ビジネススピードを加速するIT基盤(第1回)

Software Defined技術で実現する“事業変革”

2017.08.23 Wed連載バックナンバー

 企業のネットワークにおける通信量の増大と、柔軟性を欠くネットワーク構成は、将来のITインフラをデザインする上で大きな問題となっています。複数のSaaS利用、海外拠点との通信の増加、IoTやビッグデータの活用など、ネットワークへの負荷は高まるばかりです。ところが、運用を外部ベンダーに任せきりにしてきたことでブラックボックス化しているうえ、ネットワークやハードウェアにスキルを持つ社員がいないため、前述の問題を解決できず、デジタルトランスフォーメーションへのシナリオが描けない、といった事態に陥ってしまうのです。このような現状を打破する手立てはあるのでしょうか。

 

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なぜいま、ネットワークを「所有」から「利用」へと変えるのか?

増え続ける企業の通信トラフィック

 ビジネスで利用するアプリケーションの多様化、そしてコンテンツの大容量化に伴って、ネットワークインフラの負荷は増大し続けています。

 Office 365に代表されるSaaSの利用拡大は、インターネットに接続するためのインフラにも大きな影響を及ぼします。特に最近では、セキュリティやコンプライアンスの強化を目的として、インターネットとの接続点をデータセンターやクラウドに集約しインターネットゲートウェイを構築するケースが珍しくありません。インターネット向けのトラフィックが増えれば、このインターネットゲートウェイがネットワーク全体のボトルネックになり、SaaSのレスポンス低下などの問題が発生しかねないでしょう。

 また、ここ数年、多くの日系企業が事業の海外シフトを積極的に推し進めており、これに伴って海外拠点と日本を結ぶネットワークのトラフィックが拡大し、帯域を圧迫する問題が表面化し始めています。これらの課題を解決するために回線を増強すれば、当然コストに跳ね返ってしまいます。

 

ネットワークがデジタルトランスフォーメーションの足かせに

 ITを駆使して新規ビジネスの創造や既存事業の拡大を目指す、デジタルトランスフォーメーションに向けた動きが加速しています。

 デジタルトランスフォーメーションに対応するべく、システム開発や運用の現場ではアジャイル開発DevOpsといった考え方が広まっています。こうした新たな潮流を支えるべく、クラウドサービスは新たなテクノロジーを矢継ぎ早に追加してきました。そのような中、ネットワークは十分に変化に追従できていないのが現実ではないでしょうか。

 デジタルトランスフォーメーションに向けた取り組みでは、その有効性を確かめるためにPoCを実施することが一般的です。この際、すばやくPoCを実施するために極力既存の環境を使って検証が行われますが、ここで柔軟性に乏しい既存のネットワークが足かせとなっていることに気付くケースが少なくありません。とはいえネットワークに手を加えれば既存の通信に影響が生じるため、身動きできない状況に陥ることも十分に予測できます。

 デジタルトランスフォーメーションに対応するためには、ネットワークにも柔軟性と迅速性が必要だと言えるでしょう。

Software Defined技術を活用してネットワークを効率化

 既存の業務アプリケーションに加えて、インターネット上で提供されるSaaSの活用、さらにはデジタルトランスフォーメーションへの対応など、IT環境が複雑化することは避けられません。しかしながら、多くの企業においてネットワークトラフィックは可視化されていないため、どのアプリがどれだけ帯域を消費しているのかが判断できず、対処のしようがないというのも現実です。

 ネットワークの運用について、ベンダーに完全に依存しているようなケースでは、より深刻です。そもそもネットワークの状況を把握することができず、ベンダーの言いなりにならざるを得ないためです。また社内にネットワークやハードウェアといったITインフラの技術に精通した社員が存在していないことも、ベンダー依存を増長する要因となります。

 これらのITインフラにまつわる課題を解決するための手立てとなるのがSoftware Defined技術です。従来のITインフラにおけるハードウェアの制約を解消し、ソフトウェアによる柔軟な制御を可能にするSoftware Defined技術を活用することで、既存のさまざまな課題を解決することが可能となります。

 その1つとして挙げられるのが、ネットワークトラフィックの可視化です。Software Defined技術を使ってネットワークがどのように使われているのかを把握できるようにすれば、アプリケーションや拠点の重要度に応じて帯域幅を調整するなどといった最適化を図ることができます。運用コストの妥当性も客観的に判断できるようになるでしょう。ネットワークの最適化は、一度だけ実施すればよいというものではなく、変化するIT環境に応じて、やり続けなければ意味がありません。Software Defined技術で可視化し、その情報を元にして最適化し続けることが必要です。

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“SD-WAN”“ローカルブレイクアウト”という解決策

SD-WANでトラフィックを制御

 Software Defined技術を応用したソリューションは数多くありますが、その1つとして「SD-WAN」があります。これはWANをソフトウェアで制御する技術であり、MPLSやインターネットといった複数のネットワークを統合的に利用することで、既存のさまざまな課題の解決を図ることが可能になります。

 その一例として、MPLSとインターネットを利用したネットワークの負荷分散が挙げられます。拠点間接続、あるいはクラウド接続におけるトラフィックの増大が問題となっているケースを考えてみましょう。こうした課題の解決策としてまず考えられるのは帯域幅の拡大ですが、これは先に解説したようにネットワークコストの上昇に直結します。そこでSD-WANを利用し、重要度が高い通信はMPLS、さほど重要ではない通信はインターネットへとトラフィックを振り分けます。このようにSD-WANの技術を利用してインターネットを活用すれば、MPLSの帯域幅を効率的に利用できます。

通信の重要度によりMPLSとインターネットを使い分ける

 さらにSoftware Defined技術を利用すれば、きめ細かく通信を制御することも可能です。アプリケーションレイヤのプロトコルでインターネットとMPLSを使い分けるといったことが可能なのはもちろん、テレビ会議システムにおいて重要な会議だけをMPLS経由とするといった制御も実現することができます。もちろん、そのアプリケーションを利用するユーザーは、こうした経路の切り替えを意識する必要はありません。また、MPLSの障害時にインターネットに経路を切り替えるなど、SD-WANは信頼性向上にも役立つでしょう。

 

SaaS利用の増大に対応できるローカルブレイクアウト

 インターネットゲートウェイの処理能力を超える通信が発生しているといった場合には、ローカルブレイクアウトと呼ばれる仕組みを利用し、特定のSaaSのみ各拠点から直接インターネットに抜けるように制御することも選択肢に入ります。

特定のSaaSへのアクセスには拠点から直接インターネット回線を利用

 これもSD-WANの技術を活用したトラフィック分散で、Office 365など特定のSaaSへのアクセスは拠点から直接接続されたインターネット回線を利用し、それ以外のインターネット向けのトラフィックとルートを変えることで、特定のネットワークに負荷が集中することを避けられます。

 

LANにもSoftware Defined技術を適用

 Software Defined技術はLANの領域においても有効です。すでにSD-LANと呼ばれるソリューションは登場しており、物理的なハードウェアの制約を受けずにネットワークを構成することができるなど、さまざまなメリットが実現されています。

 このSD-LANが強みを発揮する用途の1つとして挙げられるのがIoTです。エッジデバイスと呼ばれる大量の端末をネットワークにつなぐIoTにおいて、同一のネットワーク機器を利用しつつOA-LANと工場LANを異なるネットワークとして運用することが可能など、SD-LANが持つ意味は非常に大きいと言えるでしょう。また、IoT特有のセキュリティを考える上でも、柔軟にネットワークを制御できるSD-LANがもたらすメリットは小さくありません。

SD-LANを活用した大規模工場事例

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Software Defined技術の導入ステップとパートナー選び

導入で大きな鍵を握るPoC

 このように、Software Defined技術は既存のITインフラにおける課題を解決できるソリューションであり、すでに数多くのプロダクトがリリースされています。導入にあたって意識すべきなのは、全体最適の視点です。Software Defined技術を利用すれば、ネットワークをソフトウェアで柔軟に制御することが可能になりますが、この際にLANだけ、あるいはWANだけなど個別最適で課題を解決しようとすれば、インフラがさらに複雑化しかねません。そのため、LANからWAN、そしてクラウドに至るまで、ITインフラの全体を見渡し、全体最適の視点でSoftware Defined技術の導入を検討すべきです。

 このSoftware Defined技術を組み込んだネットワークを導入する際、いきなり企業ネットワークすべてを切り替えるのは現実的ではないでしょう。また実際にSoftware Defined技術を導入することで、既存の課題をどのように解決できるのかも見極めなければなりません。そのため、まずPoCを実施して効果を確認し、その上で段階的にITインフラに適用していくといったステップで考えたいところです。なおPoCの際には、まずどのような効果が得られるのかについて仮説を立て、実際に導入した上で仮説どおりに効果が得られたかどうかを判断する、仮説検証の視点も大切でしょう。

 

パートナー選びのポイント

 すでにSD-WANやSDNを実現するためのプロダクトはありますが、重要なのはそれらを適切に制御することであり、プロダクトを導入しただけでは完結しません。その意味で、Software Defined技術だけでなく、LANやWAN、さらにはクラウドまでの知見とノウハウを持ち、インテグレーションからマネジメントまで対応できる力のあるベンダーを選ぶことがポイントになります。もちろん、そうして構築したITインフラを適切に運用できるかどうかも見極めるべきです。

 事業のグローバル化が進んでいることから、海外拠点の重要性も増し続けています。さらに特にSD-WANではインターネットの活用が重要となることから、海外でのインターネット環境を目利きできるかどうかもパートナー選びにおいては大切でしょう。

 実際のSD-WANの導入において、これまで影響力があったのはViptelaやVelocloudといった実際のソリューションを展開する海外の新興ソフトウェアベンダーでした。しかし今後は、MPLSやインターネットに多くの実績とノウハウを持つ、通信キャリアが存在感を示すようになるでしょう。すでに日本ではNTTコミュニケーションズがサービスの提供を開始しており、今後さまざまな通信キャリアがSD-WANへの取り組みを強化する可能性は高いのではないでしょうか。

 

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Bizコンパス編集部

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