最先端の経済インテリジェンス(第1回)

なぜピケティの理論は世界中で受け入れられたのか

2016.01.08 Fri連載バックナンバー

 フランス人経済学者で、ビジネス書のベストセラー『21世紀の資本』の著者で知られる、トマ・ピケティ氏。ビジネス書で彼の名前を見かけないことはないほど、同氏の理論は広く知られるようになった。

 しかし、なぜピケティ氏の理論は、日本をはじめとする世界中のビジネスパーソンで受け入れられたのか。そして彼の理論は何が新しく、なぜ重要なのか。今回はピケティ氏の主張を、経済書の古典と言える2大理論と並べて紹介する。

 

働いて給料を得るよりも、資産投資の方が儲かる

 ピケティ氏を「時代の寵児」と呼ぶことに、異論を唱える人はほぼいないだろう。世界各地で発生している「格差」の問題を取り扱った『21世紀の資本』は、新聞、雑誌、テレビなど、場所を問わずにさまざまな場所で論じられている。

 彼の主張の核心は、資本収益率が経済成長率を上回るという、「r(資本収益率)>g(経済成長率)」という式にある。この点が、ピケティ理論のエッセンスとなっている。

 ピケティ理論のエッセンスを簡単にまとめると、債券や株、不動産といった「投資」の資産から生まれる利益のほうが、経済成長に左右されやすい労務所得よりも大きくなる。そのため、投資に回せる資産をより多く持つ者に、より多くの資本が集まり、格差が拡大するということである。

 さらに、資産家に集中していく資本は、親から子、子から孫へ受け継がれる過程、つまり世襲を繰り返す間にも、資産から得られる所得や資産そのものが増大していく。格差は縮まるどころか、さらに拡大していくことをピケティ氏は指摘したのだ。

 こうしたピケティ理論の真価を問うには、ほかの偉大な経済学者の主張と比べてみるのがいいだろう。そこで今回登場させたいのは、自由経済論の象徴と目されるアダム・スミスと、資本主義のメカニズムを解き明かしたカール・マルクスだ。

 

“神の見えざる手”と格差の距離

 現在の自由経済の基礎とも言える考え方を唱えた論客の一人が、アダム・スミスだ。彼の主張はというと、… 続きを読む

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上杉 学

上杉 学

ライター

家電業界紙やITニュースサイトなどを中心に、経済・産業分野で、10年以上の経験を持つ編集ライター。大学で環境科学を学んだ後、英国で学んだ政治経済学の知識なども基に、広い分野で執筆活動を展開している。

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