ITガバナンスの重要性~野放しITの大きなリスク(第5回)

海外進出時の課題「全体最適化」を解決する方法とは

2013.07.31 Wed連載バックナンバー

 6月26日、東京・秋葉原で「Global ICT セミナー」が開催された。経済のグローバル化に伴い、アジア諸国を中心に日本企業の進出が広がる中、各国ごとの文化・習慣への対応はもちろん、IT活用・戦略は非常に重要な課題となっている。本稿では、同日行われたIDC Japan株式会社・寄藤幸治氏による基調講演「企業およびITのグローバル化と、最適化の課題」の模様をご紹介する。

 

多様化する海外進出で、「グローバル化」が課題に

 企業の海外進出が進むにつれて、「グローバル化」を経営課題とする企業が増えている。IDC「国内CIO調査」(以下、同調査)の「CIOが見る国内企業の経営課題」によると、グローバル化を経営課題として挙げる企業の割合は、2010年のおよそ5%から、2013年には8%近くにまでに増えている。

 この割合は業種や企業規模に関わりなく増えている。製造業では2010年のおよそ9%から、2013年には14%を超えており、非製造業でも2010年のおよそ4%から、2013年には6%を超えるなど、およそ1.5倍の増加を見せる。

 現在、日本企業の海外進出先は多様化している。経済産業省「海外現地法人四半期調査」によると、2000年には国内企業の海外売上高のうち68%を欧米が占めていたが、2012年には42%へと減少、代わりに存在感を増しているのが、中国やタイ、インドネシア、台湾、ベトナムなどのASEAN諸国だ。

多様化する海外進出で、「グローバル化」が課題に

Source:経済産業省「海外現地法人の動向(海外現地法人四半期調査)」2013年3月。2012年10~12月期は計画。

 中国は、膨大な人口と安い人件費によって、世界中の製造業の生産拠点へと成長、「世界の工場」と言われるようになった。その後、中国国内の賃金水準は上昇し、コストの点でのメリットは薄れ、逆に食品衛生や知的財産の流出、人民元の切り上げといった各種リスク(チャイナリスク)の存在が顕在化している。チャイナリスクの存在を受け、近年、チャイナ・プラス・ワンという言葉が聞かれるようになった。チャイナ・プラス・ワンとは、中国に集中することによるリスクを分散、回避するために、中国以外の国や地域に分散して投資を行うというリスクマネジメント手法の一つである。
 同調査において、各社の海外展開の状況を調査したところ、既に東南アジアに進出している企業と、今後進出予定のある企業をあわせると、およそ26%にも及ぶ。今やアジアは海外進出を図る上で、欠かせない地域となっている。賃金水準の低さを魅力に、製造業を中心とする生産拠点としての位置付けだけでなく、販売拠点としても重要視する傾向も進んできている。しかし、単純に「1つの国=1つの市場」と捉えることは難しく、同一国内でも地域によって、多様な民族が生活し、文化の違いもあり、商流も異なっていることに、慎重にならなくてはならない。

多様化する海外進出で、「グローバル化」が課題に

Source:人口、言語、宗教、1人あたりGDPは、JETROウェブサイトより。ICT支出は”IDC Worldwide Black Book version1 2013”May 2013。

 

部分最適と全体最適のバランス感が欠かせない

 同調査で、各社の情報部門に「2013年度に解決に注力する経営課題」を尋ねたところ、企業全体では1位がコスト削減、2位が新規顧客の獲得、3位が営業力、チャネルの強化となった。一方、「グローバル化」は企業全体では20位と順位は低いが、正社員数1000人を超える大企業に限ると、順位を5位まで上げているように、大きな課題として捉えられている。

部分最適と全体最適のバランス感が欠かせない

「情報システム部門として、2013年度に解決に注力する経営課題は何ですか?(複数回答)」Source:IDC Japan 「国内CIO調査2013」 May 2013

 この「グローバル化」の課題を具体的に見てみると、同調査の「海外展開に伴うIT課題」について、1位に進出先拠点でのIT要員確保/育成、2位にグローバル規模でのシステム構築、3位に市場特性に応じたシステム構築と続く。

 しかし、グローバルでのIT課題は、各社の海外IT支出割合によっても異なる。海外IT支出割合が30%以上の企業では、海外拠点におけるIT資産の状況把握、市場ごとに構築したシステムの連携、グローバルでのIT予算配分の最適化など、全体最適に向けた課題が高まる傾向がある。

 最適化には全体最適の他、各国市場の商流に合わせたシステム構築、市場ごとの人材確保や育成などといった、部分最適もある。部分最適は海外進出をするにあたり、意識して舵を切らなくても、オートマティックに進んでいく要素だ。一方で、全体最適は意識して進めていかなくてはならない。どのようにして全体最適に近づけるかが、大きな課題となっているといえよう。… 続きを読む

全文(続き)を読む

続きを読むにはログインが必要です。

まだ会員でない方は、会員登録(無料)いただくと、続きが読めます。

池田 園子

池田 園子

フリーライター

楽天やITベンチャーに勤めた後、フリーランスに。R25、ITmedia、Impress Watch、ウレぴあ総研など、Web媒体を中心に執筆中。著書に『フリーランスで食っていきたい!』がある。ブログ(http://sonoko0511.jp/)

このページの先頭へ
Bizコンパス公式Facebook Bizコンパス公式Twitter