2030年のエネルギー需給構造を見据える

多彩なサービス競争の裏にある電力自由化の真意とは

2016.06.03 Fri連載バックナンバー

 2016年4月より、一般家庭や小規模事業所などに向けた「低圧」と呼ばれる電力の小売りが全面自由化されました。すでにテレビCMや広告などで、参入事業者のサービスをご覧になった方も多いことでしょう。今回の自由化のメインターゲットは一般家庭であるため、どうしても“お得な料金”を前面に押し出すアプローチが多く見受けられます。しかし、自由化本来の目的は日本のエネルギー問題に深く関係しています。この先に起こることを想定して電力環境を見直すという意味では、企業にとっても絶好のチャンスと言えるのです。

 

「セット割」や「ポイント還元」といった競争は表層に過ぎない!?

 いよいよスタートした電力の小売り全面自由化。年明けあたりから各社がさまざまなサービスを打ち出し、その全容が見えてきました。やはり参入者としては、顧客チャネルを有する企業、あるいはエネルギーの供給体制を持っている企業が中心となっています。サービスの方向性は大きく2つあり、1つは電力単体を割安な料金で提供し、さらに使用量が多くなるほど割引率が高くなるように設定されたタイプです。もう1つがガス、携帯電話、インターネット、ケーブルテレビといった自社サービスと電力を組み合わせたセット割で提供するタイプです。

 これらのサービスはポイントカードと連動し、使用量によるポイント還元も注目されています。すでに100社以上の企業が参入を表明し、まさに百花繚乱の様相を呈していますが、どうしても一般家庭向けのアプローチが先行しており、「どこに切り替えればお得か」という視点でとらえられているのが実態です。

 しかし、この自由化が本来の目的としているのは日本のエネルギー自給問題の解決にあるのをご存じでしょうか。そのような意味では、少し手厳しい見方にはなりますが、現在の自由化をめぐるサービス競争はやや浮足立っていると言えるかもしれません。し烈な競争に惑わされず、その真意をしっかり理解しておく必要があるのではないでしょうか。

 5年前の東日本大震災以降、日本では電力需給が逼迫しており、現在、ほとんどの原子力発電所が稼働を停止し、不足した電力の9割以上は火力発電が代替しています。震災前より発電にかかる燃料費は跳ね上がり、その大半が海外から輸入される石油やガスの購入費用となっています。この石油やガス頼りの現体制に内在するリスクは、緊張状態が続く中東情勢により価格の高騰、供給の中断などが想定されることです。こうした状況を打開することも、日本政府が推進する「電力システム改革」には包含されていることを、まず押さえておくべきではないでしょうか。

 

2030年、日本が目指すエネルギー需給構造

 2015年7月、経済産業省は安全性、安定供給、経済効率性、環境構造という基本方針のもとで「長期エネルギー需給見通し」を発表しました。これによると、2030年度の一次エネルギー供給構造は石油換算で4億8,900万キロリットル。その内訳は石油30%、石炭25%、天然ガス18%、水力を含む再生エネルギーが13~14%、原子力10~11%となっています。

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Bizコンパス編集部

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