なぜ多くの企業はクラウドの導入に踏み切れないのか(前編)

クラウドは問題解決のための手段であり目的ではない

2013.08.02 Fri連載バックナンバー

 あなたはクラウドについて知っていますか――。「大体のことはわかっている」。こう答えるITシステム部門担当者は多いだろう。だが、本当にそうだろうか。多くの企業でクラウドの導入が進んでいるという市場調査レポートもあるが、社内には、まだまだ数多くのサーバーが稼動していないだろうか。なぜクラウド導入が停滞しているのか。ここで改めてクラウドについておさらいし、現実解として浮かんでくる姿を確認したい。

 

多くの企業は本当にクラウドを導入しているのか!?

 多くの企業が、すでに「何らかのクラウドサービスを導入している」か、そうでなくても、「クラウドの導入を検討している」という。
 だが、実際にクラウドを導入しているという企業でも、その内容はどうだろうか。メール、ストレージ(ファイルサーバー)、スケジューラー、勤怠管理などのSaaS(Software as a Service)を部分的に導入しているに過ぎない場合が多いのではないか。
 ASP(Application Service Provider)を利用していた時代とあまり変わらない。しかも社内には、いまだ数多くのサーバーが残っており、データ/システムバックアップや電源二重化などのBCP対策が不十分だったり、中には保守が切れた状態で稼働をし続けるサーバーもあったりする。
 「クラウドが本来持つメリットを十分に生かし、IT基盤を最適化している企業は依然として少数」と、ITコンサルティングを手掛ける株式会社チェンジの高橋友憲氏は指摘する。
 多くの企業は何故、クラウドを十分に活用出来ないままなのであろうか――。

 

クラウド導入で得られるメリットとデメリット

 実はまだ多くの人が、クラウドの本質に気付いていないのではないか。改めて、クラウドが本来持つメリットについて整理してみたい。

 「大きく3つのメリットがある」と高橋氏は説明する。

 1つはハードウェアの所有に伴う様々な負担(導入コスト、運用工数、更改の検討負荷など)から解放されること。SaaSだけでなく、PaaS(Platform as a Service)やIaaS(Infrastructure as a Service)も活用することで、「所有するITから利用するITへ」の移行によってITコストを最適化しつつ、経営方針の変化にも柔軟・迅速に対応できるIT基盤を手に入れることができる。
 一般的にオンプレミスで構築したITシステムには遊休リソースが多い。「企業が利用するサーバーのCPUの平均稼働率は10%にも満たない」との報告もある。なぜそうなるのか。
 それはITシステムの能力を「想定される最も多い利用を元にサイジングして構築」しているから。最も多い利用に対応できなければ、そのITシステムはダウンしてしまうからだ。それを恐れて多くの企業はほとんどの時間、使われることがないハイパフォーマンスなITシステムを構築、保有することになる。オンプレミスの性質上、それは仕方のないことでもあるのだ。

 クラウド(IaaS)の場合はどうだろうか。クラウドの特長の一つとして、必要なときに必要な分だけリソースを柔軟に調達できることが挙げられる。そのため、普段はそれほどパフォーマンスの高くないシステムで運用しつつ、ハイパフォーマンスが必要なときだけ、それに対応できるシステムを使うことができる。これによりシステムの遊休リソースをぐっと抑えることができる。また、経営環境が変化し、不要となったサーバーを削除するといったことも機器の廃棄や減価償却等の経理処理が伴わないので簡単・迅速に行うことが出来るし、他のシステムにその分のリソースを活用することもできる。これを「不要リソースの返却・有効活用」と呼んでいるが、オンプレミスとクラウドの大きな違いの一つだ。

 2つめのメリットは、ITシステムのアジリティ(俊敏性)を高められること。… 続きを読む

全文(続き)を読む

続きを読むにはログインが必要です。

まだ会員でない方は、会員登録(無料)いただくと、続きが読めます。

百瀬 崇

百瀬 崇

シピン

フリーライター。ITとビジネス全般を中心に取材・執筆活動を行う。特に情報通信業界での取材経験が豊富で、クラウドコンピューティングやスマートデバイスなどの記事をWebサイトや雑誌などで数多く発表。

このページの先頭へ
Bizコンパス公式Facebook Bizコンパス公式Twitter