事業部長のためのIoT実現ガイド(第1回)

今こそ聞きたいIoT!3つのイノベーションと適用事例

2016.05.10 Tue連載バックナンバー

 IoT(Internet of Things)は、その言葉のとおりあらゆるモノ(Things)をインターネットにつなぐことを指します。従来のITでは人と人、モノ、情報などをつないできましたが、IoTの社会ではモノ同士がつながり、しかも自律的に交信します。その結果として、仕事や生活の利便性が向上することはもちろん、新たなサービスが生まれたり、仕事の進め方にイノベーションが起きたりすることもあるでしょう。

 この連載では、全4回に渡ってIoTの可能性や活用事例を踏まえ、実際に経営課題を解決できるIoT導入方法を紹介します。1回目となる今回は、IoTの概念や仕組み、活用技術など、押さえておきたいIoTの基本についてお伝えします。

本記事の最後より、日本と海外のIT事例をPDFにまとめた「IoT事例集:日本と海外の産業別取り組み例」の資料がダウンロードできます。

 

IoTとは何か。概念と基本的な仕組み

IoTの概念

 IoTの「あらゆるモノがインターネットにつながる」という考え方は、実は以前から存在していました。

 たとえば、2000年代によく耳にしたユビキタスです。これは、あらゆるモノにコンピューターを内蔵し、いつでも、どこでも、誰もがコンピューターとつながるという構想です。IoTとの違いとしては、つながる対象となるモノの種類、数が挙げられるでしょう。ユビキタスの構想には含まれてこなかった自動車、家、衣類などもIoT社会では対象となります。

 M2M(Machine to Machine)もIoTと似ています。これは、モノとモノのつながりを主とするもので、製造現場や交通インフラなどで使われています。ユビキタスが、社会やネットワークといった広い視野での構想や展望を意味するのに対して、M2Mはそういった社会を実現するための技術のひとつとして捉えられる点が特徴といえます。

 また、IoTとの違いとしては、M2Mが工場や特定のインフラ内といった活用領域の限りがあるのに対して、IoTは社会に存在しているあらゆるモノを対象とし、人とモノのつながりも含むという点が挙げられるでしょう。その観点から見て、M2MはIoTに含まれるひとつの形態ともいえます。

 いずれにしても、つながるモノの数が多く、それだけに活用の範囲や可能性が大きいという点がIoTの特徴です。将来的につながるモノの数は500億を超えるともいわれます。このような巨大なスケールの中でモノとインターネットが繋がると、これまでデータ化できなかったものがデータ化され、それが蓄積されることで、ビッグデータが生まれます。IoTは、このビッグデータを計測、分析することにより価値が生み出されます。

IoTデータの利用価値に期待が集まる

 

IoTの仕組み

 IoTの構成要素は、デバイス、ネットワーク、クラウドの3階層に分けることができます。

・クラウド
 データを蓄積するとともに、収集したデータを分析する場にもなります。IoTでは対象となるモノの数が多く、データも膨大になるため、クラウドのような蓄積・管理できる環境が必要となります。

・ネットワーク
 主にインターネットを介してデバイスからデジタルデータを収集し、クラウドに送信します。

・デバイス
 センサーや通信モジュールを持つもので、取り付けたモノ、内蔵させたモノのデータを取得します。

 この構成要素を見てわかるとおり、仕組みそのものは決して複雑ではありません。ただ、これまで構想や概念の状態で止まっていたのは、技術が不足していたためです。いま、IoTが脚光を浴びている背景には、技術面でのイノベーションがあったのです。

 

・デバイスのイノベーション

 その一つが「センサー」です。より多くのモノにセンサーを取り付けるには、小さく、省エネ性に優れ、低価格であることが重要です。従来はこれらの点が課題となっていましたが、MEMS技術の高度化などによりこの3要件が満たされるようになりました。MEMSはMicro Electro Mechanical Systemsの頭文字で、加速度センサーやミラーデバイスなどの製品の高機能化に使われるデバイスを意味します。

 二つ目が「CPU・通信モジュール」です。IoT社会では膨大な量のデータを分析・解析する必要があり、処理するうえでスピードが求められます。それを実現しているのがCPUの高速化や計算処理速度の向上です。モジュールのイノベーションはビッグデータやクラウドを活用する時代に不可欠なポイントです。

・ネットワークのイノベーション

 通信速度が向上したとともに、3G・4G回線を使ったワイヤレスネットワークの通信が可能となりました。その結果、屋内外を問わず大量のデータを高速で安価にやりとりできるようになりました。

 ネットワークのイノベーションに関連して、もうひとつ押さえておきたいのがプロトコルの変化です。プロトコルは複数の機器がデータ等を伝送する際に使う規格のことで、IoTにおけるモノ同士の通信では同一のプロトコルを使う必要があります。従来のプロトコルIPv4ではIPアドレスを32bitで表現していたため、約43億個までしか割り当てられませんでしたが、128bitで表現できるIPv6ではその数が事実上無限大です。あらゆるモノをつなげるIoTにおいてIPv6は不可欠なものなのです。

・クラウドのイノベーション

 大量のデータを取得することができても、それを解析して処理するには大規模なデータウェアハウスや、クラウドなどの基盤が必要です。また、分析を行うために機械学習や統計分析や、データマイニングの技術も求められます。それらのビッグデータ処理の基盤技術が進化したこともポイントです。
 今後はさらにリアルタイムで大量の分析が必要になり、リソースを柔軟に増やすことのできるクラウド基盤上で動かすことがより求められるでしょう。

 

空港や鉄道、医療分野で「1%のオペレーション向上」を実現

 IoT社会はすでにスタートしています。では、実際にどんな風に活用されているのでしょうか。一部の例を見てみましょう。

 航空会社であれば、飛行機エンジンから送れてくるデータの分析がリアルタイムでできることで、飛行機の効率的な運用に寄与します。

 また、発電施設では、圧力、温度、振動、環境変数などのデータを分析することで、異常を突き止め、手遅れになる前に問題を発見できます。これらの社会インパクトは、航空事業、発電事業それれぞれで、石油削減効果が1%見込めると言われています。

 医療や福祉分野では、ウェアラブルデバイスでデータを収集するモニタリング事例が増えており、たとえば衣類などをIoT化してバイタルデータをモニタリングしたり、遺伝子や疾病履歴、診断データなどと組み合わせることによって予防医療に役立てたりするといったケースがあります。ヘルスケア業界では、システム効率が1%向上すると言われています。

 さらに、鉄道分野では、列車や駅の安全性を高めるためのセンサーやネットワークの活用が始まっています。データ解析を行うことで、列車の運行や鉄道設備のメンテナンスにおいて、1%のシステム効率があがると言われています。石油・ガス分野では、IoT化により深くて複雑な貯留層を効率的に探査することが可能となり、1%のシステム効率化が図れます。

 

IoTは経営課題の解決につながる

 これらは実用化が進み、社会の認知度も高くなったケースですが、IoTがもたらす可能性は計り知れません。むしろ活用例が多様化するこれからが本番で、何を、何のためにIoT化するかにより生活も仕事も大きく変わっていきます。

 とくにビジネスでは、生産性向上、品質向上、コスト削減といった普遍的な経営課題を解決するうえでIoTが大きな役割を果たすと考えられています。IoTにより、ありとあらゆるモノがインターネットにつながると、今まで気づくことができなかったものが定量化・可視化でき、それにより新たな切り口で業務改善や新たな価値の創出が可能になるためです。このような未来を見据え、IoTによってビジネスを変革させていく準備を始める時期を迎えているともいえます。

 海外ではすでにIoT導入により成果を上げている例も多数報告されています。自社でどのような取り組みができるかをイメージするために、国内外の産業別事例を参考にしてみてはいかがでしょうか。

日本と海外のIT事例をPDFにまとめた「IoT事例集:日本と海外の産業別取り組み例」は下記からダウンロードしてください。… 続きを読む

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