コンサルタントに聞く!次世代のコンタクトセンター

「コンタクトセンター3.0」時代に求められること

2017.07.12 Wed連載バックナンバー

 企業にとって重要な顧客接点であるコンタクトセンターは、今後どのように進化していくべきでしょうか。デロイト トーマツ コンサルティング合同会社のシニアマネジャー、住川誠史氏にお話を伺いました。

 

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「コンタクトセンター3.0」の時代で求められる役割とは

 コンタクトセンターに求められる役割は、規模と効率が求められた時代から、マルチチャネル化、そして現在は顧客とのエンゲージメントの強化と、時代とともに変遷しつつあります。さらに顧客側からも、電話やメールだけでなく、日常的に使っているLINEなどのメッセージングアプリで手軽に問い合わせをしたい、あるいはもっと短時間で問題を解決してほしいなど、コンタクトセンターへの要求レベルは高まり続けているのが現状です。

 デロイト トーマツ コンサルティング合同会社のシニアマネジャーで、CRMユニットにおけるカスタマーエクスペリエンスチームのリーダーや早稲田大学大学院の非常勤講師も務める住川誠史氏は、現在を「コンタクトセンター3.0」の時代だと話し、そこで重要となるのがカスタマーエクスペリエンスだと述べました。

 「コンタクトセンターは規模と効率追求の時代(コンタクトセンター1.0)、マルチチャネルの時代(コンタクトセンター2.0)を経て、近年はお客さまと経営層の高い期待を両立させるために、進化した技術基盤を活用し、カスタマーエクスペリエンスを高めてお客さまとのエンゲージメントを強化するという、大きな進化が求められており、コンタクトセンター3.0の時代に移ったと考えています」

 

コンタクトセンターは、顧客と企業の期待の高度化に対応するため、
CXを重視する“コンタクトセンター3.0”の時代に突入した

競争優位の源泉は川上から川下へ

 実際、コンタクトセンターを取り巻く状況は大きく変わり始めています。まずコンタクトセンターに問い合わせる前にWebサイトを閲覧するなど、自分で調べる人の割合が7割近くに達しているほか、メールやチャットといった非音声系のツールを使った問い合わせも2017年時点ですでに36%あり、2019年には50%を超える見通しです。さらに顧客は、担当者にすぐにつながり迅速に解決に至ることを求めるなど、スピードが重視される状況となっています。

顧客はさまざまなデジタルツールを駆使し、複雑な問い合わせの
即時解決を、コンタクトセンターに期待するようになっている

 企業のビジネス環境の変化もコンタクトセンターに大きな影響を及ぼしているようです。

 「とりわけ日本の製造業はこれまで商品力やサプライチェーンを強みにビジネスを伸ばしてきましたが、それを武器に戦うことが徐々に難しくなっているのが現状です。そのため、川下である販売やサービス、いわゆる顧客接点という部分に競争優位の源泉が移ってきていると思います。よい商品を作るだけでなく、お客さまに対して何ができるかが重要になりつつあるというわけです」

競争優位確保のため、企業にとって顧客接点の重要性が高まっており、
コンタクトセンターはCX向上の戦略的実現拠点と位置づけられる

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顧客満足度の向上はプロセス全体で考えるべき

 カスタマーエクスペリエンスが重視される中、コンタクトセンターは単にサービスの提供だけでなく、エンゲージメントを強化するための拠点としての役割が求められるようになり、それによって経営に直接貢献できる組織に変わっていくことが期待されています。

 このカスタマーエクスペリエンスについて、住川氏は「顧客を中心として、その周囲に顧客が行うサイクルがあり、その周りがすべて顧客との接点であり、つまりカスタマーエクスペリエンスであると言えます」と述べました。たとえば何かを購入する際、商品について調べたり、店頭で実物を見たりといった行動を起こすでしょう。また何らかのサービスを解約するときは、Webサイト、あるいはコンタクトセンターに電話して解約する旨を伝えるなどの手続きが発生します。こうした商品やサービスにかかわる一連の行動がすべてカスタマーエクスペリエンスであるというわけです。

CXとは顧客が製品サービスとの関わりにより、顧客の持つ時間軸と
プロセスにおいて、経験する一連の体験とそれにより感じる価値である

 「わかりやすい事例で言えば、たとえばスマートフォンが壊れたとします。故障窓口に電話して対応してもらうと、すぐに電話がつながり、スペシャリストが親身に話しを聞いてくれて、結果的に保証の対象になるので無料で交換できますという話になりました。このような対応は顧客の満足度も上がるでしょう。一方、すぐに使いたかったので携帯ショップに出向いたところ、非常に待たされて、故障した状況などを詳しく聞かれて、受け取るまでにすごく時間がかかってしまいました。これでは顧客の満足度は低下します。つまり個々のプロセスの質をいくら高めても、トータルでの顧客体験が期待を上回るものでなければ、全体の顧客満足度の向上にはつながりません」

 さらに住川氏は「顧客からの大量のコンタクトを受け、長期にわたるリレーションを管理してきたという意味で、コンタクトセンターには多くのノウハウが蓄積されていると思います。それを踏まえると、コンタクトセンターが顧客接点の実行だけでなく、顧客接点間のつなぎ役を担うことで、カスタマーエクスペリエンスを向上させる企業の中心的な役割となることを求められています」と話しました。

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コンタクトセンターからエンゲージメントセンターへ

 カスタマーエクスペリエンスを向上させるための組織として、住川氏が提唱したのは「エンゲージメントセンター」です。コンタクトセンターからステップアップし、お客さまと強いエンゲージメントを作って会社に貢献する。エンゲージメントセンターは、そのための中枢部門という位置付けです。

エンゲージメントセンター実現のためには、まずは
CXを向上し続けるサイクルの確立と顧客接点の最適化が求められる

 具体的な組織の戦略としては、「強いエンゲージメントを作るためにコンタクトを増やす」「カスタマーエクスペリエンス専門組織を作る」「顧客の多種多様な購買パターンに柔軟に対応できるプロセスを組む」「デジタルコミュニケーションと人の対応との最適な業務分担」そして「社内外のさまざまな情報の分析に基づくナレッジとインサイトの蓄積と活用」の5つが挙げられました。

 それでは、このエンゲージメントセンターを視野に、コンタクトセンターはどう変わっていくべきでしょうか。まず挙げられたのはデジタルチャネルを活用した効率化で、電話で応対していたものをデジタルでさばくことで業務の効率化を目指します。2つ目はリードナーチャリングです。

 「メールやLINEなどのデジタルチャネルで顧客とコンタクトし、見込み客だと判断できればビデオチャットを使ってコンタクトセンター側で応対しつつクロージングする、そういった売上拡大の流れも考えられます。デジタルをうまく活用することで、効率化と売上拡大の両方に貢献できますし、それがエンゲージメントセンターとしての重要なミッションになります」

デジタルチャネルとコンタクトセンターを最適に
組合わせることで効率化と売上の両面に貢献できる

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今後のコンタクトセンター運営で重視すべき2つの指標

 このような取り組みを進めるためには、適切にKPIを設定し、共通の数値を見ながら経営層とコミュニケーションする必要があるでしょう。とはいえ、従来のコンタクトセンターで使われていた指標は独特で、経営層には伝わりづらかったのも事実です。そこで住川氏が提案するのは、「ネットプロモータースコア(NPS)」と「顧客生涯価値(ライフタイムバリュー:LTV)」です。

 ネットプロモータースコアとは、「当社の製品やサービスを知人や友人にお勧めする可能性を0から10でお答えください」と質問し、顧客のロイヤルティを図る指標です。回答者の本気度が高いことから、将来の収益との相関が高く有効だとされています。

NPSはシンプルな質問によって、顧客の好意度や推奨度を評価し、
顧客ロイヤルティを測る有効な指標である

 「5段階の満足度評価では、『何となくいいね』という感じで差が出にくい。しかしネットプロモータースコアでは非常にわかりやすく差が現れるので、明確に顧客ロイヤルティを判断できます。この値と個々の顧客接点の評価からその相関を調べることで、ロイヤルティ向上のためにすべきことも見えてきます」

 一方のライフタイムバリューは、取引期間の中で顧客がもたらす利益の総額を示すものであり、ロイヤルティが高ければ当然ライフタイムバリューも上昇します。このライフタイムバリューについて、住川氏は売上だけではなく顧客とのコンタクトに関する費用も考慮すること、過去ではなく将来の利益も計算することとアドバイスし、次のように2つの指標を組み合わせる有効性について話しました。

顧客毎の価値を知ることが顧客戦略の第一歩である

 「このネットプロモータースコアとライフタイムバリューを組み合わせれば、誰に対してエンゲージメントを高めるかがクリアになります。わかりやすいのは、ネットプロモータースコアが低く、ライフタイムバリューが高い顧客層です。この層は非常にハイリスクなので、まずここに注力しましょうといったことが考えられます。また中立の層はどちらに転がるか分からないので、できるだけ高ロイヤルティ層にシフトさせる取り組みを行う。これら2つの指標でも、いろいろなことが見えてきます」

顧客生涯価値と顧客ロイヤルティ(NPS)を組合わせることで、
重点的にエンゲージメントを高めるべき顧客層を明らかにする

 最後に住川氏は「エンゲージメントセンターとして活動する上では、経営と現場、あるいは部門間の壁があります。それらを排除するために、組織を横断して動かす仕掛けや効果を定量化する仕組みが必要です。そして誰のエンゲージメントをどう強化するかを考える際、ネットプロモータースコアとライフタイムバリューは実用性が高く、経営陣と現場の共通言語となり得る指標なので、ぜひ導入を検討してください」と述べて締めくくりました。

 顧客接点としてコンタクトセンターがこれまで以上に重要な役割を担うことは間違いないでしょう。その際、どのように会社に貢献するかを考える上で、カスタマーエクスペリエンスの視点を持つこと、そしてネットプロモータースコアとライフタイムバリューの2つの指標を活用するという住川氏のお話は、大いに参考になるのではないでしょうか。

 

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