M&Aを成功させるIT戦略

システム統合で失敗しない「業務視点」の心得とは

2014.09.04 Thu連載バックナンバー

 「2014年上期の日本企業による海外でのM&A(企業の合併・買収)金額が上昇。8年ぶりの高水準に!」というニュースが先ごろ発表されたことからも分かるとおり、内需の縮小やグローバル競争を勝ち抜くうえで、M&Aは重要な企業戦略となっています。IT視点から見ると、M&Aによる合併の効果を最大限に高める上で欠かせないのが「システムの統合」ですが、一方でシステム統合プロジェクトを立ち上げたものの途中で頓挫し、それぞれが元の会社のシステムを使い続けているというケースも少なくありません。

 なぜシステム統合は難しいのか。システム統合を成功させるためにはどうすればよいのか。これまで数多くのM&Aプロジェクトにコンサルタントとして携わってきた株式会社ローランド・ベルガーの菊地 泰敏氏にお話を伺いました。

<菊地 泰敏 氏 プロフィール>
国際デジタル通信株式会社、米国系戦略コンサルティング・ファームを経て、ローランド・ベルガーに参画。通信、電機、IT、電力および製薬業界を中心に、事業戦略立案、新規事業開発、商品・サービス開発、研究開発マネジメント、業務プロセス設計、組織構造改革に豊富な経験を持つ。また、多くのM&AやPMIプロジェクトを推進。グロービス経営大学院教授(マーケティング・経営戦略基礎およびオペレーション戦略を担当)。

 

M&Aによる企業合併の効果に大きな影響を及ぼすシステム統合

――国内企業におけるM&Aの動向についてお聞かせください。

 まず、M&Aの意味についてご説明申し上げます。M&Aとは、”Mergers(合併)and Acquisitions(買収)”の略ですから、文字通り「合併買収」を意味します。一般的にはこれに、広く“提携”までを含める場合もありますが、今回お話しさせていただくのは、あくまでも合併買収ということにいたします。

 さて、このM&Aのパターンは、大きく3つに分けられます。国内企業が海外企業を買収する「イン-アウト」型、海外企業が国内企業を買収する「アウト-イン」型、そして、国内企業同士が合併する「イン-イン」型です。この中で、今後大きく増えていくだろうと見ているのは「イン-アウト型」です。特に食料や飲料水などを製造する、俗に“胃袋産業”と呼ばれている領域は人口動態がビジネスに大きく影響します。日本は人口減少が続いているため、成長するための方策として海外市場に進出するという流れです。

 「イン-イン型」のM&Aも増えていくでしょう。これも日本市場の縮小傾向が影響しているのですが、国内においては成長余地が限られているため、国内企業同士で合併して経営効率を高める、あるいは、取引先企業との取引条件を向上させるといった目的で合併が増えるという流れです。一方、マーケット(市場)という面で日本の魅力が薄れていること、そしてマーケットの閉塞性や流通構造の複雑さなどを考えると、海外企業が日本企業を買収する「アウト-イン型」のM&Aは減っていくであろうと予測しています。

――ITの視点から考えたとき、M&Aを実施する際に注意すべきこととして何が挙げられるでしょうか。

 特に事業においてITが重要な役割を担っている企業の場合、M&Aによるシステム統合は合併交渉を進める際に真っ先に検討すべき事項です。なぜなら、システム統合が上手くいかなければ、合併によるシナジーが実現されない可能性があるほか、場合によってはITコストの増大につながるからです。

 しかし実際には、合併交渉やそのための下準備の段階においてITが議題になっても、それはあくまでも会計上の視点、つまり“資産価値”という側面で捉えられているケースがほとんどです。合併先企業の事業や日々の業務において「ITがどのように使われているのか」、「システムの統合は実現可能かどうか」といったことが意識されることは滅多にないのが実情です。… 続きを読む

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Bizコンパス編集部

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