2017.03.15 Wed

胃腸を元気に!ビール酵母からできた「エビオス錠」

エビオス錠

 ビールの発酵工程に使われ、その香りや味を決める重要なファクターとなる“ビール酵母”。そんなビール酵母から作られるのが、アサヒグループ食品の「エビオス錠」です。1930(昭和5)年5月に発売された同商品は、今も当初と変わらぬ栄養成分と錠剤のカタチを守り続けています。

 「エビオス錠」の歴史をひもとき、ロングセラーを続ける秘密に迫ります。

 

ビールからできた栄養豊富な酵母

 はるか昔、人類最初の文明といわれるシュメール文明の時代から、すでにビールは愛飲されていました。当時は砕いたパンに水を混ぜて発酵させ、ビールをつくっていたと考えられています。月日は流れ、発酵技術などが改良されていくのに従い、ビールはより味わい深く、香り高いものへと進化を遂げていきます。

 数千年前からビールに親しんできた人類は、その製造の要となる“酵母”の力に早くから注目してきました。紀元前の書物にビール酵母を使った強壮剤や下剤についての記録が残っています。20世紀に入ると、ビール酵母の薬効に関する知見が医学専門誌に次々と発表されるようになり、その活用にさらなる期待が高まりました。

 この酵母の力に早くから着目し、商品化されたのがアサヒグループ食品の「エビオス錠」です。同商品は、ビールづくりに使われた酵母に含まれている栄養素の働きで、胃腸のはたらきを活発にするとともに、栄養補給もできるという特徴があります。

 まずは、その原料となるビール酵母についてご説明しましょう。

 ビール酵母はその名のとおり、ビールづくりに適した酵母菌の一種です。その1つひとつは、約10ミクロン(100分の1㎜)と非常に微小ですが、細胞壁や細胞の中には食物繊維や必須アミノ酸、ビタミンなど、たくさんの栄養成分が含まれています。また、ビール酵母は消化機能を助けるとともに、乳酸菌など腸内の善玉菌を増やすという働きもします。

 アサヒビールの各ビール工場では、ビールを作る際に大麦に水と空気を与えて発芽させ、それを乾燥して麦芽にします。そして、麦芽をでんぷんなどの副原料とともにゆっくり煮て、麦汁を作ります。この麦汁に加えられるのが、ビール酵母です。ビール酵母は麦汁を発酵させ、糖分をアルコールと炭酸ガスに変えていきます。こうして発酵により作られた“うわずみ液”が、ビールとなります。

 一方、ビール酵母は発酵槽の中に沈殿します。その中には、麦汁の栄養成分がたっぷり吸収されています。このビール酵母から不純物を取り除き、乾燥させ、錠剤のかたちに整えることで「エビオス錠」ができあがります。

 麦汁などから栄養成分を吸収した「エビオス錠」には、ビタミンB群、たんぱく質、ミネラル、食物繊維、核酸など、40種類の天然成分が含まれており、栄養補給を助けてくれます。また、ビール酵母の作用で胃腸のはたらきを活発にし、消化不良・食欲不振などの症状を改善します。

ビールには入っていない「ビール酵母」

 ビールづくりには濾過する工程があり、ほとんどのビール酵母がこしとられます。そのため、ビールにはビール酵母はほとんど含まれていません。一方、ビール酵母を使用した「エビオス錠」には、ビール酵母を洗浄・乾燥しているため、アルコールは入っていません

 

“脚気”を解消したい!いざ開発へ

 「エビオス錠」が誕生したのは昭和のはじめ。開発のきっかけには、当時の厳しい栄養事情にあったといいます。

 「アサヒビール」が発売されたのは1892(明治25)年のことですが、大日本麦酒(現アサヒビール)ではそれに先駆けて、ビール製造に欠かせないビール酵母の研究を行っていました。しかし、当時はまだ、ビール酵母は、ビール製造以外の用途が見つかっておらず、ビールの製造後には大量に廃棄されていました。

 転機が訪れたのは1921(大正10)年のことです。同年、英国の醸造関連の専門誌「Journal of Institute of Brewing」に、ビール酵母にビタミンB1が非常に多く含まれているという記事が発表されました。これに着目したのが、大日本麦酒の社員で、ビール試験所に所属していた橋谷義考です。

 その頃の日本には、玄米を精米することによってビタミンが抜き取られた白米が普及したことで、ビタミン欠乏症の1つである“脚気(かっけ)”の患者が大勢いました。橋谷は、ビール酵母にビタミンが豊富に含まれているのであれば、脚気の治療に使えるのではないかと考えたのです。こうして、大日本麦酒は、ビール酵母を活用した薬品・食品の開発をスタートしました。

 1924(大正13)年、橋谷義考の指導のもとで、大日本麦酒の研究員だった田中民夫が酵母エキスのサンプルを使った研究を開始。1926(大正15)年からは、田中はビール酵母の錠剤化に取り組みます。

 しかし、その道のりは決して平坦なものではありませんでした。ビールの発酵に使われたビール酵母には、ビールの原料の1つであるホップの苦みが付いています。研究員たちは、その除去に苦労しました。また、乾燥させたビール酵母をうまく成形することもできず、錠剤のかたちに整える機械に入れてもすぐにくずれてしまいました。

 試行錯誤の末に、研究員たちは、ビール酵母からホップの成分をふるいに掛けて払い落とす方法や、水とカセイソーダで洗い流す技術などを編み出します。さらに、錠剤化するための製造装置の開発にも成功し、製品化への道筋をつけました。

 ビール酵母から作られる、この新しい製品には、当時大日本麦酒のビール工場が東京の恵比寿にあったことから、その地名にラテン語の命の素を意味する「BIOS(ビオス)」を加えた、「(EBIOSエビオス)」という名前がつけられました。

 こうして、1930(昭和5)年5月に、「エビオス錠」が発売されました。

 

競合と戦禍、「エビオス錠」に立ちふさがる壁

 しかし、「エビオス錠」の売上は伸び悩みます。すでにビール酵母を使用した競合商品が発売されていたため、発売1年目は目標の半分にも届きませんでした。販売面では田辺五兵衛商店(現田辺製薬)と販売委託契約を結び、タッグを組んでの営業活動や、新聞広告を展開することで、徐々に認知度が向上しました。

 順調に売り上げを伸ばす「エビオス錠」でしたが、太平洋戦争の開戦によって暗雲が立ち込めます。戦後の原材料不足によりビールの生産自体が減り、ビール酵母も手に入りにくくなったのです。原料の入手が難しくなったことで、「エビオス錠」の生産量も限られるようになりました。

 1950年代に入り、日本が高度経済成長期を迎えると、それに合わせてビールの生産も増えていきます。また、日本社会が豊かさを取り戻す中で、健康に対する意識が高まったこともあり、「エビオス錠」は再び成長軌道に乗るようになります。

 ブランドの成長を後押しするために、「エビオス錠」は積極的な広告施策を打ちます。1951(昭和26)年4月にラジオの民間放送が始まると、その後に「エビオス錠」のCMを放送。さらに、1953(昭和28)年に民間放送を開始したテレビでも、CMを展開しました。

 1958(昭和33)年3月には、「エビオス2000錠」を発売します。それまでは、“Kg”“g”といったように重量を明示していましたが、錠数表示へと変更されました。

 東京オリンピックが開催された1964(昭和39)年、それまで「ヱビオス」と表記されていた商標文字を「エビオス」に変更。オリンピックを契機に日本が戦後復興を果たそうと変化する中で、「エビオス錠」も旧字体から、新字体へと改めることで、イメージを一新しました。

 その後、「エビオス錠」の広告展開は新聞広告を中心としたものが続きますが、近年になり、同製品はテレビCMを再開させるなど、新たなファンを獲得するための取り組みに力をいれています。

ガラス瓶が“茶色”のにはワケがある!?

 「エビオス錠」は、茶色のガラス瓶に入っています。この“茶色”と色味と、“ガラス”という素材を使っているのには、ちゃんと意味があります。「エビオス錠」の成分には、ビタミンB群が含まれています。このビタミンは、光や湿気に弱いのです。そこで、遮光瓶といわれる茶色の瓶で、ビタミンの苦手な光の影響を弱め、ガラス素材の瓶で湿気から守っているのです。

 

家族での利用を訴求し、出荷金額が過去最高に

 「エビオス錠」は、2013(平成25)年からテレビCMを再開します。

 従来の「エビオス錠」のユーザー層は50代、60代が中心でした。新しいテレビCMでは、イメージキャラクターに俳優の仲村トオルさんを起用し、「エビオス錠」の魅力をより若い世代にもアピール。これにより、30代、40代という新たなユーザー層の開拓に成功し、売上も伸びました。

 2015(平成27)年2月には、「エビオス錠」初のパウチタイプを発売します。パウチタイプは、トライアル層が手を伸ばしやすいように、ビンタイプと比べて内容量を減らし、価格を低く設定しています。この製品も、手軽な価格や携帯のしやすさなどから、若い世代や女性という、新しいユーザーの獲得に一役かっています。

 また、妊産婦、授乳婦をターゲットに、栄養補給の啓発活動も開始。ここでは、「エビオス錠」に含まれている栄養成分が全て天然素材由来のため、妊娠中・授乳中でも安心して使用できるということがアピールポイントになっています。

 現在、アサヒグループ食品は、「胃腸を元気にして、食事をおいしく」をキーメッセージに、「エビオス錠」が家族全員で利用されるようにとCMやWebで訴求しています。こうした戦略により、2016(平成28)年に「エビオス錠」は過去最高の出荷金額を記録しました。

 「エビオス錠」は、2015(平成27)年に発売85周年を迎えました。それを記念して実施したエピソードコンテストには、「親子三代で飲んでいます」という声が非常に多くよせられたといいます。

 胃腸から家族全員を元気にしたいという「エビオス錠」の願いは、醸成されつつあるのかもしれません。

アサヒグループ食品株式会社について
■ 事業内容菓子、健康食品、サプリメント、酵母エキス、育児用品、フリーズドライ商品等の製造・販売
■ 設立年月2015(平成27)年7月10日
■ 本社所在地〒150-0022 東京都渋谷区恵比寿南2-4-1
■ 従業員数約800名
■ ホームページ

http://www.asahi-gf.co.jp/

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