IT基盤の最適化を考える(第3回)

NECトーキンが構築!“持たずに使う”IT基盤

2015.05.20 Wed連載バックナンバー

 他社との資本・業務提携により、会社の事業環境が一新され、これまで利用してきたIT基盤を限られた人材、短い期間でゼロベースから再構築する必要に迫られた。もしあなたがIT担当だったら、どのような手を打ちますか。

 NECグループのイントラネットからの脱却を決断したNECトーキンでは、わずか1年間で国内外の拠点を結ぶネットワークやシステムをゼロから再構築する必要がありました。しかも、作業にあたるIT担当はわずか3名。この悩ましいミッションを同社はクラウドを活用した“持たずに使う”IT基盤の構築で解決しました。決断のポイントはどこにあったのでしょうか。

 

NECグループから世界へと羽ばたく過渡期の中で

 NECグループの一員で、電子部品の開発・製造・販売するNECトーキン株式会社は、企業理念に「素材革新を基に人と地球の豊かな調和と発展に貢献するグローバル企業」を掲げています。同社の前身は1938(昭和13)年に設立された東北金属工業であり、東北大学と民間企業による産学連携によって誕生しました。現在も東北大学との連携は続いており、先端材料から電子部品までを低コスト、高品質に一貫生産できる“日本品質のものづくり”が同社の強みとなっています。1988(昭和63)年に社名を株式会社トーキンに変更し、2002年にNECの電子部品3事業と統合したことで、現在の社名になっています。

 同社に再び転機が訪れたのは2年前のことでした。IT担当執行役員の刀祢正人氏は「2013年に米国の電子部品メーカー、KEMET社との資本・業務提携が決まり、現在は100%の協業に向けた準備を進めています。日本、アジアを中心に小型・省電力な製品を供給する我々NECトーキンと、欧米を中心に大型・大容量の製品を供給するKEMET社が、互いに製品や市場を補完することで、グローバルな事業展開に弾みをつけようという計画です」と提携の背景を語ります。

 こうした過渡期の中、同社のIT部門は大きな課題に直面します。刀祢氏は「2013年8月にNECグループのイントラネットからの離脱が決まりました。現在、KEMET社とは競合する別会社の関係にありますので、IT基盤を統合するわけにはいきません。1年という非常に短いスパンで当社独自のIT基盤をゼロから構築する必要があったのです」と当時を振り返ります。国内6拠点、海外11拠点の販社・工場を持つ同社にとって、この試練をいかにクリアするかがグローバルな事業戦略の命運を握っていたのです。

 

限られた時間、人材の中で迫られた決断

 実はこの構築作業にあたり、もうひとつ同社には大きな課題がありました。同社ではNECグループに加わる際に自社の人材をNECのIT部門に大幅に移管していたのです。IT戦略グループ シニアマネージャー 池田和政氏は「統合時に50名ほど所属していたIT部門の人員を6名の体制にし、さらに効率化を進めて、3名でシステムを運用管理していたところに、大規模なIT基盤切り替えの話が持ち上がりました。少人数かつしかも1年という短い期間で自前のIT基盤を構築するのは物理的に不可能でした」と分析します。ここで、同社は大きな決断を下しました。池田氏は「コンセプトは、なるべくモノを持たないIT基盤です。限られた人材でスピーディな移行が求められる中、クラウドサービスを最大限に活用する決断に至りました」と語ります。

 なお、同社が「持たざるIT基盤」を決めた背景には、もう一つの理由がありました。池田氏が「私たちは2011年に、東日本大震災、タイの洪水という大きな災害を2度体験しています。とくに東日本大震災では宮城県白石市の事業所が被災し、国内・海外拠点のERPが電源不足で完全に停止してしまいました。当時契約していたNTTコミュニケーションズの仙台データセンターは稼動しており、事業継続の観点からも自前の拠点ではなく、データセンターにリソースを預ける方が安全だと判断したのです」と語るように、苦い経験から学んだ教訓も後押しになったといいます。

 続いて同社ではIT基盤構築のパートナー選びに着手します。… 続きを読む

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Bizコンパス編集部

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