自治体に見る!これからのIT活用術

IT活用で地域活性化!北海道・岩見沢市の挑戦

2015.06.26 Fri連載バックナンバー

 2014年より第二次安倍内閣で「まち・ひと・しごと創生本部」が設立され、全国各地でさまざまな取り組みが行われています。少子高齢化や若者の都市部流出による人口減少といった大きな課題を抱える地方の存続は、今後日本が解決すべき大きな課題です。こうした地方創生で大きな役割を担っているのが地方自治体です。北海道の岩見沢市では、20年以上前から市民生活の質的向上、地域経済の活性化を目標としてITを有効活用。すでに数多くの成果を挙げています。地域を活性化させるIT活用のポイントを、岩見沢市の松野哲市長にお伺いしました。

 

IT基盤整備で高度な市民サービスを提供

 北海道の中央、石狩平野の東部に位置する岩見沢市は、北海道における陸上交通の要衝の一つ。特に石炭産業が盛んだった高度経済成長期には、近隣の炭鉱と道内の港湾都市を結ぶ一大拠点として大いに栄えました。しかし、石炭が石油に変わる時代を迎えると、地域の経済は徐々に衰退していきます。こうした状況に歯止めをかけるために、岩見沢市では1993(平成5)年に広域地域情報化促進協議会を設立。全国の地方自治体に先駆けて、ITの活用による地域の活性化に着手します。

 松野市長は「当時の市長が非常に先見性のある方で、人口が少なく、面積が広い地域特性の課題を解決するには情報化が大きな役割を担うと考えたのです。かつて岩見沢は“人” “もの”“お金”が集まる要衝でした。そこに“情報”を加えたゲートウェイシティとして機能を高めていくことを目指しました。こうして、『市民生活の質の向上』と『地域経済の活性化』に向け、社会の在り方をITで変えていく大きな構想で取り組みがスタートしました」と経緯を説明します。

 まず初めに、岩見沢市が取り組んだのはインフラの整備でした。1997(平成9)年、地域拠点施設「自治体ネットワークセンター」の立ち上げを皮切りに、市内の主要公共施設を結ぶ市内ネットワークと、岩見沢市と札幌市を結ぶ都市間ネットワーク用に、総距離195kmにわたる自営光ファイバー網を整備します。なお、光ファイバーの整備が困難な地域には無線を併用することで、地域全体のブロードバンド化を図っています。

 この自前のIT基盤を活用し、岩見沢市では教育、医療、福祉といった幅広い分野で次々に新たな住民サービスを提供していきます。市内の小中学校に導入された「双方向遠隔学習システム」(1997年~)は、デジタルコンテンツの一斉同報、学校間の交流など、教育分野で有効に活用されており、ビジネスモデル特許も所得しました。また、医療分野で導入されている「遠隔画像診断システム」(2003年~)は、北海道大学病院と岩見沢市を結ぶネットワークを利用してCTやMRI画像を送信。専門医による適切な医療処置を実現しています。安心・安全分野で導入された「児童見守りシステム」(2008年~)は、全小学生の希望者全員にICタグを無償で貸与。児童の登下校情報や不審者情報を配信するサービスは、9割以上の保護者から支持を得ていると言います。

 松野市長は「過疎化が進む地域で快適な生活を維持していくために、ITは非常に便利なツールになります。それを踏まえて、最初に取り組んだことは、市民生活の質を向上させるサービスの提供でした」と語ります。

 

基幹産業の農業をIT活用で効率化

 土地の約4割が農地を占める岩見沢市の基幹産業は農業です。主要な収穫物は米、麦、玉ねぎなど。畑作と違い、一定以上の規模が必要な土地利用集約型の農業と言えます。この基幹産業を守っていくことも、地域経済活性化に向けた市の大きな課題となっています。松野市長は「農業従事者の高齢化、後継者不足により、一人当たりの耕作面積が増加しています。その中で農業を維持するには生産の効率化、規模の拡大が重要です。この基幹産業を支えるツールとしてもITを積極的に活用しています」と、次なるIT活用領域を示します。

 岩見沢市では気象観測装置を市内13カ所に設置。取得した各種データをもとに50m×50m単位での収穫量・時期、病害発生を予測して情報を提供する「農業気象サービス」(2013年~)を開始しています。さらに… 続きを読む

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Bizコンパス編集部

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