クラウドで進化するコンタクトセンタービジネス

電話インフラをクラウド化し課題解決したJR西日本

2017.11.08 Wed連載バックナンバー

 JR西日本は、お客さまとのコミュニケーション手段として重要な役割を担っているコールセンターの音声系設備の維持、管理に長年の課題を抱えていました。その課題とはどのようなものなのか、そして、どのように解決していったのか、さらに今後の展望について、同社IT本部 企画・戦略グループの小山秀一氏にお話を伺いました。

【西日本旅客鉄道株式会社について】

 1987年、国鉄の分割民営化に伴い設立された西日本旅客鉄道株式会社(以下、JR西日本)は、2017年に発足30周年を迎えました。同社は近畿、北陸、中国地方の2府16県において、新幹線、在来線合わせ総延長距離5,008kmにわたる鉄道網を運営し、一日当たり約500万人もの人々の足を支えています。運輸事業に加え、管内の1,200もの駅を活用し、不動産、物販・飲食、ショッピングセンター、ホテルなどの関連事業も展開しています。

 

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緊急時の対応力やサービス拡張性が課題のコールセンター音声系システムを刷新

 JR西日本は、「JR西日本グループ中期経営計画2017」において、「安全」「CS」「技術」を基本戦略に据え、お客さま、地域、社会から信頼される企業グループを目指して事業活動に取り組んでいます。とりわけCSに関しては、お客さまの声を把握し、各種施策にフィードバックしていく仕組みの整備に注力してきました。そのため、運賃料金や運行情報などの鉄道利用にかかわるお問い合わせや非対面での列車予約およびそのサポート等を行う「JR西日本お客様センター」を近畿エリア2カ所に設置し、顧客対応力の強化に取り組んできました。

 同社IT本部企画・戦略グループの小山秀一氏は、このコールセンターの重要性について述べます。

 「当社にとってお客様センターは、お客さまサービスにおいて重要不可欠な存在です。たとえばお客さまが旅行される場合、移動中はもとより、旅行を開始される前や後においても、何かお困りごとが発生した際に迅速かつ的確にサポートできる仕組みを整備することが求められます。その中核的な役割を担うのがお客様センターとなります。」

 しかし近年では、このコールセンターのバックエンドの仕組みに課題が浮上していました。同社のコールセンターは、オペレーターの業務を支援するCRMなどの「データ系」、および電話での通話や音声ガイダンスなどを司る「音声系」という2つのシステムをベースに運用されています。

 小山氏は、コールセンターの課題について「事故や天候に起因する設備障害や予期せぬトラブル等でお客様にご迷惑をおかけする事態が生じた際、その影響が大きい場合には臨時窓口を開設する等で対応してきましたが、従来の音声系システムはオンプレミス型のため、迅速な対応が困難だったのです」と述べます。

 臨時窓口を開設するうえでは、旧来は設備を管理するうえで複数の企業が関わっていたため、何らかの事情で音声系システムを改変する場合、その都度、企業間で契約を取り交わす必要があり、多くの手間がかかっていたことも問題でした。

 「改変の際には、設備を保有する当社とシステムの開発・運用を行う事業者との間でさまざまな書類をやりとりする必要があり、突発的な臨時窓口の開設はもちろん、中長期的なサービス改善に向けた施策を実施することも簡単ではない状態でした」と小山氏は振り返ります。

音声系システムをクラウドに移行、運用も含めて一元的に委託する体制に

 同社は新しい音声系システムの在り方を模索します。コンサルティングを依頼したNTTコミュニケーションズとともに検討を重ね、自社で保有してきたシステム一式を、外部ベンダーのプライベートクラウド環境に移管してサービス利用型に切り替えることを決断します。

 新しいコールセンターシステムのポイントは、単にシステムを持たずに済むだけでなく、インフラの追加時の手配や運用管理までをベンダー1社にアウトソースできる点にあります。「これによって、臨時窓口の開設やサービス改善に向けた体制変更を行う際も、ベンダー側に要件を伝えるだけで済むようになります。対応期間が短縮でき、サービスレベルが強化できると考えました」と小山氏はメリットを述べます。

 パートナーの選定に当たっては、NTTコミュニケーションズが電話や内線に関する豊富な専門技術やノウハウを持っていたことに加え、提案内容を高く評価したといいます。

 「NTTコミュニケーションズは、課題解決に有効な仕組みを検討するため、まずは事前にコンサルティングを行うことを提案してくれました。その上で、データセンターや回線、システム構築・運用サービスまでを、必要に応じてワンストップで提供してくれます。これは、他社にはないメリットでした」(小山氏)

 コンサルティングの結果、提案に追加されたのが、サービスオーダー型の利用形態です。これはシステム使用料をあらかじめ一定量チケット化しておくことで、煩雑な手続きをすることなく変更依頼できるという方式です。「当社の業務内容を深く理解し、ベストな仕組みを提案しようという姿勢は、大きな信頼感につながりました」と小山氏は語ります。

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緊急時の窓口の一両日中の開設が可能に!コールセンターのサービスレベルが向上

 こうしてJR西日本は、音声系システムをNTTコミュニケーションズのデータセンターサービス「Nexcenter」上のプライベートクラウド環境に移管。IP電話サービス「Arcstar IP Voice」と「ナビダイヤル」で回線を整備するとともに、近畿2拠点および拠点とクラウド環境をVPNサービス「Arcstar Universal One」で接続しました。同時に、運用管理もNTTコミュニケーションズに一任することで、シンプルな体制を実現しています。

JR西日本お客様センターの音声系システムのイメージ

 2016年3月にリリースした新しい仕組みは、さまざまな成果を生み出しています。まず、システムがサービス利用型になったことで、最大の目的であった緊急時の臨時窓口の迅速な立ち上げが可能になりました。

 「新しい仕組みを導入して以降のことですが、あるとき、とある線区の設備トラブルで、近隣の地域にご迷惑をおかけしてしまったことがありました。その際、臨時窓口を一両日中に開設することができました。以前の体制でしたら、おそらく倍以上の日数がかかったのではないかと思われます」(小山氏)

 天候などに起因する列車運行トラブルは防ぎきれないものが多いため、緊急時のサポートが迅速化できるようになったことは、CSの維持・向上に大いに役立つと評価を得ています。もちろんサービス強化を目的にした変更・拡張についても、随時、柔軟に行えるようになっています。さらに、今回実現した柔軟な音声系システムの仕組みを活用して、同社は新たなコールセンター拠点も立ち上げました。

 「近畿エリアの2拠点は隣接していますので、自然災害などにより同時に稼働できなくなるリスクがありました。そこでBCP強化を目的に、中国エリアに新拠点を開設しました。その際の音声系システムについても迅速に用意することができました」と小山氏は話します。

TV会議システム導入やAI活用も見据え、さらなるCS向上を目指す

 最後に小山氏はプロジェクトを遂行する際のポイントについて、語ります。

 「今回のプロジェクトは、非常に多くのお客さまが日々利用されているコールセンターのシステムを一夜のうちに切り替えるという難易度の高いものでした。そのため、事前に入念な計画を立て、テストを繰り返すことでエラーを潰し、確実に切り替えができるような体制を構築して臨みました。それを実践するには、かなりのパワーが必要ですが、しっかり手間ひまをかけて進めることが肝要ではないでしょうか」

 さらに、パートナー選びのポイントについても言及しました。

 「今回は、コンサルティングのフェーズから、実際の移行まで、NTTコミュニケーションズから手厚くサポートしていただきました。当社にとっては、単なるビジネスパートナーというより、いわば同志的な存在であったと感じています。当社が抱えている業務課題に対してちゃんと向き合って、単にインフラを提案するのではなく、プロアクティブに解決策をご提案していただけたことで信頼関係が強化されました。プロジェクトを進めていく上では、やはり同じ方向を見て一緒に取り組んでくれるパートナーを選定することが重要になると思われます」

 今後も同社は、さらなるサービス強化のための仕組みを継続的に検討していきます。たとえば、コールセンターのサービス基盤にTV会議システムを導入し、拠点間のコミュニケーション強化を図りました。さらにAIを活用したオペレーター支援の仕組みや、問い合わせの窓口のとしてチャットの活用も検討中です。

 「CS向上にゴールはありません。NTTコミュニケーションズには、これからも二人三脚で、当社のビジネスを支えてもらいたいと思っています」と小山氏は締めくくってくれました。

※掲載されている内容は公開日時点のものです。
※掲載されているサービスの名称、内容及び条件は、改善などのために予告なく変更することがあります。

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Bizコンパス編集部

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