歴史書店 三冊堂(第18回)

その心に信念あり!「鬼」と呼ばれた漢たち

2015.01.23 Fri連載バックナンバー

 突然ですが、想像してください。あなたは足軽です。もしも、「我が軍の御大将は、鬼と呼ばれた御仁である!」と鼓舞されたら、「だったら勝てそう」って思いませんか?

 「鬼」はかつて実在すると考えられていましたが、実利主義が根づく戦国時代には既に虚構の存在でした。しかし、虚構になったからといって、忘れ去られたわけではありません。力が支配する戦国時代、人々はむしろ、人を越える鬼を求めていました。だからこそ、「鬼」と呼ばれる人間が次々と現れたのです。

 「鬼」の異名を取った戦国武将は、枚挙に暇がありません。織田家筆頭家老の柴田勝家は「鬼柴田」、四国統一を果たした長宗我部元親は「鬼若子」、徳川家康の懐刀として活躍した服部半蔵は「鬼半蔵」、関ヶ原の戦いで島津の退き口をやり遂げた島津義弘は「鬼島津」、同じく関ヶ原で石田三成を助けて玉砕した島左近は「鬼左近」などなど、いずれ劣らぬ猛将ぞろい。

 さらに時代が下ると、泰平の江戸時代にも鬼がいます。『鬼平犯科帳』で有名な「鬼の平蔵」こと長谷川平蔵です。彼は江戸時代に役人として活躍した実在の人物なのです。

 そして幕末には、「鬼の副長」の異名を取った新選組副長の土方歳三、清河八郎や山岡鉄舟と同じ玄武館出身の剣豪「鬼秀」こと下江秀太郎や、戊辰戦争で会津最強の一団を率いた「鬼官兵衛」こと佐川官兵衛など、やはり多くの鬼が存在します。

 鬼と呼ばれた彼らの共通点として最初に浮かぶのは、「戦闘能力が高い」という点でしょう。

 鬼若子は今まで使ったことがない槍を、初陣直前に部下からちょっとレクチャーしてもらっただけで使いこなしましたし、鬼半蔵も槍の名手として名を馳せていました(半蔵は徳川忍者チームのまとめ役で、本人は普通の武将でした)。鬼秀は幕末にあって「日本一の突きの名人」と恐れられ、明治維新後は警察官になり、警視庁最強の剣客と称えられた人物です。「強さ」は戦う男に求められる一番の資質でしょう。

 しかし、彼らの真骨頂は「肉体的に強い」以上に、「精神的に強い」ところではないでしょうか。… 続きを読む

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かみゆ歴史編集部

かみゆ歴史編集部

歴史コンテンツメーカー

歴史関連の書籍や雑誌、デジタル媒体の編集制作を行う。ジャンルは日本史・世界史全般、アート、日本文化、宗教・神話、観光ガイドなど。おもな編集制作物に『日本の山城100名城』(洋泉社)、『一度は行きたい日本の美城』(学研)、『戦国合戦パノラマ図鑑』(ポプラ社)、『系図でたどる日本の名家・名門』(宝島社)、『大江戸今昔マップ』(KADOKAWA)、『国分寺を歩く』(イカロス出版)など多数。お城イベントプロジェクト「城フェス」の企画・運営、アプリ「戦国武将占い」の企画・開発なども行う。公式サイトはwww.camiyu.jp

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