企業の社会的責任(CSR)を考える(第2回)

CSRが株価にどんな影響を与えるのか?

2015.03.09 Mon連載バックナンバー

 前回は、CSR(企業の社会的責任)やCSV(共通価値の創造)が何か、そして現状としてどのような取り組みがなされているかについて解説しました。第2回目では、CSRを果たすことで企業はどのような効果を得られるのか、について解説していきます。

 

SRIによる株価戦略

 CSRを行うことによる効果のひとつに、SRI(Socially Responsible Investing)による企業価値の向上があります。SRIとは、「社会的責任投資」と訳され、CSRを実践している企業に対する投資のことです。

 SRIの歴史は、CSRの歴史とほぼ同じで、1920年代にさかのぼります。1971年に初めてのSRIファンドが形成され、1980年代から1990年代に急速に数を増やしていきました。その背景には、SRIファンドのパフォーマンスが、他の一般的なファンドに比べて配当率が高いということがあります。

 このようにパフォーマンスがよい理由としては、CSRを実践している企業は、社会からの評価も高いので、投資家が安心して投資できるということがあります。また、環境や人権に配慮し、法令遵守はもちろんのこと、コーポレート・ガバナンスにも真剣に取り組んでいる企業は、問題を起こすリスクが少ないという意味でも投資対象になりやすいということがあります。

 したがって、自社の株価を上げたい場合には、収益を上げていくことはもちろんですが、併せてCSRを実践していくことが有効であるといえます。より具体的には、SRIファンドに組み込まれるような企業になることが投資家に評価される企業ということになります。

 

SRI の額は増え続けている

 実際にどれだけSRIが増えているのでしょうか。米国のSRIの資産残高は、2003年は2兆1,640億ドル、2005年は2兆2,900億ドル、2007年は2兆7,110億ドル、2010年は3兆690億ドル、2012年は3兆7,440億ドル、と順調に増えています( SRIの調査を行っている米国のUS SIFの報告書「Sustainable and Responsible Investing Trends in the United States 2012」より)。

 一方、日本のSRI投資はどうかというと、「NPO法人社会責任投資フォーラム」の調べによると、2014年9月末時点で8,731億円となっています。アメリカに比べるとまだ少ない規模と思われるかもしれませんが、日本の公募投信は全体で93兆円程度なので、1割弱はSRIに流れていることになります。1割という数字は、アメリカでのSRIの割合とそれほど変わりません。

 日本のSRIファンドの資産残高の推移については、年度ベースでのデータがないので米国との比較はできませんが、2003年9月末時点では710億円だったので、現在までの11年間で12倍の規模に膨らんでいることになります。

 

CSRで企業価値が向上する

 SRIファンドは、急激な株価の上昇を期待するというより、長期的な視点にたって、安定的に収益を確保する企業に投資するというスタンスです。そのため、SRIファンドの投資家も短期売買を繰り返すことは少なく、株価の安定に寄与していると考えられます。また、SRIファンドに選ばれることで、その会社はCSRを実践していると評価されるので、一般投資家からの投資も増えることが期待できます。

 つまり、CSRを実践することは、資金調達の面で有利になるということです。また、株価=企業価値と考えるならば、企業価値の向上につながることになります。… 続きを読む

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伊達 諒

伊達 諒

エコノミスト、コンサルタント

日本銀行で金融機関の経営分析、厚生労働省で政策の調査業務などを経て、現在に至る。金融、経済、経営、会計、税、行政と幅広い分野での執筆活動をしている。MBA、CFP、1級FP技能士の資格を保有。

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