温故知新 時代を作ったビジネス書から学ぶ(第13回)

伝説のコピーライター、ケープルズから学ぶ文章術

2015.06.19 Fri連載バックナンバー

 かつて、広告に関係しないビジネス・パーソンは、コピーライティングの書籍を読む必要はありませんでした。注目されるための文章を書くことは、ごく限られた人の仕事だったのです。

 現代を振り返ると、Webサイトの構築費用が下がり、ブログを無料で始められ、メールマガジンが重要な顧客ツールとなり、ソーシャルメディアが浸透し、業務上の連絡は電子メールやグループウェアとなりました。好意的に注目されるための文章の創作が、全ての人々の仕事の基盤となったのです。

 そんな現代、ケープルズの書籍が文章術の教科書となります。今回は、ジョン・ケープルズ『ザ・コピーライティング―心の琴線にふれる言葉の法則』(2008.9,ダイヤモンド社[以下「コピーライティング」])から、彼の文章術を学んでみましょう。原著は1932年で、翻訳の監修はマーケティングで有名な神田昌典氏です。

 

コピーライティングの科学的な分析でケープルズが発見した事実

 ジョン・ケープルズは1900年生まれで、海軍士官学校を卒業後、適職を求めコロンビア大学で広告とコピーライティングを学び、文章を書く仕事に就きました。大手広告代理店のBBDO社に転職、同社で56年間活躍しました。ケープルズは多数の伝説的コピーを創作、そのノウハウは本書に結集されました。

 第4回目で取り上げたフレデリック・テイラーが仕事を科学的に分析したように、ケープルズはコピーライティングを科学的に分析しました。彼はコピーをテストしたいと熱望し、識別記号付きの広告を使い始めたのです。

 識別記号は、広告の内容・媒体・時期を特定する記号や番号です。タイプAの広告の資料請求は販売部A係宛、タイプBを販売部B係宛とすることで、タイプAの広告の反応と、タイプBの広告の反応とを数値で明確に比較することができます。このような宛先に識別記号を入れるほか、割引クーポンの識別番号を異なるキー(Key)としたり、問い合わせ電話番号を広告のタイプの数だけ用意することもありました。

 「この識別記号は広告における大発明で、レントゲンが医学の発展に貢献したのに匹敵する。(略)識別記号を使えば、どの広告が1番たくさん注目を集めたかがわかる」とケープルズは述べています(コピーライティングp.52)。

 このケープルズの分析により、次のことが分かりました。

(1) 見出しが重要である。
(2) 成功する見出しでは、「得になること」、「新情報」または「好奇心を刺激すること」が、具体的に伝えられている。

 「見出しの目的は、見出しだけ読んでそのあとのコピーを読むかどうかを決める人に対して、メッセージを伝えること」です(コピーライティングp.67)。

 

効果の高い成功する見出しには、訴求ポイント(キーワード)が入っている

 ケープルズは、人の気持ちを動かす何かを「訴求ポイント(appeal)」と名付けました。「訴求ポイントの重要性に私が注目せざるをえなくなったのは、次の実験のおかげだった。あるクライアントの1年間の雑誌全面広告を11点用意して、テストのためにクーポン返信数を調べたのだ」(コピーライティングp.149)。

 効果の高かったグループには、… 続きを読む

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鈴木 健治

鈴木 健治

特許事務所ケイバリュエーション 所長 弁理士

経済産業省産構審小委員会の臨時委員、(財)知財研 知的財産の適切な活用のあり方に関する委員会委員などを歴任。著書に「知的財産権と信託」『信託法コンメンタール』(ぎょうせい)、論文に「知材重視経営を支えるツール群に関する一考察(月刊パテント)」などがある。取引先の経営者・担当者にビジネス書の書評をお届けしている。公式サイト:http://kval.jp/

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