実業家なら知っておこう!モバイル活用物語(第3回)

クラウドで実現!小規模企業のワークスタイル改革

2013.08.15 Thu連載バックナンバー

 木戸孝子は、10年前に大手保険会社を退職し、個人で保険代理店を起業。誠実な人柄や適切なプランニングが実を結び、いまでは約20名の社員を雇用する規模となりました。しかし社員数がある程度増えてくると、セキュリティ管理や社内の情報共有などの新たな課題が生まれてきます。また、顧客への対応力を向上させるため、業務効率の改善にも取り組まねばならないと考えていた矢先、社内で予期せぬトラブルが発生します。木戸とスタッフたちは、これらの課題をどのようにして解決するのでしょうか。

 

木戸孝子
保険代理店「桂エージェンシー」代表取締役社長

木戸孝子:保険代理店「桂エージェンシー」代表取締役社長 大手保険会社を10年前に退職し、保険代理店を起業。現在は社員20名を抱える規模に成長。IT管理は部下任せだが、新しいシステムの導入に対しては積極的で、常に世の中の動向にアンテナを張り、適切な判断を下してきた。そろそろスマートデバイスを本格的に導入したいと考えているが、セキュリティのことが少々心配。ちなみに、桂は旧姓である。

 

西郷 隆
不動産仲介業「島津エステート」システム管理室長

西郷 隆:不動産仲介業「島津エステート」システム管理室長

 社員数200名の中堅企業でIT管理を一手に引き受けている。仕事柄、3人の中ではITに関する知識や理解度は圧倒的に高い。会社では社長の信任が厚く、いつも経営課題の改善に対する相談を持ちかけられる。利用者の気持ちを重視する発想に定評があり、モットーは「一に便利、二に便利。三、四がなくて五に安心」。いまは「スマートデバイスを営業社員のスキルアップに活用できないか」という課題に取り組んでいるところである。

 

一杯のコーヒーが招いた不幸

 ここは都内某所のオフィスビル。その1フロアで保険代理業を営む「桂エージェンシー」では、始業前のミーティングを終え、いつも通りの穏やかな時間が流れていた。その日も普通の1日がスタートするはずであったが、突然女性の大きな悲鳴がオフィスに響きわたる。
「きゃー、たいへん。コーヒーが!」
 デスクの前で慌てているのは、中堅営業社員の井上薫だ。コーヒーを飲みながらメールチェックをしていた彼女は、うっかり手を滑らせて、なんと多量のコーヒーをノートPCの上にぶちまけてしまったのである。
一杯のコーヒーが招いた不幸「大丈夫か?」すぐに、総務部長でITシステムの管理も担当している伊藤俊作が駆け寄る。
 井上は闇雲に大量のティッシュペーパーを引き出し、キーボードを浸したコーヒーを拭うが、すでに目茶苦茶な表示を始めていたディスプレイは、やがて真っ黒になって沈黙してしまった。
「砂糖とかミルクは入れてたのか?」伊藤が尋ねる。
「はい、たっぷり。朝は血糖値を上げないといけないと思って」
「最悪だな……」

 すぐにメーカーのサポートに電話し、修理を依頼することになったが、故障原因や症状を聞いたオペレーターからは、「HDDのデータがすべて失われる可能性もありますね」というつれない言葉が返ってきた。ちなみに、井上はデータのバックアップを取っておらず、PCに入っていた顧客への提案書も取り出せない状態。その日のアポイントは、すべてキャンセルするしかないという気の毒な事態となった。

 

オンライン型ストレージを利用して情報管理のリスクを軽減

 1時間後、木戸と伊藤が会議室で話し合っている。
「さっきのことは、完全に井上さんの不注意だけど、彼女だけを責めるわけにはいかないわね。会社でノートPCを支給しながら、データ管理は社員まかせになっていたわけだし。やっぱり、個々のPCにデータを保存して、共有やバックアップの仕組みがないのは問題よね」
「これまで今日みたいな事故も起きなかったし、PCの故障や紛失もなかったので、つい後回しになっていました」
「業務に使うデータやファイルは、個人の持ち物ではないわね。会社として、どういった管理をしていくのか、仕組みやルールを決めておくべきだわ。すぐに対策を考えましょう」

 それからすぐに伊藤はさまざまなサービスを検討し、その結論を木戸に報告した。
「ファイルサーバーを購入することを考えたのですが、正直我が社の人間だけでセキュリティにも気を配りながら維持していけるかというと、疑問です。それよりも、ネット経由で使えるクラウド型のストレージサービス(NEC「BIGLOBEクラウドストレージ」、NTTコミュニケーションズ「Bizストレージ ファイルシェア」、大塚商会「どこでもキャビネット」など)を利用しませんか? 新商品情報や提案書日報、営業会議資料など、日々の業務に関わるデータは、クラウドストレージに保存し、個々のPC上に保存させないようにします。クラウドストレージは、許可した人だけにインターネットから接続してもらうこともできるので、将来はお客さまや保険会社とのデータのやりとりにも活用できます。データセンターの管理やアクセス認証など、セキュリティ対策もしっかりしているものを選べば、自社でサーバーを用意するより信頼できますから、重要なファイルを保管する場合にも、安心です」
 その報告を聞いた木戸は導入を即決。サービスを利用する形態のため、自社で構築する場合と違い、導入に時間はかからないし、初期費用を安く抑えられることも魅力だった。利用開始にあたり、伊藤は社員全員に、「操作したファイルは必ずストレージに保存し、データをPC上に残さないよう」に念を押した。
 こうして、桂エージェンシーは、PCのトラブルや万一の紛失・盗難があっても、業務への大きな支障や情報流出のリスクを軽減できる環境を思いのほか手軽に実現。さらに希望する顧客には、商品パンフレットや提案書をデータで提供することもできるようになった。

 

短期間でテレワーク導入を実現するデスクトップ仮想化サービス

 それからしばらくたったある日。木戸の他、総務部長の伊藤と営業部長の山県が顔を揃えている。
「実は、経理の久坂さんから長期休職もしくは退職の相談を受けています。病気で入院中のお母さんが自宅療養に移行しなきゃならないそうで、彼女が介護をするしか方法がないらしいんです」と伊藤が切り出す。
「もうすぐ決算じゃない。彼女がいないと決算処理はとても間に合わないわよ。どうしましょう」
 しばらく考え込んでいた木戸が、急に顔を上げる。… 続きを読む

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田川 接也

田川 接也

フリーランス・ライター

企業の情報誌・Webサイト、自治体の広報誌などをメインに取材・原稿執筆を行う。これまでIT系の導入事例記事を多く手がけているが、ITの他、行政、教育、飲食など、幅広いフィールドにおいても活動している。

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