温故知新 時代を作ったビジネス書から学ぶ(第12回)

オズボーンに学ぶ「ブレインストーミング」の作法

2015.06.08 Mon連載バックナンバー

 独創力を個人の才能ととらえる東洋的・日本的な思想に対して、1950年代のアメリカでは、独創力は誰にでもあり、教育で鍛えることができるという「独創力の体系化」が生まれました。広告会社の経営者で、ブレーンストーミング(ブレスト)の発案者であるオズボーンが、「質問技法」を使うと誰でも独創力を伸ばせる、ということを見つけました。質問技法は、定型的な質問を自問していくことで、良いアイデアを生み出す、という発想法です。

 今回は、A.F.オズボーン『独創力を伸ばせ』(1982年3月,ダイヤモンド社,原著初版1930年,1963年第3版より[以下、独創力])に注目します。翻訳は、能率運動に活躍した上野一郎です。

 

アイデアがアメリカを創った

 オズボーンは、「アメリカは世界の独創的流れの中の幸運な受益者であった(独創力p.4)」と述べています。アメリカでは1960年代までに、馬が自動車や飛行機へ代わり、鉄道、大西洋横断電話、ラジオ、テレビが生み出されました。内燃機関というアイデアは、アメリカの自動車産業となり、900万人以上の職業を生みだし、生活水準向上させました。

 オズボーンは、独創性に関する情報や偉人の発言を幅広く収集しました。そして、程度の差こそあれ「想像力はだれにでもある」と断言しています。「独創の効率は生まれつきの才能というより、精神エネルギーの量によって変わってくる」と述べています(独創力p.6)。

 オズボーンは、独創力に男女差がないどころか、女性の方が優秀というデータに注目し、なぜ女性の発想力は豊かなのかを分析しました。「買物にしろ、食事を整えるにしろ、子どもたちにこうしなさい、というにしろ、なんと工夫をはたらかさなければいけないことが多いことか」ということです。近年の男性でも発想力が豊かでスマートな方は、家事も上手な傾向があります。職場の命令に従っているのみで家事をしたがらない方は、自分の独創性を発揮したくないのかもしれません。

 「赤ん坊がお乳を飲まず、むずかって泣いても、母親はすぐにはあきらめないだろう。どうしたら飲むようになるか、その方法を考え出す」(独創力p.10)と説明しています。まさに、あきらめないという母の情熱が、アイデアを生み出すのです。

 

ブレーンストーミングで守らなければいけない4つのルール

 現在、多くの企業で行われているブレストは、オズボーンが発案したものです。ブレストについて念のため説明すると、5名から10名程度の参加者が次々とアイデアを提案していく会議です。広告業界や研究開発などの分野で現在でもよく行われています。

 このブレストは、オズボーンが経営する広告会社で1938年に最初に開催されました(独創力p.104)。1947年にはアメリカ政府でブレストが正式に採用され、第二次世界大戦前から、アメリカ軍でもブレストが行われていました。「ブレインストーム」には、頭を使って問題を攻撃するという意味があります(独創力p.104)。

 ブレストでは「判断を先に延ばす原則」が厳格に守られなければならないとオズボーンは教えます。これは、アイデアの良し悪しの判断を先に延ばすという原則で、オズボーンは次のブレスト4つのルールを導きました。… 続きを読む

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鈴木 健治

鈴木 健治

特許事務所ケイバリュエーション 所長 弁理士

経済産業省産構審小委員会の臨時委員、(財)知財研 知的財産の適切な活用のあり方に関する委員会委員などを歴任。著書に「知的財産権と信託」『信託法コンメンタール』(ぎょうせい)、論文に「知材重視経営を支えるツール群に関する一考察(月刊パテント)」などがある。取引先の経営者・担当者にビジネス書の書評をお届けしている。公式サイト:http://kval.jp/

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