なぜ多くの企業はクラウドの導入に踏み切れないのか(後編)

事例で見る、クラウド導入を妨げる要因とその対応

2013.08.16 Fri連載バックナンバー

 前編では、クラウド導入の現状についてやや概念的な話をした。後編ではクラウド導入事例を紹介し、成功に導くより具体的なノウハウをお伝えしたい。クラウドの導入で欠かせないのは全体最適を考えた上で実行に移すこと。そこで必要となるのが第三者的な視点を持ったITパートナーの存在である。というのも、個別ソリューションの専門家に相談しても、全体最適をめざして包括的にITシステムを捉える観点はなかなか得られないからだ。

 

IT部門に高い負荷がかかっていたA社

 中規模企業のA社は、情報システム担当者を複数名置くゆとりがなく、実質的に一人の担当者がすべてのITシステムを運用・管理していた。そのため、担当者は24時間365日体制でシステム管理を任され、相当なプレッシャーを感じていた。
 他方、オンプレミスで構築したITシステムには遊休リソースが多く、それが看過できない状況だという認識もあった。だが、情報システム担当者にその課題を解決する余裕はなく、ただ時間だけが過ぎていった。
「クラウドを導入して業務をアウトソースすれば、自分にかかる負荷は軽減し、遊休リソースの課題も解決する」。情報システム担当者はそう考えていたが、クラウドベンダーに自社の資産を預けることにセキュリティ面で不安を感じ、A社はクラウド導入に踏み切れなかった。

 A社がセキュリティ面で不安を感じる気持ちは理解できる。だが、実際にはプライベートクラウドを導入すれば社内ネットワークと同等の安全性を保つことができる。また、リソースを柔軟に変更できるパブリッククラウドもある。

 最終的にA社は、プライベートクラウドとパブリッククラウドの両方を組み合わせて必要な個所に必要なセキュリティレベルを確保、全体最適を実現した上で情報システム担当者の業務をアウトソースするに至った。これにより担当者の負荷は軽減し、より付加価値の高い業務や戦略的な業務を行えるようになった。

 

社内事情がクラウド導入を妨げていたB社

 クラウド利用を含めた社内システムのアウトソースを進めるにあたり、社内の抵抗にあったのがB社だ。

 抵抗勢力の1つは営業部門や製造部門の幹部。「クラウドを導入してもコストメリットは本当にあるのか。そもそも現状のITで業務が問題なく行えているのにわざわざシステムを変える必要があるのか」といった声が上がっていた。

 もう1つの抵抗勢力はITシステムを運用している情報システム部のスタッフ。これまで自分たちが携わってきた業務に変化が起きることに対する拒否感と、新しい形でのシステムに直面することへの不安を感じていたのだ。

 そこでB社の情報システム部長は、それぞれのステークホルダーに対して“彼らの視点から納得のいく説明”を行うことにした。… 続きを読む

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百瀬 崇

百瀬 崇

シピン

フリーライター。ITとビジネス全般を中心に取材・執筆活動を行う。特に情報通信業界での取材経験が豊富で、クラウドコンピューティングやスマートデバイスなどの記事をWebサイトや雑誌などで数多く発表。

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