実業家なら知っておこう!モバイル活用物語(第4回)

タブレットで解決!営業力強化とモチベーションUP

2013.08.22 Thu連載バックナンバー

 西郷隆は、社員約200名を抱える中堅不動産代理業「島津エステート」でシステム管理室長を務めています。景気が思わしくない状況が続く中にあって、同社は堅実に業績を伸長させ、規模も次第に拡大してきましたが、この2年ぐらいは“頭打ち状態”に陥っており、何か打開策が欲しいところ。具体的には営業社員のスキルアップやモチベーションアップが課題として見えてきました。専門家として豊富なIT知識を持つ西郷は、どのような手段でこれらの課題を解決するのでしょうか。

 

西郷 隆:不動産仲介業「島津エステート」システム管理室長

西郷 隆:不動産仲介業「島津エステート」システム管理室長

 社員数200名の中堅企業でIT管理を一手に引き受けている。社長の信任が厚く、いつも経営課題の改善に対する相談を持ちかけられる。利用者の気持ちを重視する発想に定評があり、モットーは「一に便利、二に便利。三、四がなくて五に安心」。いまは「スマートデバイスを営業社員のスキルアップに活用できないか」という課題に取り組んでいるところである。

 

ITは経験不足の営業マンを救えるのか

「やっと潮目が変わりそうだな……」
 西郷隆は通勤電車の吊革につかまりながら考えていた。社内のITスペシャリストとして、IT導入によって経営課題を解決するための方策をこれまで積極的に提案してきたが、実現に結びつかないものも多かった。社長の島津は自分に信を置いてくれているが、営業本部長がかなり保守的な考え方の持ち主で、「費用がかかりすぎる」「時期尚早である」の二言で却下されたこともしばしばだった。しかし、ここ2年の業績の伸び悩みを打開するべく、先週、島津は新たな営業本部長として、西郷と同期の大久保利満を抜擢。これまで西郷の悩みを聞いてくれていた大久保が大きな権限を得たことで、流れが変わりそうな手応えを感じたのだ。
 
 その日、出勤してしばらくすると、西郷の内線電話が鳴った。発信元は社長の島津である。
「ちょっと社長室まで来てくれないか」
 西郷が社長室に入ると、そこには大久保が先に座っていた。
「いま大久保君から相談を受けていたんだが、最近入社した若手社員たちがなかなか物件情報を覚えられないらしい」
 以前は不動産営業の経験豊かな社員だけを中途採用していたが、最近は若返りを図るという意図で、新卒の採用を始めていた。ちなみに島津エステートは、主にオフィスビルや店舗などの不動産物件を扱っており、顧客は企業や商店主などになる。
「訪問するお客さんにフィットしそうな物件情報をあらかじめファイリングして持って行くんだが、ファイルのどこに何があるのか分からなくなったり、物件のセールスポイントを訊かれても即答できずに、あたふたすることもあるようだ。昨日も徳川食品から桐野君に対するクレームの電話が入ったばかりだ。そもそも彼の場合は、覚えようという熱意が希薄なことに問題があるんだが」と大久保が説明する。
「そこで君の知恵を借りようということになった」島津が西郷に視線を向ける。
「たとえば、うちが扱う物件情報を全部PCに入れて、それを持って営業できるようにすることはできないだろうか?」大久保が問う。
「わかりました。私なりにプランをまとめて明日ご提案します」

 

タブレットで“できる社員”を育成する

 自席に戻った西郷は、PCに保存してある一つのファイルを開いた。表紙には「物件情報のデータベース化とタブレットの導入」と、表題が記されている。そう、西郷はこのような状況をあらかじめ予想して、半年前にこの提案書を作っていたのだ。しかし、当時の営業本部長に「時期尚早」と却下され、お蔵入りになっていたのである。西郷は費用シミュレーションなどを最新の情報に修正し、翌日、島津と大久保に提案した。
「すべての物件情報を写真付きでデータベース化し、立地、広さ、価格など、さまざまなファクターで検索できるようにしています。それで、営業スタッフ全員にタブレット端末を支給し、どこからでもデータベースにアクセスできるようにするんです」
「それはいいな。ノートPCだと操作しながらお客さんに画面を見てもらうことが難しいが、タブレットなら対面でも画面を見せながら操作ができる。起動も速いし、PCよりもバッテリー駆動時間が長いらしいな」と、ITに明るい大久保が身を乗り出す。
「データベースのフォーマットづくりと最初の情報入力はアウトソーシングしたいと考えています。その後はメンテナンス要員にアルバイトを一人雇用して、データは常に最新の状態に更新しましょう。サーバーは現在契約しているクラウドのホスティング(NTTコミュニケーションズ「Biz ホスティング Enterprise Cloud」、NECネクサソリューションズ「仮想化ホスティングサービス」、富士通エフ・アイ・ピー「オンデマンド仮想環境ホスティング」など)を拡張すればいいので、費用はかなり抑えられます。さらに情報をお客さまにお見せしやすくするには、電子カタログサービス(インフォテリア「Handbook」、NTTコミュニケーションズ「Biz Suite eカタログ」、ソフトバンクテレコム「ホワイトクラウド ビジュアモール スマートカタログ」)を使う事も可能です」
「なるほど。で、モバイルからのアクセスは大丈夫なのか?」
「インターネットから接続できるので、大丈夫です。ユーザー認証やコンテンツの管理にも注意を払いますので心配ありません。さらに、オフィスとクラウドの間はVPN(NTTコミュニケーションズ「Arcstar Universal One」、KDDI「Wide Area Virtual Switch」、ソフトバンクテレコム「ホワイトクラウド SmartVPN」など)で接続するようにしたいと考えています」
「よし、君たち二人に任せる。今回は多少費用がかかってもかまわん。若い奴らを“できる社員”に変身させてくれ」と、島津は声に力を込める。
 
タブレットで“できる社員”を育成する こうして島津エステートの営業スタッフは全員タブレットを携帯し、逐次データベースにアクセスしながら営業を行うようになった。以前クレームの対象になっていた桐野は、タブレットを持って、徳川食品を訪れている。
「お、君んとこ、新兵器を導入したのか?」と、先方の担当者がさっそく興味を示す。
「はい、もう何でもお尋ねください」
 さまざまな条件で検索ができ、対象となる物件情報が瞬時に呼び出せる。また写真を拡大したりできることも訴求力をアップさせた。
「桐野君、まるでベテラン社員みたいだな。えらい変わりようだ」
 その訪問で新しい店舗物件の契約も受注し、意気揚々と帰社の途につく桐野であったが、ひとつ煩わしいことを思い出してしまう。… 続きを読む

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田川 接也

田川 接也

フリーランス・ライター

企業の情報誌・Webサイト、自治体の広報誌などをメインに取材・原稿執筆を行う。これまでIT系の導入事例記事を多く手がけているが、ITの他、行政、教育、飲食など、幅広いフィールドにおいても活動している。

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