クラウドで進化するコンタクトセンタービジネス(第4回)

AI活用で見えてきたカスタマサポートの近未来

2017.04.19 Wed連載バックナンバー

 昨今、コンタクトセンターでは、お客さまの自己解決率の向上と、問い合わせ対応の負担を軽減するため、AIに大きな期待を寄せています。そこで実際にAIを使ったチャットボットを提供するWEBサイトを開発・運用している現場に潜入し、導入の背景や具体的な効果などについてお話を伺いました。

 

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会員専用サイトでAIを使ったチャットボットを提供

 電話やファックス、メールに次ぐ新たなチャネルとして、多くのコンタクトセンターに広まりつつあるのがチャットです。利用者にとっては、チャットは電話よりも手軽である上、メールや問い合わせフォームのように返答までに時間がかからないというメリットがあります。一方、コンタクトセンターにおいても、そのようなメリットを提供することで顧客満足度を高めることができます。

 さらに最近では、このチャットによるサポートにAIを組み合わせる事例も現れ始めています。もともとチャットには、1人のオペレーターが数人からの問い合わせに対して、同時に対応できるなど、サポート業務の効率化を図れるというメリットがありますが、AIによって応対を自動化することができれば、さらなる稼働の軽減が可能になるでしょう。

 具体的な事例の1つとして挙げられるのが、NTTコミュニケーションズが提供する個人向け有料サポートサービスである「プレミアムサポート」です。パソコンやスマートフォン、タブレット端末における操作方法の疑問などを電話で問い合わせできるサービスであり、専用アプリを使って遠隔操作で設定などを行うリモートサポートも行っています。このプレミアムサポートでは、会員専用ページにおいてAIを使ったチャットサポートとして「バーチャルアシスタント あおい」を2016年2月から提供しています。

 OCNプレミアムサポートの専用ページにアクセスすると、画面下に「バーチャルアシスタント あおい」と書かれた枠があり、それをクリックするとチャット画面が表示されます。その中に質問内容を入力すると、バーチャルアシスタントが回答してくれるという形になっています。

 たとえば「アメリカの050 plusに電話をするといくら?」と入力すると、まず「海外の050 plusへ発信する場合の料金についての情報をお探しですか?」と尋ねられます。そこで「はい」をクリックすると、問い合わせ内容に合致するFAQ情報である「海外の050 plusへ発信する場合の料金はどのようになりますか?」の回答を画面上に表示します。

 注目したいのは、質問文にある単語の意を汲み取り、FAQを提示している点です。前述の例で言えば、「アメリカ」は「海外」、「電話する」は「発信」、「いくら」は「料金」のことと判断できなければ、「海外の050 plusへ発信する場合の料金はどのようになりますか?」という回答に至ることはできないでしょう。

意味検索エンジンにより、単語や文章の意味を解析してFAQ&回答を提示

 このバーチャルアシスタントを実現するために使われているのが、アメリカのInbenta社が開発した意味検索(Semantic Search)エンジンです。このサービスの開発チームの1人であるNTTコミュニケーションズの赤松祐莉氏は、意味検索エンジンを利用するメリットについて、次のように説明しました。

 「今回開発したバーチャルアシスタントと同様に、ユーザーからの質問に対してFAQを提示する方法として、事前に作成したシナリオに沿って回答するシナリオベースも考えられます。ただし事前にシナリオを作成する手間があるほか、サービス内容が変わるとシナリオも書き換えなければなりません。しかし今回利用している意味検索エンジンでは、単語や文章の意味を解析して重み付けを行い、その結果に従ってFAQの内容を提示する仕組みのため、シナリオ作成の負担がありません。この点は意味検索エンジンを使う大きなメリットだと考えています」

検索エンジンのしくみ

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肝になるのは仕組みよりもコンテンツ

 一方、サービス提供に至るまでに苦労した点として、NTTコミュニケーションズの新井利幸氏が話すのはFAQの作成です。

 「実はこのようなチャットボットを提供する上で、肝になるのは仕組みよりもコンテンツなんです。お客さまが見て分かりやすいコンテンツでなければ、チャットボットで問い合わせを完結させることはできません。バーチャルアシスタント導入にあたり、FAQをあらためて見直し、お客さまに的確に情報を伝えられるようにブラッシュアップしています」

 さらに精度を高めるため、運用の中でもサービス改善のための取り組みが進められています。

 「今回のシステムには、答えられなかった質問を調べるための仕組みがあり、それを使って改善する営みを続けています。実際にお客さまがバーチャルアシスタントを利用し、期待する回答が得られなければ、その後使っていただけなくなる可能性があります。そのため、こうした改善のための取り組みは重要だと感じています」(新井氏)

ユーザーからの問い合わせ数を20%削減

 この意味検索エンジンは、バーチャルアシスタントの実現に使われているほか、問い合わせフォームでも応用されています。問い合わせページの質問欄にユーザーが入力した内容をリアルタイムに解析し、「送信」ボタンを押す前にFAQページを提示するという形です。

 こうして提示されたFAQページで疑問を即座に解消することができれば、回答が来るまで待つ必要がなくなり、ユーザーベネフィットの向上につながります。

 この仕組みを導入したことで、問い合わせフォームで質問を送信しようとした人の約20%が自己解決できたとしています。回答を作成するために要する稼働を考えると、この20%という数値が持つ意味は極めて大きいでしょう。

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AIを活用し、人にしかできないことに注力する

 今後はさらにAIを活用して自動化を推し進めつつ、人にしかできないことにリソースを割き、コンタクトセンターをさらに高度化していきたいと、赤松氏と新井氏は声をそろえました。

 「今回のシステムだけでなく、音声をリアルタイムにテキスト化するといった取り組みも並行して行っています。この両者を組み合わせて、電話における自動応対や、お客さまとオペレーターの会話を分析し、自動でFAQを充実させるというような、高度なオペレーションを実現する仕組みをつくることが目標です。その上で、本当に人が必要なところに注力していくことを目指しています」(赤松氏)

 「今後は簡単な問い合わせについては自己解決できる仕組みをユーザーに提供し、人はサービスを横断した複雑な問い合わせに対応するといったすみ分けが必要になるでしょう。そのためにAIを活用した自動化を推し進めつつ、人もお客さま接点の1つとして大切にしていきたいと思います」(新井氏)

AIを手軽に導入できる「COTOHA CHAT & FAQ」

 このようにAIを活用し、独自のチャットボットなどを実現できるサービスとして、NTTコミュニケーションズでは「COTOHA Chat & FAQ」を提供しています。ここで使われているエンジンは、「バーチャルアシスタント あおい」と同じInbenta社のもので、SaaS形式で提供されるためサーバーなどを用意する必要がなく、また既存のFAQをコンテンツとして活用できるため、短期間で導入できるというメリットがあります。

「COTOHA Chat & FAQ」サービス概念

 電話やメールなどによる問い合わせ数を削減するため、Web上の問い合わせページにFAQを掲載している企業は少なくないでしょう。しかし膨大な数のFAQから目的の回答を探し出すのは容易ではないことから、コンタクトセンターに電話して問い合わせるユーザーが多いのが実情ではないでしょうか。

 AIを活用して、質問に対して適切なFAQを提示することが可能になれば、ユーザーはわざわざ問い合わせたり、回答が来るまで待ったりすることなく問題を解決することができます。またコンタクトセンター側にとっても、問い合わせ対応の稼働を軽減できるというメリットが得られます。それによって得られたリソースを、たとえばアウトバウンドコールなどに振り分ければ、新たな価値の創造につながるでしょう。

 「AIは導入が大変」というイメージがあるかと思われますが、COTOHA Chat&FAQのように気軽に自社のWebサイトに組み込めるサービスも登場しており、状況は大きく変わりつつあります。もしAIの導入を考えているのであれば、そろそろ本格的に動き出すタイミングかもしれません。

※掲載されている内容は公開日時点のものです。
※掲載されているサービスの名称、内容及び条件は、改善などのために予告なく変更することがあります。

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Bizコンパス編集部

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