ノーベル賞受賞の経済学を分析

「井戸端会議」が判断ミスを防ぐ

2015.04.24 Fri連載バックナンバー

 井戸端会議は、愚痴のはけ口として職場内のガス抜きには欠かせないものです。ここでいう井戸端会議とは、同僚や上司や社長の言動について、相手の耳には入らないものと安心して、あるいは諦めて、コーヒーでも飲みながらオフレコで気軽に話せる職場での内輪話を指します。

 重大な意味を持たないかのように思える井戸端会議ですが、その内容とは、それぞれがそれぞれの立場から対象を眺めた岡目八目の観察結果です。そのため自分が無意識のうちに誤った判断してしまっている事柄について客観的なフィードバックを得ることができ、その判断を正す上で非常に有益なものになります。

 しかし、どうして人は無意識のうちに誤った判断をしてしまうのでしょうか。なぜ井戸端会議をして、初めてやっとその誤りに気づくのでしょうか。

 そのための方策を、2002年にノーベル経済学賞を受賞した心理学者、行動経済学者のダニエル・カーネマン氏が、著書「ファスト&スロー」の中で示しています。本稿では以下に数例を挙げて、そのごく一部を紹介します。

 

井戸端会議の効果1:過去の記憶が錯覚であることを気づかせてくれる

「あんまり何度も繰り返されたせいで、信じたくなっているのかもしれない。ここで考え直すべきだと思う」(「ファスト&スロー」上・第5章より)

 人は、たまたま最近どこかで見たり、誰かから聞いたりしただけの単語であっても、その後その単語を識別することが簡単になるため、「馴染みがある、よく知っている」という印象を持ちやすくなります。そして正確な知識を持っていないにもかかわらず何らかの判断を下さなければならないという時に、つい認知し易さに頼ってしまい、見覚え、聞き覚えのあるものを真実と結論付けてしまうのです。これが「真実性の錯覚」です。

 心理学者ラリー・ジャコビーも、「見覚え、聞き覚えといった感覚は、単純だが強力な『過去性』という性質を帯びており、そのために、以前の経験が鏡に直接映し出されているように感じる」と説明しています。

 これらの錯覚は、自分自身で錯覚と気がつくことも決して不可能ではありません。しかし、たいていの場合はあっさりとそのまま突き進んでしまうものです。周囲が気が付いているのであれば、井戸端会議によって再考を促す必要があります。

 

井戸端会議の効果2:因果関係をムダに意識しないで済む… 続きを読む

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名田 庄子

名田 庄子

フリーライター

2014年より執筆活動を開始し、目下のところウッドハウス中毒ながら、法務を中心に幅広い分野で執筆をしている。

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