これだけは知っておくべきセクハラ・パワハラ対策(第16回)

パワハラがおきたらどうなる?~広がる悪影響

2013.07.23 Tue連載バックナンバー

IT企業A社の事例

 3年目のEさんは、主任以下4名の社員でシステム開発をしているチームに所属。チームの主任は厳しい人で、メンバーがミスをすると、「バカヤロウ。お前の代わりはいくらでもいるんだよ。」などと怒鳴りつけるため、周りはいつもピリピリした空気が漂っている。その中でもEさんは、納期遅れをしばしば起こし、その度に主任から、「役立たず、給料泥棒」と叱られていた。Eさんはここ数か月80時間以上の残業が続いていて体調を崩しがちで、Eさんの両親から「残業を減らしてほしい」と会社に申出があった。しかし、主任は、「IT企業なら100時間の残業をしている奴はザラいる。ただでさえ仕事が遅いのに何を言っているんだ」と今まで以上にEさんに厳しくなり、さらなるIT企業A社の事例残業を課し、ミスをすると、書類を投げつけたり、自分の机の横にEさんを立たせたまま、1時間に及ぶ説教をしたりすることが当たり前になっていった。Eさんは辛かったが、仕事が遅い自分が悪いと思うと我慢するしかなかった。Eさんは一層元気がなくなり、遅刻をすることも増え、それによってさらに主任の発言も過激になった。他のメンバーも気になっていたものの、自分が主任のターゲットになると思うと怖くて口出しできずにいた。しばらくして、Eさんは体調を悪化させて休職したが、その休職中に自殺してしまった……。

 

うつ病など心の病の労災認定が最多に

 最近はパワハラによる精神障害の発症と労災認定の関係も注目されています。2012年度に心の病で労災認定された人は前年度から150人増えて475人となり、発症の原因では「嫌がらせ、いじめ、暴行」「上司とのトラブル」「セクハラを受けた」など、職場の人間関係が影響した労災認定の増加が目立ちました。

 今回の事例では、主任はEさんに対して、「役立たず、給料泥棒」などの人格否定発言や、「書類を投げつける」などの暴力的な行為をする、懲罰的な長時間残業を強いるなど、適正な指導の範囲を超える言動を継続して行ってきました。もし、Eさんの遺族が労災申請した場合、これらの事実は「ひどい嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた」という労災認定基準に合致するため、労災認定される可能性は極めて高いといえます。

 また、長時間労働が精神障害の発病の原因になることから、平成23年の労災認定基準の改定で「長時間労働がある場合の評価方法」が具体的に示されています。

●特別な出来事として極度の長時間労働から心理的負荷が「強」※となる例
・発症直前の1カ月におおむね160時間以上の時間外労働を行った場合
・発症直前の3週間におおむね120時間以上の時間外労働を行った場合
 ※業務による心理的負荷が、精神障害を発病させるおそれがある程度の心理的負荷である場合を「強」としている

●発症直前の2カ月から3カ月間の長時間労働で心理的負荷が「強」となる例
・発病直前の2カ月間連続して1月当たりおおむね120時間以上の時間外労働を行った場合
・発病直前の3カ月間連続して1月当たりおおむね100時間以上の時間外労働を行った場合

●他の出来事と関連した長時間労働
・精神障害の発病に関与したと考えられる出来事が発生した前や後に恒常的な長時間労働(月100時間程度)があった場合、総合的な心理的負荷強度を修正する要素として評価されます。

 あくまでもこの時間数は目安ですが、今回ケースのように100時間の残業が、もし3か月続いていたようであれば労災認定される可能性は極めて高くなります。さらに、労災認定されると、その後、裁判で「安全配慮義務違反」による損害賠償を請求される可能性も高くなります。企業は厳しい経営環境の中でも従業員の安全配慮義務を怠ってはなりません。

 ここで質問です。
 パワハラがおきた場合のダメージについて、適切なものを選んでください

A. 会社にとって最も大きなダメージは裁判による損害賠償請求である
B. パワハラがおきると、被害者だけでなく、職場のメンバーにも心身の不調が発生する場合がある
C. 職場全体の雰囲気を害し、生産性が低下する

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ハラスメントは、しない・させない・ゆるさない
古谷 紀子

古谷 紀子

株式会社クオレ・シー・キューブ 取締役

クオレ・シー・キューブ:メンタルヘルスやハラスメント問題の相談、研修を行うコンサルティング会社。「パワーハラスメント」という言葉と定義を創り、特にハラスメント対策の専門機関として、広く知られている。

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