企業の社会的責任(CSR)を考える(第1回)

なぜCSR(企業の社会的責任)を行う必要があるのか?

2015.03.02 Mon連載バックナンバー

 企業が持続的に発展していくためには、利益を出し続けることが必要ですが、一方で、企業が社会において認められることも重要な要素となります。そのためには、普段の経済活動に加えて、CSR(企業の社会的責任)やCSV(共通価値の創造)についても活動していく必要があります。

 本連載は、CSRやCSVとは何か、なぜCSRやCSV活動を行う必要があるのかについて、説明していきます。

 

CSR、CSVとは何か?

 企業は利益を上げるために存在しますが、社会の構成員という側面も有するため、社会において評価されなければ、信用は得られません。利益を生まない活動は、一見すると非合理的に見えますが、「あの企業はすばらしい」という社会的評価は、長期的な視点でみると価値を生み出します。そのため、世界の各企業は、CSRを実践するために、さまざまな取り組みを行っています。

 CSR(Corporate Social Responsibility)は、「企業の社会的責任」と訳されますが、今では、企業経営における重要な経営戦略の1つになっています。学問としては経営学や企業倫理学において研究されています。

 CSRをより具体的に定義すると、「企業を財務面だけでなく環境面や社会・倫理的側面に配慮して事業活動を行い、さまざまなステークホルダー(利害関係者)と、より良い信頼関係を構築し、社会および企業の持続可能な発展を追及すること」といえます。

 最近では、“共通価値”の創造を意味する「CSV(Creating Shared Value)」という概念も登場してきています。CSVは、たとえば社会的な課題がある場合にそれを解決するための製品、あるいはサービスを提供することで、社会に貢献すると同時に、企業も利益を挙げるというものです。いわば社会と企業が共に「Win-Winの関係」を築くものになります。

 “CSRが古い概念でCSVが新しい概念”というわけではありません。本来、CSRは企業の利益に結びつくはずのものですが、社会貢献やリスクマネジメントと捉えられる傾向が強くなってしまったために、単なるコスト、あるいは負担と誤解される傾向があります。そこで、社会的責任を果たすと同時に価値を創造するという意味で「CSV」という言葉が、アメリカの経営学者、マイケル・E・ポーターにより提唱されたのです。つまり、CSRが、単なる慈善活動ではないということを積極的にアピールするために、CSVという言葉に置き換えたということです。

 

CSRの歴史的背景

 それでは、CSRはどのようにして登場したのでしょうか。その起源は古く、1920年代の教会を中心とした武器、たばこ、アルコール、ギャンブルなどへの投資を排除する活動から生まれました。その後、1970年代には反戦、環境問題、公民権運動が広がる中で、大学などの機関が社会的責任を求めるようになっていきました。

 1990年代になると、アメリカで社会的責任を果たしていると判断された企業の株価を基準とする指標「Domini 400 Social Index」が開発され、その数値がアメリカの代表的株価指数である「S&P500」の数値を上回ったことから、急速に関心がもたれるようになりました。

 この指標は、社会的にネガティブと考えられる業種を排除し、社会的に優れた取り組みをしている企業を選び出していることから、平均的な企業と比べ、CSRを果たしている企業の方が株式のパフォーマンスが高いということを表しています。これを受けて多くの企業は、企業価値を高めるため、あるいはより有利な資金調達を可能にするためには「CSRに取り組む必要がある」と考え、CSRに積極的に取り組むようになったという背景があります。

 

CSRが注目される理由

 企業は利益の追求を目的にしているので、良い製品を作るために日々努力し、顧客を囲い込むためにマーケティングを駆使しながらターゲットを絞るなどしているはずです。しかし、特に大企業では、利益の追求についてはやり尽くしている感があるかもしれません。

 そのような状況の中、CSRを実践している企業の方が株価のパフォーマンスが高いという結果は、多くの経営者を驚かせました。… 続きを読む

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伊達 諒

伊達 諒

エコノミスト、コンサルタント

日本銀行で金融機関の経営分析、厚生労働省で政策の調査業務などを経て、現在に至る。金融、経済、経営、会計、税、行政と幅広い分野での執筆活動をしている。MBA、CFP、1級FP技能士の資格を保有。

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