温故知新 時代を作ったビジネス書から学ぶ(第1回)

荒れ地に価値をもたらした農村のリーダー・二宮尊徳

2014.12.22 Mon連載バックナンバー

 力のあるビジネス書は、人を育て、時代を作ってきました。福沢諭吉の『学問のすすめ』やスマイルズの『西国立志編』などが有名です。この連載では、実業界に影響を与えた書籍を取り上げて、現代の視点からその知恵を紹介します。明治時代のビジネス書のなかに、今、私たちのビジネスの役に立つ言葉がきっとあるはずです。温故知新――故き「ビジネス書」を温ねて、新しき「経営課題」を知りましょう。

 第1回のビジネス書は、二宮尊徳の名言集『二宮先生語録』です。

 江戸時代の農村では、田畑が荒れ地となり、人々が夜逃げをするような沢山ありました。この地の復興を命ぜられた二宮尊徳は、長期計画に基づいて復興事業を次々と成功させました。これは、日本の江戸時代の人口増加と発展を支えた「勤勉革命」です。なぜ二宮尊徳が荒れた農村をいくつも復興できたのか。明治時代に発売された『二宮先生語録』に注目します。

 

農村の経営コンサルタント・二宮尊徳

 まず、二宮尊徳がどんな人物だったのか確認しておきましょう。二宮尊徳は、幼名を金治郎(“二宮金次郎”で広く知られている)といい、江戸時代後期の1787年7月、相模国の栢山(神奈川県小田原市)で生まれました。農業を営んでいた父を14歳で、母を16歳で亡くし、父方の伯父の世話になりました。薪を売り、荒れ地を耕しながら蓄財し、わずか20歳で独立、荒れ地を買い戻しては開墾をして、24歳には約1.5ヘクタールの地主になりました。この再生手法を見込まれ、藩主や江戸幕府に請われて、各地の荒れ果てた農村の復興事業を指揮しました。

 尊徳の仕事を現代風にいうと、農村の再生を請け負う経営コンサルタントです。あるいは、不振企業に送り込まれる支援銀行の銀行員であり、破産企業を管理する破産管財人であり、農村の開墾に投資するベンチャー・キャピタリストです。

 尊徳は江戸時代末期の1856年10月、下野国の今市村(栃木県日光市)にてこの世を去りましたが、明治時代には、思想家・内村鑑三によって、西郷隆盛などとならぶ代表的日本人として英文で紹介され、海外でもその名が知られています。

 尊徳の死後、彼の弟子たちがその教えをしたためています。今回はそのなかから、尊徳の思想に近い『二宮先生語録(上)(下)』(斎藤高行原著、佐々井典比古訳注、現代版報徳全書5-6、一円融合会、1997年小訂)[以下「語録」]を紹介します。

 著者の斎藤高行は尊徳の弟子です。原著は漢文ですが現代語訳がでており、尊徳の偉業を紹介する小田原市の「報徳博物館」で入手できます。この現代語訳では、まとまりのある文章毎に471番までの番号が付いており、本稿でもこの語録の番号を引用します。

 なお尊徳に関する書物としては、『報徳記』や名言集『二宮翁夜話』もあります。

 

予算以上の収入を、将来のために投資し続ける

 「二宮先生語録」にある471のことばから、厳選の5つを紹介します。まず注目したいのが、「予算を厳格に守り、予算を超える収入を未来へ投資する」という、尊徳の先を見据えた姿勢です。… 続きを読む

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鈴木 健治

鈴木 健治

特許事務所ケイバリュエーション 所長 弁理士

経済産業省産構審小委員会の臨時委員、(財)知財研 知的財産の適切な活用のあり方に関する委員会委員などを歴任。著書に「知的財産権と信託」『信託法コンメンタール』(ぎょうせい)、論文に「知材重視経営を支えるツール群に関する一考察(月刊パテント)」などがある。取引先の経営者・担当者にビジネス書の書評をお届けしている。公式サイト:http://kval.jp/

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