人工知能(AI)はビジネスにどう活用されるのか(第10回)

自動回答するAIでCS向上を図るSMBC日興証券

2017.09.27 Wed連載バックナンバー

 国内屈指のカスタマーサポート品質を誇る、SMBC日興証券のコンタクトセンターにおいて、2017年5月にAIチャットボットが導入されました。そこで、この施策の目指しているところや導入の経緯、今後の展開について、同社東京コンタクトセンターの部長である稲田英樹氏にお話を伺いました。

【SMBC日興証券株式会社について】

 総合証券会社として幅広い金融商品を開発・提供し、三井住友フィナンシャルグループの一員として、個人の資産形成のサポートや法人の資金調達や事業戦略に関する提案を行っているSMBC日興証券株式会社。近年はオンライントレードサービス「日興イージートレード」の機能を強化するとともに、店舗での対面取引との連携・融合を図る「営業ミックスモデル」を加速しています。さらにグループシナジーを発揮し、新しい価値創造に取り組んでいます。

 

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増加するお問い合わせコールに対して、いかに対応するかが課題に

 SMBC日興証券は、「いっしょに、明日のこと。Share the Future」というブランドスローガンを掲げ、商品・サービスの品質強化と拡充を進めており、2018年に創業100周年を迎えます。

 その一環として、注力しているのがコンタクトセンターの拡充です。たとえば、同社の取引コースの1つに「ダイレクトコース」がありますが、これはPCやスマートフォンによるオンライントレードのほか、コンタクトセンターを活用して自分のペースで取引が行えるサービスです。

 「ダイレクトコースは、証券会社の実店舗は入りにくいと感じられているお客さまでも、より気軽に株式投資が行えるコースです」と同社東京コンタクトセンターの部長である稲田英樹氏は話します。

 気軽に行えるとはいうものの、証券口座を開設し、取引を行う過程では、口座開設時の疑問を解消するなど、さまざまなサポートが必要となります。実際、ダイレクトコースの利用拡大に伴い、コンタクトセンターへのコール数は増加傾向にあります。こうしたコール数の増加という課題に、どのように対応していくのかが重要なテーマとなっていました。

 同社のコンタクトセンターは、サポートサービス業界の国際機関Help Desk Instituteの日本法人HDI-Japanの「問合せ窓口格付け」において、最高評価を示す「三つ星」を2006年から12年連続で取得するなど、屈指のカスマターサポート品質を誇っています。コンタクトセンターの対応力強化に取り組む上では、この品質を維持すること、あるいはさらに向上させることが大前提となってきます。

日本語を理解して、自然な会話で自動回答するAIを導入

 増えつつあるお問い合わせに対して同社が着目したのが、AI(人工知能)チャットボットの活用でした。同社のコンタクトセンターは、お客さまの多様化するニーズに対応するべく、電話はもちろん、メール、Webチャット、LINEといった複数のチャネルを用意しています。このうちLINEに、オペレータによる対応に加えて、AIによる自動回答を導入しようと考えたのです。

 「オペレータは、一日に何度も同じ内容のお問い合わせに対して回答している場合があります。よくある質問についてはFAQを用意していますが、お客さま自身が回答を探さなければなりませんし、関連する別の質問をしたいと思っても、固定的な回答しか用意されていません。そこで基本的なお問い合わせについてAIが自動回答できれば、お客さまは必要な情報をスムーズに得られる上、オペレータは、より高度で複雑なお問い合わせへの対応に専念できます」と稲田氏は指摘します。

 AIチャットボットのエンジンとして同社が採用したのが、NTTコミュニケーションズの「Communication Engine COTOHA」(以下、COTOHA)でした。COTOHAは、言語解析の中でも特に難しいといわれる日本語を理解し、自然言語によるスムーズな会話を行うことができます。会話の内容によっては、COTOHA側からも問いかけたりしながら、応対することも可能です。

 稲田氏はCOTOHAを選定した理由について、以下のように述べます。

 「選定にあたっては、チャットボットを提供している数社について比較検討しました。特に評価したのがLINEに対応している点、そしてオペレータにエスカレーションする機能を備えている点です。今回のチャットボット導入の目的がオペレータのサポートでしたら、異なるエンジンを選択したかもしれません。しかし、私たちはあくまでもオペレータに代わって問い合わせ対応することを目指していましたので、COTOHAが一番ふさわしいと判断しました」

 自動回答によってお問い合わせを解決できなかった場合は、すぐさまオペレータにエスカレーションするようになっています。顧客との会話を途切れさせることなく、自然にオペレータに対応を引き継ぐことが可能です。この仕組みにより、問題が解決しなかったという不満を顧客に残すことなく、お問い合わせを完結させることができます。

「COTOHA」の利用イメージ

 稲田氏は、技術面に加えNTTコミュニケーションズのサポート力について「人が応対するような自動回答を実現したいという私たちの思いをくみ、ともにチャレンジする姿勢を示してくれました。これなら、将来の機能拡張の要求にもスムーズに対応してもらえると安心感が高まりました」と評価します。

蓄積したノウハウをスムーズに移植、オペレータの働き方改革も実現

 同社は2017年5月にLINEのチャットサービスの追加機能として、COTOHAの本格運用を開始します。LINEのチャットサービスの利用者のうち約7割の顧客が、オペレータではなく、まずAIチャットボットを選択するといいます。「気軽さが売りのチャットが、AI活用によりさらに気軽に利用できるようになったと手応えを感じています」と稲田氏は強調します。

 運用開始前に行う応答シナリオの設定作業も、COTOHAが備える「スロット」という独自の機能によって非常にスムーズに行えたといいます。「こういうお問い合わせがあったら、この中から回答を選択していくという分岐設定が非常に容易です。これまでコンタクトセンターで蓄積してきた対応ノウハウを、余すことなく移植することができました」(稲田氏)。このスロット設定は、表現の“揺れ”も吸収することが可能。例えば「口座を作りたい」と「株式投資を始めたい」など、同じ意図で表現が異なるお問い合わせについても、しっかりと認識して、適切な回答を行うことができます。

 加えて、コンタクトセンターの働き方改革の推進につながったとします。AIチャットボットの導入により、お問い合わせの一部を自動で回答することができるようになりました。

 「お客さまは、いつでもお問い合わせができる上、オペレータ不在でも一定水準の回答品質を維持できます。それを受けて、オペレータの勤務時間を1時間短縮したほか、祝日対応も廃止しました。ワークライフバランスの充実を図ることで、オペレータのモチベーションアップが期待できます」と稲田氏は説明します。

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AIチャットボットがカバーする領域を拡大していきたい

 今後の展開としては、証券口座のIDなどによって本人認証を行い、残高照会や株式の時価照会などもAIチャットボットを通じて行えるようにしていく考えです。「さらに、ほかのシステムと連携させて、将来的にはお客さまの投資スタイルに合った金融商品の提案や、株価予測などのサービスを提供することを検討しています」と稲田氏は展望を語ります。

 最後に、稲田氏はカスタマーサポートに対する思いを語ります。

 「金融系の商品は、目に見えない分、お客さまにしっかりと説明し、理解してもらう必要があります。ですから、かつては対面で、それが難しい場合は電話で応対することが基本でした。しかし、ITの進化により、企業とお客さまの接点にメールやチャットが採用され、それらのチャネルを使いたいお客さまも多くなってきました。メールはリアルタイム性に欠け、文面もかしこまってしまいます。チャットはリアルタイムに、話し言葉に近いやりとりが行えます。いわば、これまでの対面や電話により近いコミュニケーションツールとなりえるのです」

 同社はCOTOHAによるLINEチャットの自動化回答により、お客さまのタッチポイントの豊富さ、質の高さを強化し、日興コンタクトセンターの拡充を図っています。この強みをフルに発揮し、今後も「カスタマーサポートNo.1」を目指していくといいます。

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Bizコンパス編集部

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