クラウド導入のステップ(前編)

クラウド移行前にしておきたい、ネットワーク調査

2014.02.21 Fri連載バックナンバー

 オンプレミスで運用しているシステムをクラウドに移行したものの、「システムが使いづらくなった」「思ったよりもコスト削減効果が低い」などといった問題を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そうしたクラウド移行後のトラブルに遭わないために、ぜひ実施したいのがネットワークやサーバーの事前調査です。

 そこで今回は、クラウド移行に伴い「ネットワーク遅延トラブル」を生じた事例を交えて、クラウド移行前のチェックポイントを解説していきます。

 

ネットワーク通信に大きな影響を与える遅延

 オンプレミスで運用していたシステムをクラウドに移行したところ、「クライアントPCからの操作に対するレスポンスが大幅に低下して業務に支障が生じた」といったトラブルを経験された方がいらっしゃるかと思います。 クラウド上で利用している仮想サーバーのスペック不足など、このような問題が発生する原因はいくつか考えられますが、その1つとして挙げられるのがネットワークの“遅延”です。

 ネットワークにおける遅延とは、送信側から発信した信号が相手に届き、その応答が返ってくるまでの時間を指し、RTT(Round Trip Time)と呼ばれる値で示されます。遅延が生じる理由としては、コンピューターやネットワーク機器での処理や、ネットワーク経路上でのパケット喪失による再送処理などがありますが、特に遠距離通信では通信する端末間の物理的な距離が大きく影響します。

 たとえば、東京都内にある2つの拠点をVPNサービスで接続している場合、ネットワーク構成にもよりますが、遅延は数ミリ秒程度に収まります。しかしこれが、東京と大阪間になると遅延は10ミリ秒を超える程度、さらに東京からアメリカ西海岸では約100ミリ秒、アメリカ東海岸は約200ミリ秒と、物理的な距離が遠くなるに応じて遅延も大きくなるのです。

 当然のことながら、この遅延は“通信速度”に大きな影響を与えます。データセンターにファイルサーバーを設置し、オフィスから100Mbpsの回線を使ってファイルを送信するといったケースで考えると、データセンターとPC間の遅延が5ミリ秒なら理論上は100MBのファイルを約8秒で送信することが可能です。しかし遅延が20ミリ秒になると、同じ100Mbpsの回線でも100MBのファイルを送信するのに約32秒もかかる計算になります。つまり通信速度が1/4にまで低下してしまうのです。

 通信速度が遅延によって低下する理由は、現在のコンピューターネットワークで広く使われているTCP(Transmission Control Protocol)と呼ばれるプロトコルの処理にあります。… 続きを読む

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川添 貴生

川添 貴生

株式会社インサイトイメージ 代表取締役

エンタープライズ領域におけるテクノロジーやソリューションについてのリサーチおよびテクニカルライティングなどを行う。主な著書に「できるOffice 365 Small Business 2013年度版」「仮想化インフラを構築する技術」(ともにインプレスジャパン)など。

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