世界の冠婚葬祭事情(第3回)

物はいいから金をくれ!~オランダの冠婚葬祭

2016.01.04 Mon連載バックナンバー

意外と質素な「パーティ・アニマル」

 オランダ人の異名に「Feest Beest(フェースト・ベースト)」というものがある。これは一体何を指すのかと思いきや、英語にすれば「パーティ・アニマル」つまり人と集まって大騒ぎをすることが大好きな生きものを意味するのだそう。気の置けない仲間のみならず、誰とでも一緒に楽しくパーティを催すことが人生のモットー、というオランダ人たちだけのことはあって、彼らの冠婚葬祭もこの延長上にある、といっても過言ではない。

 パーティには「楽しいひととき」「おいしいワイン」「友だち」……などなど、一種の華やかさが伴うのが普通である。しかしパーティ・アニマルの異名をとるオランダ人たちが集まって行なうそれは、かなり地味で質素だ。

 たとえば人生の門出を祝う結婚披露宴でも、日本式の豪勢な祝い方から比較すれば、とても式とは言いがたいほど質素だ。もっとも一般的な結婚式の手順は、まず役所に行って婚姻届にカップルがサインをし、そのあとでお祝いパーティを開く、という一応の段取りを踏む。しかしこのパーティも、10人ほどの人が入れば満杯になってしまうような小さなカフェで行なわれたり、天気がよければ近所の野原でピクニック形式だったりと、これが結婚式パーティなの?と疑いたくなるほど素朴で地味なのだ。

 日本でも地味婚がトレンド化したことがあったが、オランダのそれはさらに地味度が高い。教会で神父を前にロマンチックに式を挙げ、その後は家族や友人たちと2次会、3次会と祝いの席がこれでもかと続くことなど皆無だ。

 しかしこれにはわけがある。結婚も同棲も法的に同等の権利を有するオランダでは、事実婚が一般的なため、すでに気が合うカップル同士なのだから、何も大げさな式などをして散財する必要もないと考えるがゆえなのだ。

 ちなみにこうしたパーティに呼ばれたときの過ごし方にはひとつだけ条件がある。常に和気藹々とした雰囲気を保ち、大いに喋り、ときには踊って心の底からエンジョイすることだ。地味で質素だからこそ、「集まる楽しみ」が倍増するということを体験できるにちがいない。

 

ご祝儀にはストレートに現金を

 こうした結婚パーティの告知を受けたとき、ひとつだけ知っておいてほしいことがある。カップルの名前や開催時が記されたパーティの招待状に、「私たちは皆様からの結婚祝いを遠慮いたします」と記されていることがあるが、ここで“さすがは質素な地味婚ゆえだな”と、安心してはいけない。遠慮いたします、の次に決まって続くのが… 続きを読む

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稲葉 霞織

稲葉 霞織

現地在住ライター

1996年よりアムステルダム在住。政治経済からエンタメまで、オランダに於ける最新情報を各メディアに発信中。海外書き人クラブ所属。

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