実業家なら知っておこう!モバイル活用物語(第2回)

モバイル大作戦!050とBYODで電話応対改善

2013.08.08 Thu連載バックナンバー

 坂本龍太は、長年勤務した会社を退職し、友人たちと3人でアパレル会社「コンパス・ウェア」を設立したばかり。いまはまだ賃貸マンションの一室にデスクとパソコンと電話/FAXしかないという規模ですが、いつかは世界を相手に商売ができる会社に成長させたいという大きな志を抱いています。少人数ならではのフットワークを活かして営業活動に奔走する毎日ですが、そのワークスタイルに相応しい通信環境を整備できていないことが大きな問題となって目の前に突きつけられます。さて、坂本と仲間たちは、どのようにしてその課題を解決したのでしょうか。

 

坂本龍太:服飾雑貨業「コンパス・ウェア」代表

坂本龍太:服飾雑貨業「コンパス・ウェア」代表

 長年勤務したアパレルを退職し、友人の中岡、後輩の近藤と3人で新しい会社を起業したばかり。さらに、フットワークのよさに勝負をかけたい状況のもと、スマートデバイスの活用に大いに関心を寄せているが、まだ具体的なイメージがなく、活用法や管理について情報を得たいと思っている。

 

西郷隆:
西郷隆:不動産仲介業「島津エステート」システム管理室長不動産仲介業「島津エステート」システム管理室長

 社員数200名の中堅企業でIT管理を一手に引き受けている。仕事柄、3人の中ではITに関する知識や理解度は圧倒的に高い。会社では社長の信任が厚く、いつも経営課題の改善に対する相談を持ちかけられる。利用者の気持ちを重視する発想に定評あり、モットーは「一に便利、二に便利。三、四がなくて五に安心」。

 

「代表電話がつながらない」と苦情が相次ぐ

「今日もよく歩いたな」と坂本は、西日を背中に受けながら、オフィスの鍵をポケットから取り出した。その時、部屋の中でいきなり電話が鳴り出した。ドアを慌ただしく開けて部屋に飛び込むと、息を整える暇もなく受話器を取り上げた。
「はい、コンパス・ウェアでございます」
 電話の向こうから中年男性の少し怒気を含んだ声が響く。
「山内商会だけど、午後から何回もかけてるのに、ぜんぜんつながらんじゃないか」
「申し訳ございません。ちょうど皆、出払っていたもので」
「電話番ぐらい置かないと、商売にならんのじゃないか? ところで、明日こっちに廻るついでがあったら、もう1回サンプルを見せてくれんかね?」
「ありがとうございます。明日でしたら、14時頃お邪魔できると思います」

 丁重にお詫びをしながら電話を切ったあと、坂本はしばし考え込んだ。
 友人の中岡慎一郎と後輩の近藤次郎を誘って会社を立ち上げてから3ヶ月、代表電話にかけてもつながらないというクレームは、これまでに一度や二度ではなかった。今日の相手は温厚な人だったからよかったものの、それでビジネスチャンスを逃すことだってあり得る。まだ電話番のアルバイトを雇えるほどの売上はなかったし、慌ただしく起業してしまったこともあり、通信やITの環境整備が完全に後回しになっていた。

 

携帯へ順次転送できる050番号

 それから2時間後、坂本は中岡、近藤と3人で近所の焼鳥屋で生ビールのジョッキを傾けていた。坂本の話を聞いていた中岡が、おもむろに話し出す。
「電話のことは、おれも早く何とかしなきゃと思ってたんだ。それで、たまたま今日、昼飯を食いながらネットで調べてみたんだが、代表電話に転送電話機能の契約(NTT東日本/NTT西日本「ボイスワープ」)を追加するのはどうだろう?」
「だが、待ってくれ。おれだっていつも電話に出られるとは限らんぞ」と坂本。「おれが話し中だったらどうなるんだ?」
 スマホをいじっていた近藤が口を開いた。「050番号というので、いいのがあるみたいですよ。NTTコミュニケーションズの『050ビジネスダイヤル』とか、ワイドテックの『10so6』なら、1つの050番号から複数の携帯に転送できるみたいです」
「050番号か! このあいだ西郷から少し聞いたぞ。いいじゃないか。すぐに入れよう。明日、申し込め、明日」
 坂本はテーブルにジョッキを叩きつけるように置いて大声で怒鳴る。本人は思慮深いと自負しているが、おいしい話にはめっぽう喰いつきがいい男だ。ちなみに西郷とは、坂本の大学時代の友人で、中堅不動産会社のシステム管理室長を務めるITのエキスパートだ。

 さて翌日、出社後さっそく中岡は050番号の導入準備に取り掛かった。
「まずはネットから見積りを依頼してみよう。代表番号を050番号に変える必要があるが、この際いいだろう。もう一度新しい名刺を持って、挨拶して廻るのもいいんじゃないか?」と出勤してきた坂本に投げかける。
「なるほど、再訪問のいい口実にはなるな。それもチャンスと考えよう。なにより、外でも代表電話が受けられるメリットが大きいからな」
「だろ?それに今後会社が大きくなって、移転しても、この050番号はそのまま使い続けられる点も、おれはいいと思うんだよ」
「おう、大きくするぞ!」坂本と中岡は、眼を輝かせてうなずきあうのだった。

 

個人が仕事の電話料金を負担するのは是か非か

 050番号導入から約1ヶ月が経ったある日、いつもの焼鳥屋で竹串をもてあそびながら、近藤が言う。
「電話が転送できるようになって、ほんとによかったです。文句も言われなくなったし、問い合わせにもタイムリーに応えられる。ひとつでもチャンスを逃したくない我々には、いい選択でしたね」
 そして、しばらく間を置いて、申し訳なさそうに切り出す。
「あのう、前から言おうと思ってたんすけど、電話でもうひとつお願いっていうか、提案があるんですよ。いま仕事の電話って、外からはみんな自分のスマホ使ってるじゃないですか。こんな規模の会社でする話じゃないかもしれないけど、けっこう通話料がかかって、苦しいんですよ」
「なに、会社でスマホ支給しろってのか? わかってんのか、近藤? おれたちは、まだな…」とムッとする中岡が話に入ってくる。
「いや、所帯が小さいうちは我慢しろって話は、違うぞ。おれはこの会社をアパレル界の新しい指標になるような企業にしたいと思ってる。志を高く掲げるからには、小さくても大企業がやってるようなことを取り入れてやろうじゃないか」
「もっとも、スマホを2台も持つのはウザいがな」と坂本は続ける。
「あれっすよ。最近ネットの記事でよく見る、ビヨンドじゃなくて、なんだっけ?」
「ああ、BYOD(Bring Your Own Device/ビーワイオーディー、私物端末の業務利用)か? 仕事でも自分の携帯を使うけど、仕事とプライベートの料金を分けて請求できたりするらしいな」中岡が思い出したように言う。
「それも西郷が話してたやつだな。具体的にどうすればいいのか、明日調べてくれないか」

 

手軽にBYODを実現するIP電話アプリ

 翌朝、また中岡はインターネットで該当するサービスを調べて坂本に報告した。
「IP電話系のサービスなんだけど、いま使っている個人のスマホがそのまま仕事用にも使えるようだ。専用のアプリ(NTTコミュニケーションズ『050 plus for Biz』、フュージョン・コミュニケーションズ『フュージョン モバイルチョイス』など)を利用するだけなんだが、050のIP電話の番号を新たに仕事用に取得して、そちらから発信した分は会社に請求が来るようにできるわけだ。もちろん、元々持っていた090などの番号での通話分は、従来通り持ち主に請求が行く。“公私分計”というらしい。1台あたりの月額利用料も安いし、IP電話だけに通話料もお得だから、費用的にも嬉しいな。おまけに、そのIP電話番号同士、要は、おれたち社員同士の通話は無料になるようだぞ」
「なんだ、いいことづくめじゃないか。会社は小さくても、やっぱ“公私混同”はいかんぜよ。なあ、近藤?」

手軽にBYODを実現するIP電話アプリ
 ダジャレはお寒いものがあるものの、坂本の決断のおかげで懐具合が少し暖かくなり、ますます仕事への意欲が湧いてきた近藤だったが、そんな彼を難題が待ち構えていた。ある日、… 続きを読む

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田川 接也

田川 接也

フリーランス・ライター

企業の情報誌・Webサイト、自治体の広報誌などをメインに取材・原稿執筆を行う。これまでIT系の導入事例記事を多く手がけているが、ITの他、行政、教育、飲食など、幅広いフィールドにおいても活動している。

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