クレームを生かす経営手法

高橋酒造が取り組むクレームを活用したPDCAサイクル

2015.03.30 Mon連載バックナンバー

 アジア、欧米の26カ国に商品を輸出するなど、球磨(くま)焼酎業界を牽引する焼酎メーカー「高橋酒造」(熊本県人吉市)。年間80億円を売り上げる企業が最も大切にしていることは、お客様相談室に寄せられるクレームをチャンスと捉え、PDCAサイクル(計画:Plan、実行:Do、チェック:Check、改善:Act)で経営に生かすという地道な作業だ。

 相談室立ち上げの経緯や経営に生かした具体例などについて、同社を取材した。

 

球磨焼酎を取り巻く環境

 球磨焼酎は、熊本県南西部に位置する球磨地方において、400年以上の歴史を持つ。米のみを原料とし、球磨地方の地下水で仕込んだもろみを、球磨地方で蒸留、瓶詰めした焼酎を指す。現在、28蔵元が製造。あまり知られていないが、「シャンパン」「スコッチ」などと同様、「球磨」という原産地の付いた呼称が国際的に認められている。

 蔵元の大半が小規模経営という中、最大手として地域を引っ張るのが「白岳」「しろ」などの商品で知られる高橋酒造だ。1900年(明治33年)創業で、現在の高橋光宏社長が5代目。社員数60人程度にもかかわらず、一升瓶換算で年間およそ540万本の球磨焼酎を生産しており、年間出荷額は約80億円にのぼる。

 大都市でのPRにも力を入れている。出荷先は、県内が出荷量全体の約35%なのに対し、福岡県が23%、関東も約12%を占める。さらには、米国やASEAN諸国など26カ国に輸出するなど、グローバル企業としての活躍も光る。

 急峻な九州山地に囲まれた盆地に位置しながら、今や九州随一の企業にまで成長した同社。実はその最大の“アドバイザー”を務めるのが、消費者なのだ。

 

お客様相談室の立ち上げ

 同社が、消費者からの問い合わせ窓口「お客様相談室」を開設したのは、2006年4月のこと。それまでは、熊本、福岡など各地の営業所・支店が個別に対応していたが、対応の均一化を目的に、窓口を一元化。同時に「事案を個別に解決しただけで完結していた」(久保田一博・お客様相談室長)という対応を改めるため、クレームの呼称を「ご指摘」とし、改善に生かす努力を始めた。

 しかし、道のりは平坦ではなかった。同社が1日に製造する焼酎は、約4万本。久保田室長が消費者の「ご指摘」を現場の職人に伝えるも、「4万本中の1本など、重要視してくれない時期もあった」。だが久保田室長は諦めなかった。… 続きを読む

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田中 森士

田中 森士

戦略PRコンサルタント・熊本市社会教育委員

熊本大学大学院で消費者行動を研究した後、県立高校の常勤講師(地理・歴史)、全国紙記者を経て、現職。地元・熊本に軸足を置きつつ、全国で活動している。企業PRやまちおこしのプロジェクトに携わるかたわら、「伝え方」をテーマにした高校での講演や、これからのPRを考えるWEBマガジン「PR NEXT」の運営もこなす。http://pr-next.com/

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