戦略的Webサイトを目指す企業が知っておくべきこと(第1回)

実録!競合の一歩先行くデジタルマーケティング

2016.08.31 Wed連載バックナンバー

 CMSに顧客管理とマーケティングオートメーションの機能を掛け合わせ、デジタルマーケティング時代に相応しいWebサイトを構築するためのツールとして、CXMが注目を集めています。

 たとえば、ある大手人材派遣企業では、CXM導入によって人材派遣登録者数が導入前から比べて3倍に伸びたという効果を確認できたそうです。また、一般にB2Cビジネスのイメージが強いデジタルマーケティングですが、B2Bビジネスにおいても、グローバルにWebサイトを一元管理して多言語化対応を自動化したり、アクセス元企業を特定し表示するコンテンツを業種別、顧客別にコントロールする仕組みを取り入れたりして海外における売上を大きく伸ばした事例などが出ています。

 そこで今回は、今求められているWebマーケティングのあり方やCXMの具体的な仕組み、そしてCXMソリューションを選定する際に押さえておくべきチェックポイントについて、具体例を挙げながら、株式会社ジゾン 製品戦略本部 本部長の神野純孝氏のお話を交えつつ解説していきます。

 

企業のマーケティングを取り巻く状況の変化

 購買履歴やWebサイト上での行動、あるいは接触した広告に対する反応など、さまざまなデータを活用してマーケティングを実施する「データドリブンマーケティング」、あるいは収集した見込み客の情報を一元的に管理・選別し、確度の高いと考えられる顧客の情報を営業に引き渡す「マーケティングオートメーション」など、「デジタルマーケティング」を実現するためのさまざまな手法が確立されつつあります。

 このようなデジタルマーケティングへの関心が高まった背景として、株式会社ジゾン 製品戦略本部 本部長の神野純孝氏が説明するのは、企業のマーケティングを取り巻く状況の変化です。

 「マーケティングの第一人者である早稲田大学の恩藏直人教授の資料を引用すると、まずITが進化したことで、それぞれ個別の状況に対応しながら複数の顧客と同時にコミュニケーションが実行できるようになりました。またビッグデータ解析の技術が進化したことで、マーケティングに利用するデータの分析粒度や精度が向上しています。さらに膨大なデータを集めれば、感情まで分析できるようになり、マーケティングにおいて精緻なアクションを実施できるようになりました。そして増加した顧客接点で得た情報を活用すれば、顧客が欲しいと感じるタイミングで満足できる商品やサービスを提供できるわけです。これらを実現するために、デジタルマーケティングが必要になっていると考えています」

デジタルマーケティング「4つのキーワード」

 

デジタルマーケティングに対応できていない現状のWebサイト

 このデジタルマーケティングにおいて、中核的な役割を担うことになるのがWebサイトですが、一方で前時代的な考え方で構築されているケースが多いと神野氏は説明します。

 「顧客がWebサイトを閲覧する際、トップページからアクセスする人は2割を切っているという統計データがあります。まずはGoogleで検索し、その結果から製品ページへアクセスするという導線が一般的でしょう。いわばGoogleがトップページと言えるのです。しかし、それを認識していない企業はまだまだ多いというのが実感です。スマートフォンに十分に対応できていないケースも目立ちます。これまでのWebサイトは階層構造で組み立てられていましたが、スマートフォンではフラットな構造でなければ使いづらいのです。特にB2Cではスマートフォンでアクセスするユーザーが大半になっているにも関わらず、パソコンでのアクセスを前提にしていることが多いのです。このように企業と顧客の間で、Webサイトのとらえ方にギャップがあるのが現状です」

 Webサイトをマーケティングに活用するのであれば、こうしたギャップを解消することを考える必要があるのはもちろん、それに加えてユーザーごとに表示すべき内容を“出し分ける”ことも意識すべきだと神野氏は続けます。

 「スマートフォンは画面が小さいので、パソコンのように大量の情報を出せません。そのため情報を選別して提示する必要がありますが、その際に顧客が必要な情報は何かを見極めないと、顧客は『このWebサイトには欲しい情報がない』と判断して閲覧をやめてしまうことにもなりかねません。ちなみに女性向けのB2Cサイトの場合は、Google流入での滞在時間は1秒を切るというのが、実情です」

 

それぞれの顧客に対して適切なコンテンツの提示を可能にするCXM

 顧客がWebサイトにアクセスするために利用している端末だけでなく、性別や住んでいる地域、興味のある商品などに応じてコンテンツを出し分ける、つまりコンテンツのパーソナライズを実現できれば、Webサイトの活用の幅は大きく広がるでしょう。そのために多くの企業で導入が始まっているのが「CXM(Customer Experience Management)」です。

 CXMは、「CMS(Contents Management System)」と「CRM(Customer Relationship Management)」、そしてマーケティングオートメーションの一部機能を統合したものととらえることができます。それぞれの顧客に対してWebサイト上での行動や検索キーワードなどを「顧客の体験(=Customer Experience)」として個別に管理し、顧客の属性に応じてコンテンツを出し分ける、コンテンツパーソナライゼーションの仕組みなどを備えています。たとえば、Aという商品のページを参照したことがある顧客がWebサイトに再訪した際、ページの目立つ位置に商品Aのバナーを掲示し、商品ページへスムーズに誘導するといったことが考えられます。またECサイトであれば、購入に至らなかった商品の情報と割引クーポンを提示し、改めて購入意欲を喚起するといった使い方もできます。

特定したユーザーに対して、ユーザーの属性から最適な情報を提供

 「マーケティング分析にExcel、あるいはBIツールを導入しているケースは多いと思いますが、従来のソリューションの大きな課題となっているのはWebとつながらないことだったのです。いくら分析しても、それを自動的にWebに反映する手段がない。しかしCXMと呼ばれるツールであれば、顧客データに基づいてセグメンテーションしつつ、その内容に合わせてWebサイトに表示する内容をパーソナライズできるのです」(神野氏)

 コンテンツのパーソナライゼーションを実現する上でポイントになるのは、顧客情報の収集です。そのための方法としては、たとえば「Google Analytics」で得られる情報や、会員制Webサイトであればその登録内容、さらにIPアドレスから所属している企業なども判断できます。これを事前に設定したペルソナに当てはめ、マーケティング運用者の知識と経験に基づいてパーソナライズを実施していくという流れです。

パーソナライズの重要なポイント

 

CXMを活用したパーソナライズによって、大きな成果をあげた事例

 このCXMの一つであるジゾンの「HeartCore CXM」を導入し、大きな成果を挙げたのが大手人材派遣企業です。同社はHeartCore CXMを利用してWebサイトの訪問者一人一人に合わせてパーソナライズする仕組みを導入しました。たとえば経理担当者として人材派遣登録をしようと考えている訪問者にとって、それ以外の職種の情報はノイズでしかありません。そこで経理の情報だけを表示するといったパーソナライズを実施した結果、人材派遣登録者数が導入前から比べて3倍に伸びたとしています。

 また、ある自動車販売の企業は訪問者の居住地域に合わせてコンテンツを出し分けるために、HeartCore CXMを利用しています。自動車の好みには地域性があり、年収や年齢層が同じセグメントであっても、地域によって人気の車種が異なるといった特性があります。そこで訪問者の地域属性を識別し、訪問者の居住地域に合わせて表示する車種を変えるということを行っています。

 さらに、あるB2Bの製造系企業では、HeartCore CXMが備えるアクセス元企業の売上規模に応じてコンテンツを出し分ける仕組みを利用しています。この企業ではさまざまな種類のモーターを販売していますが、中小・中堅規模の顧客企業と、規模の大きい企業では購入するモーターが異なっていました。そこでHeartCore CXMを利用し、アクセス元企業の規模に応じて表示するコンテンツをコントロールする仕組みをWebサイトに導入したのです。さらに、単純に部品の情報を掲載するだけでなく、用途別に部品を探すことができるページなどを別途用意するといった工夫も盛り込み、海外における売上を大きく伸ばしています。

 

グローバルB2B企業が海外展開する際のWebサイトの課題にも対応

 「私は毎年、300〜400社の会社を訪問し、さまざまな問題点や課題を伺う機会があります。その中でも課題として多く見られるのが、日本ではある程度のシェアを保有している有名メーカーでも、海外でグローバル展開を行う場合は無名であったり、製品のブランド認知が低いために、海外展開での営業や販売行為の難易度は想像以上に高く、なんとかWebを使って営業効率を上げていきたいといった課題です」(神野氏)

 このような課題は、多くのグローバルB2B企業が海外への事業展開を図る際に共通しているものであると言います。そういった課題についても、HeartCore CXMを活用することで解決しているケースがあります。

 あるメーカーは、日本での単品のパーツのシェアは6割を超えており、圧倒的な巨大企業ですが、海外では無名な一メーカーという存在でした。Webサイトに関しては、海外では、国ごとに日本のサイトとは異なったバラバラのWebサイトが存在し、現地法人が個別に情報を現地語で配信しているという状況でした。しかし、HeartCore CXMを導入したことで、さまざまな接点に分散されている顧客情報とコンテンツをグローバルで一元管理できるようになり、各国の言語に対応した同じコンテンツを配信できるようになりました。それに加え、デジタルマーケティングの機能を活かして、サイトに訪れた企業を特定し、利用方法別に製品の選定方法を提示したり、その企業の悩みから製品をチョイスできたりする機能を加えることで、今まで顧客ではなかった企業からの受注が増え、中でも中国企業からの発注を大きく延ばすことができました。

 この事例は、通常の多言語なWebサイトに、自社製品を載せるだけのカタログ的なWebサイトではなく、自社製品の使い方や悩みを業種別、顧客別に提示したことが成功の大きな要因と言えます。

 もう一社は、携帯電話などで使われるコネクターやプラグ、スイッチなどを販売している企業です。同社ではHeartCore CXMを利用して、各部品の詳細情報をWebサイト上に掲載したほか、中国語やマレーシア語などのページを用意するなど多言語対応も図りました。HeartCore CXMには、コンテンツの翻訳作業をスマートに進められる「コンテンツ翻訳サイクル自動化システム」と呼ばれる仕組みがあり、これを利用して翻訳作業を効率化し、多言語に対応することができたのです。このようにWebサイトを大きく改善したことで、特に中国からの売上が大きく伸びたとしています。

 

CXMソリューションを選定する際に注目すべきポイント

 こうしたCXMソリューションは、日本製であるジゾンのHeartCore CXMのほか、海外製品はアドビシステムズの「Adobe Marketing Cloud」やオラクルが提供する「Oracle Marketing Cloud」などがあり、使い勝手や機能もさまざまです。必ずしも機能が多いものが優れているわけではなく、CXM導入によってどんな課題を解決したいのか、どんな効果を狙っているかに合わせて、最適なソリューションを選ぶことが大切です。

 それではこれらのソリューションを選定する際、どういった点に注意すべきでしょうか。機能と同様に重視すべきなのは実際の使い勝手であると神野氏は説明します。

 「どれだけ高度な機能を搭載していても、操作が煩雑で思うように操作できなくては、そのメリットを十分に活かすことができません。デジタルマーケティングのノウハウを持つアウトソーサーに委託する際にも当然コスト負担が膨らんでしまうほか、施策の実施までに時間がかかるといった難点もあります。まず自分たちでも使いこなせるかどうか、という視点でソリューションを見きわめることが重要です」

 また、新しいシステムの導入は既存の業務にも大きく関わってくるので、業務への影響範囲や運用面への考慮が必要と言えそうです。

 また国内で使うのであれば、日本語への対応も重要なポイントです。その一例として挙げられるのが、サイト内検索機能の日本語対応です。「引っ越し」と「引越」など、日本語の表記には「揺らぎ」が存在します。これを考慮していない製品の場合、同じ意味である「引っ越し」と「引越」が別の検索キーワードととらえられてしまい、正しく分析することができません。特に検索キーワードは訪問者の嗜好を表す重要なデータであることを考えると、それを正しく処理できるかどうかは大きな意味を持つでしょう。さらに、海外製品のほとんどは日本の中小企業情報とIPアドレスを組み合わせたデータを持っていないため、大企業以外の企業別のパーソナライズには苦労が伴います。

CXMソリューション選定時のポイント

 デジタルマーケティングはアメリカで先行しており、B2CとB2Bのいずれのビジネスにおいても必要不可欠になってきていると神野氏は説明します。そして今後CXMはマーケティングオートメーションを取り込んで、1パッケージでWebサイト運営をできることが当たり前になります。日本においてもデジタルマーケティングにおける成功事例が多く登場してきているという現状を考えると、今の時点で自社のWebサイトがデジタルマーケティングに対応できるように、今すぐにでも検討に着手し仕組みを整えておかなければ、競合に大きな遅れをとることでしょう。

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Bizコンパス編集部

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