。
「それはどうしてだろうか?」
「相手の担当者が気を悪くしたら、取引を停止される可能性があるからです」
「突然なので、担当者は驚くかもしれないね。でも、意思決定者へのご挨拶をきっかけに年度内の受注に繋げられないかと思ってね」
「いや、すでに予算いっぱいは発注いただいたのでこれ以上は無理ですよ」
「予算ってどれくらいなの?」
「正確には分かりませんが例年と同様の発注はありましたから」
「お客さんはどんなことに悩んでいるの?何がしたいのかなあ?」
「またそれですか。そういうことではなくて、営業活動では人間関係が重要なんですよっ!このお客さまは担当者のガードが固い。だから担当者の機嫌を損ねるようなことはすべきではないんだ」
「藤代さんの懸念は分かるが、このお客さまとは、あなたが言う人間関係自体が弱いのではないか?だとしたら、今のスタンスを続けていては何も起こらないのではないかな」
「……」
「以前あなたは、私が業務改善プロジェクトを立ち上げる際に、本部の方針はもう出ていて新たな取り組みなど不要だと言ったね。積極的にお客さまに働きかけて全顧客で対前年を上回ろうというのが本部の方針だと思うが?」
「そんなのただの方針ですよね。個別のお客さまの状況を理解していない人が考えた意味のない方針ですよ」… 続きを読む

全文(続き)を読む

続きを読むにはログインが必要です。

まだ会員でない方は、会員登録(無料)いただくと、続きが読めます。

NTTラーニングシステムズ

NTTラーニングシステムズ

人材コンサルティング部 コンサルティングユニット

「業務変革のスモールスターター」を標榜し、今までの仕事のやり方を変え、自走できる組織作りを支援。事業開始から15周年を迎え、これまでに聞いたお客様の業務変革・人材育成上の課題は2万件を超える。本連載では、弊社が変革をご支援した複数の企業の取り組み事例を組み合わせ、わかりやすい小説仕立てのストーリーを構築した。

このページの先頭へ
Bizコンパス公式Facebook Bizコンパス公式Twitter