東京都の助成事業にみるワークライフバランス実践術

ワークライフバランス推進企業を東京都が助成

2013.08.01 Thu連載バックナンバー

 少子化や介護などの対策と企業の競争力強化を両立させなければならない環境の下、労働と家庭生活を両立させる「ワークライフバランス」の実現を通じ、従業員の活力と企業の競争力を強めようという動きが着実に広まりつつある。とはいえ、企業、とりわけ規模の小さな企業ではなかなか取り組みにくく、また、「ワークライフバランス」は従業員の福利厚生施策であり企業のメリットは少ないという誤解もあり、後回しになっているケースも見られる。
 そこで東京都では、より多くの企業が実際に取り組んでいけるよう、ワークライフバランス推進のハードルを下げるための助成事業を今年度よりスタートした。

 

“働きづらい”企業の実態が明るみに

 最近「ワークライフバランス」という言葉を耳にする機会が多いのではないか。ワーク(仕事)とライフ(家庭や生活)を充実させることで、個人と企業の双方が豊で幸せになれるというこの考え方は、確かに魅力的だ。しかしながら、市場のグローバル化による競争の激化など、ビジネスをとりまく環境はますます厳しさを増しており、日々の過酷な業務に追われる多くの経営者には、ワークライフバランスを自社でも実践しようと決断するまでの余裕などないというのが現実だろう。

 全国で最多数の企業を抱える東京都の労働環境を見てみると、どんな課題があるのかよくわかる。たとえば、働きながら安心して子どもを産み育てることが困難な状況ははっきりと存在する。女性労働者の場合、第一子出産前後に離職することが多く、また、東京都中小企業団体中央会の調査によると、働きながら育児をする従業員に対する支援等についての質問に対して、最多の回答が「特に支援はしていない」であった。

“働きづらい”企業の実態が明るみに
(資料出所)国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査(夫婦調査)」

 一方、同世代の男性労働者についても、週の労働時間が60時間を超える割合が他世代よりも多く、育児参加の機会が失われていることがうかがえる。こうした長時間労働は、育児世代にかぎらず、すべての労働者にとっても、健康面への悪影響や自己啓発機会の喪失、モチベーションの低下といった様々な弊害を生み出してしまう。

“働きづらい”企業の実態が明るみに(資料出所) 総務省「労働力調査」(平成22年)

 これは、企業側にも、生産性の低下や人材の流出といった事態として直接はね返ってくる。
 筆者が、都内企業を取材したところ、 実際、従業員80人ほどの都内のある企業では、パート社員が育児休業を取得する場合に「会社に戻ってこられないのでは?」と心配する声が聞かれたり、妊娠・出産する社員に対して「会社に迷惑がかからないよう計画的に出産すべき」と批判的な声が上がったりすることがあるという。また、従業員約40人を抱え都内で情報通信業を営む経営者は、「正直、中小企業というのはみんな忙しい。うちのような規模の会社では、子育て支援は難しい課題のひとつです」と本音を漏らす。

 

育児支援からワークライフバランス推進支援に制度を拡大

 このような背景を受けて東京都では、仕事と家庭の両立を支援する施策の1つとして、「中小企業両立支援推進助成金」制度を昨年度まで実施。都に応募した法人を取材したところ、職員が育児を理由に休んだ際、代わりの人員の人件費を一人当たり年間150万円まで受けることができたという。しかし、対象の9割以上が女性であったこと、また休んでしまうと復帰後に会社に居づらくなるという声も出るなど、制度に改善すべき点もあった。

 そこで、「中小企業両立支援推進助成金」の後継事業として今年6月8日から都が開始したのが、「中小企業ワークライフバランス推進助成金」である。これは、企業がワークライフバランスを推進するための経費を助成する制度だ。… 続きを読む

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小池 晃臣

小池 晃臣

ビジネス誌/書籍、エンタープライズIT誌の編集者を経て2010年夏、株式会社タマクを設立。企業IT、企業経営、地方行政、防災、ものづくり、まちおこしなどを中心フィールドに、執筆・編集・企画を展開中。

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