担当者が語る◯◯の現場(第2回)

運営者は悩んでいる!?コンタクトセンターの現場

2017.05.17 Wed連載バックナンバー

 コンタクトセンターは、企業が一般ユーザーの声を集約するための重要な窓口です。顧客から集めた意見を、商品やサービスに反映することで、よりよいビジネスにつなげていくことが可能となります。

 最近では、コンタクトセンターのオペレーターの人手が不足しているというニュースが新聞等で報じられました。その一方で、クラウド型のコンタクトセンターや、AI(人工知能)による顧客に対する自動応答機能といった、新しいテクノロジーの投入も進み始めています。コンタクトセンターを取り巻く環境は、いま大きく変わり始めています。

 そこで今回は、実際に企業でコンタクトセンター業務に関わっている担当者3名に、コンタクトセンターにおける現状と課題と、未来に向けてどのような対策を行っているのかについて、現場の生の声を伺いました。

[出席者プロフィール]

Aさん:データサービス会社に勤務する男性。情報システム部門のマネージャーを務める。コンタクトセンター業務にも参加している。

Bさん:国政に関わる業務を担う団体に勤務する男性。管理部門の部長として、コンタクトセンター運営業務を統括している。

Cさん:金融機関に勤務する男性。企画部門に所属し、働き方改革を担当しながら、コンタクトセンターの運営にも関わっている。

 

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コンタクトセンターのオペレーターが抱える悩みとは

――コンタクトセンターを運営していく中では、さまざまな課題があるかと思われます。Bizコンパスで行ったアンケートでは、「人材の維持/確保」、「人材の育成」といった点を課題として挙げる意見が多く見られました。皆さんの場合は、自社のコンタクトセンターにどんな課題を感じていますか

Aさん:当社は顧客との一次受付の部分をアウトソーシングし、その次のステップを自社の社員が対応していますが、その間の情報の連携に課題があると感じています。

Bさん:当社の場合、一番の問題は「クレーム対応」です。社内の業務を知っているオペレーターであれば解決できますが、そうでない場合は顧客をいろいろな部署へ、たらい回しにしてしまうことがあり、それがクレームになってしまいます。こうしたクレームを受け続けていると、オペレーターも精神的にもつらくなるみたいで、あまり長続きしないという問題があります。

Cさん:問題点は多くありますが、当社は「人材の確保と教育」を最も大きな課題と考えています。社内から人材を集めることに苦労しており、「能力の高い人をコンタクトセンターに出したくない」という部署も多いです。また、たとえ人材が集まったとしても、辞めてしまう人が少なくありません。不足する部分を中途採用で補っていますが、その人たちを教育し、質を保つことにも課題を感じています。

――やはりスタッフの問題が大きいようですね。そうした問題はどうやって解決しているのでしょうか。たとえば、オペレーターの意見をヒアリングすることやミーティングを行うといったことになるのでしょうか

Aさん:そうですね。オペレーターとは定期的なミーティングを行っています。

Bさん:当社もミーティングを週に一度行っています。ミーティングはオペレーターが悩んでいることなどを話し合う機会にもなっており、お互いに課題の解決策を伝え合うことで、精神的ダメージが少しでも和らぐようにしています。

Cさん:当社は個人面談を半年に1度行っていますが、問題が起きたら随時、管理者から報告が上がってくるようにしています。社員の声としては、「自分の知識が足りず、うまく応対できなくてつらい」といった声が最も多いです。また、社員同士の能力差が大きいため、ベテラン社員への負担が大きくなってしまい、そのことに対する不満の声もよく聞きます。

――ミーティング以外に、オペレーターの課題を解決するための施策を行っていませんか。話し合いだけでは解決できない問題もあると思われるのですが

Aさん:当社はCRM(顧客関係管理:Customer Relationship Management)のクラウドサービスを導入しています。コンタクトセンターのオペレーターだけではなく、営業担当者も顧客からの問い合わせ内容を見ることができるため、関係者全員が連携して課題を解決していく仕組みを構築しています。

Bさん:当社の場合は、コンタクトセンターに寄せられる情報を蓄積し、この情報を元に、オペレーターが応対に困らないよう「こういう問い合わせにはこんな形で対応するのが良い」とアドバイスをしています。

Cさん:当社はオペレーターの知識の底上げを行うため、能力評定シートを用いて、どこが苦手なのかを「見える化」しています。それを元に、なるべく少人数で頻度の高い研修を行い、個人の能力を上げることに取り組んでいます。また、1つの問い合わせに対してどれくらいの時間をかけて対応したのかを確認し、どうすれば対応時間を削減できるのかを、グループ単位で考えていくことも行っています。

 オペレーターの課題解決の話題からは逸れますが、対応時間を削減するために、現在AI(人工知能)による自動応答システムも開発している最中です。もちろん、AIが顧客対応を100%行うのではありませんが、AIが出す何種類かの答えを人が確認し、最適だと思える回答を顧客に案内するようなシステムとする予定です。

AIはコンタクトセンターの問題を解決するか?

――先ほどCさんから「AIの導入を検討中」という話が出ましたが、顧客からの課題を解決するために、新たなITツールの施策を導入している、あるいは検討しているケースはありますか

Aさん:電話で待たされるのを嫌う顧客が多いため、チャット機能を導入することを検討しています。私も別のコンタクトセンターでユーザーの立場としてチャット機能を利用していますが、便利かつストレスがたまらないので、たいへん満足感があります。ですから当社としても、チャットやWebサイトなど、電話以外の問い合わせ方法に顧客を誘導していきたいと考えています。

Bさん:当社も同じで、電話で待たされることに不満を感じている顧客が多くなっています。そのため、Webサイトにガイダンスを用意して、それを見てもわからなかった場合に電話で問い合わせてもらうようなシステムを構築していきたいと考えています。それによってオペレーターの負荷を軽減できるので、省いた時間を、電話応対のサービスを向上するための時間に充てられると考えています。

Cさん:当社の場合は、金融機関ということもあり、複雑な仕組みの商品の説明に関しては、説明できるオペレーターの数が限られています。単純な商品の説明に関しては特に問題ないのですが、そうでない場合は顧客を待たせてしまっているのが現状です。解決のためには教育を行う必要がありますが、コストが掛かる上に研修期間中の実働人数が減るため、ほかのオペレーターの負担が増えてしまいます。

 そこで、特殊な知識が必要な商品に関しては、先ほど触れたように、AIが対応していく方向で開発を進めています。

――Aさんの会社が検討しているというチャットは、AIと連携したものを想定していますか?

Aさん:その通りです。マンパワーでチャットの質問に24時間にリアルタイムで回答するためには、人の手配が大きな課題となります。そういった部分で、チャットの質問の内容をAIが判別し、回答を自動で顧客に提供するというスタイルは、まさに理想形です。コンタクトセンターで蓄積されたデータをそれらに活用していく方向で検討しています。

Bさん:当社も導入してみたいです。私はAIの対応のメリットのひとつが、「適切な言葉が選べる」点にあると考えています。人が対応すると、言葉の選び方によって顧客に誤解を与えたり、語弊が生じてしまったりすることがありますが、そういったことが起きることが少なくなるのではないでしょうか。

 また、顧客からの質問の数も減るのではと考えています。電話で問い合わせてくる顧客の中には、とにかくオペレーターと話がしたいという人もいますが、AIであればそういった顧客の数は減っていくと思われます。

――AIのメリットについてはわかりましたが、逆に、顧客対応におけるAIのデメリットとしては何が考えられますか

Cさん:顧客への問い合わせに対する受け答えに、本当に問題なくできるのか、という点でまだ疑問が残ります。コンタクトセンターの潮流として、やがてAIが活用されるのは間違いないでしょうが、最初のころは人のサポートが欠かせないと思います。人のサポートを受けながらデータを蓄積していくことで、やがてAIだけで対応できる時代が来ると考えています。

Bさん:顧客がAIの回答をどう受け止めるかといった問題はあると思います。人には感情があるため、たとえ正確に答えたとしても、顧客が納得するとは限りません。それをどこまで割り切ってAIを利用するのかは、思案のしどころですね。AIを導入する際のコストも重要なポイントになるでしょう。

Cさん:コストは確かに問題ですね。AIの導入や運用にどれくらいコストが掛かるのかは、まだ見えていないですからね。

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コンタクトセンターは「顧客満足度を生み出す」部署である

――AIの導入が検討されるなど、ITの進化によってコンタクトセンター業界を取り巻く環境は、従来とは大きく違ってきていると思われます。「最近、ここが変わってきたな」と思う点は何かありますでしょうか

Aさん:インターネットなどを使って、ある程度調べてから問い合わせを行う顧客が増えているように感じています。

Bさん:そうですね。ですからオペレーターの回答も簡単な内容では感謝されなくなってきました。もっと勉強することが求められてきていると思います。

Cさん:これは金融業に特有なことかもしれませんが、以前は金融商品の契約内容に関する質問が多かったのですが、金融の自由化が進んだことで商品が数多く出回り、質問よりも相談の方が多くなりました。そのため、回答する方には広い知識が必要になりました。AIのニーズが生まれたのも、この相談に対応するのが一番の理由です。

――Aさんの発言にあったとおり、今はインターネットで誰でも調べられる時代になりました。そうした時代に、コンタクトセンターの価値が以前よりも低くなっていたりはしないのでしょうか

Bさん:私の組織内では、ネットの普及もあって、コンタクトセンターの評価はだんだんと落ちている印象です。

Aさん:当社の場合は、むしろ重要度が増しています。“顧客満足度を高める部署”として、コンタクトセンターに予算をかけることは、コストではなく「投資」だと考えられるようになってきました。

Cさん:私も重要度が増している印象です。たとえば営業からは、「顧客の知識が高度化していて、答えが一つではない質問内容も増えてきており、それを現場で対応していたら仕事にならない。コンタクトセンターはそういった質問を処理してくれる」と評価されており、社内的にも重要性が上がっています。

 人を増やすことはまだできませんが、世界的にAIが話題になっていることもあり、そのための予算は増えてきています。

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「AIが8~9割対応して、残りが人間」が理想

――最後に、コンタクトセンターサービスを提供しているベンダーに対し、何かリクエストや、期待することはありますでしょうか

Aさん:我々がコーディネートするのではなくて、ベンダーが窓口になって、いろいろな得意分野の企業とリレーションを組んで、1つのパッケージサービス、ソリューションサービスで提供してもらうのがあればいいですね。

Bさん:ベンダーさんには、すでにいろいろリクエストしています。たとえば「自動音声ガイダンスやAIでもいいから、顧客がどんな理由でコンタクトセンターにクレームを入れているのかを分析し、解決できるようなことができないか」といった提案です。しかし、芳しい返事が戻ってきません。そういうことができるサービスがあれば、弊社も導入するのですが……。

Cさん:私は、AIの開発スピードを早めてほしいです。そして、「AIが8割、9割の質問に対応できて、AIが対応できないものは人間の手でやる」というところまで求めたいです。

――要は「クレーム対応も説明対応も、何でもできるAIを開発してほしい!」ということでしょうか

Cさん:そうです。最終的に求めるのはそこですね。

 今回の座談会の内容をまとめると、コンタクトセンターの重要性を高いと認識し、「コンタクトセンターに予算をかけることは投資である」と考える企業もあることがわかりました。さらに、コンタクトセンター業界ではAIに対する期待が高く、「顧客対応のほとんどをAIが対応してほしい」という意見も見られました。

 問い合わせの8割~9割に対応できるAIが導入されれば、顧客対応のほとんどがAIで完了でき、残った1~2割は人間のオペレーターが対応すれば、顧客対応の効率は飛躍的にアップすることでしょう。記事の前半で指摘されていたスタッフの問題も解消できます。

 AIはコンタクトセンターを変えるだけでなく、ビジネス全体の仕組みを大きく変える存在だといえるでしょう。Bizコンパスでは、これまでにもコンタクトセンターにおけるAI利用の記事を多く掲載しています。もし導入を検討するのであれば、ぜひ一読ください。

AIで応対する「バーチャルアシスタント」の現在地

 AIの技術を用い、ユーザーの質問や要望に応える「バーチャルアシスタント」が広まりつつあります。これを利用すれば、顧客からの問い合わせに自動で応対でき、コンタクトセンターの大きなコスト要因である人的リソースの削減が可能となります。最近は、高度な日本語の理解能力を持ち、「人間のように応対し、人間の代わりを行う」バーチャルアシスタントも登場し始めています。

AI活用の感情分析がコンタクトセンターをサポート

 多くのコンタクトセンターでは、顧客との通話を録音する仕組みが導入されていますが、録音した内容をすべて聞いて内容を精査するのは現実的に困難な話です。そこで期待されるのが音声認識技術です。以前は認識精度が低かったことから、実際の現場で活用するのは厳しいと判断されるケースが少なくありませんでしたが、現在は認識率が「90%前後」という高精度の音声認識技術も生まれています。コンタクトセンターの業務を改善するための切り札として、再び注目が集まっています。

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Bizコンパス編集部

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