2017.11.07 Tue

「ひっそりと研究したい」はずが水・環境企業の社長に

メタウォーター株式会社 代表取締役社長 中村 靖 氏

 2008年4月、水・環境分野における“日本初”の総合エンジニアリング企業が誕生した。富士電機の子会社、富士電機水環境システムズと、日本ガイシの子会社、NGK水環境システムズが合併する形で発足した、メタウォーター株式会社である。

 同社の主な事業は、浄水場、下水処理場、ごみリサイクル施設等の機械・電気設備の設計・建設を手がける「EPC事業」、施設の運営、運転・維持管理を行う「O&M事業」、公民連携事業を担う「PPP事業」、そして「海外事業」となる。2014年には、発足から6年で東証一部に上場した。

 東証では、ライフラインである水・環境インフラを担う企業であることから、同じライフラインを支える、「電気・ガス業」に水・環境インフラ企業として初めて分類された。代表取締役社長を務める中村靖は、「機械技術と電気技術を得意とする2社が統合したことで、機電融合によるユニークな商品・ソリューション開発が可能になりました」と、自社の特徴を語る。

 

ひっそりと研究したい

 水・環境を支えるビジネスに携わる中村であるが、水や川が有名な街で育ったわけではなく、ベッドタウンである埼玉県浦和市(現、さいたま市)で生まれ育った。

 サッカーの盛んな土地柄もあり、自身も大好きだったが、小児喘息を患っていたため、医師から運動を止められていた。自分でプレイせず、もっぱら観戦が専門であった。小児喘息は中学に上がる頃には治ったものの、先輩・後輩の人間関係が苦手で、それらをなるべく避けて過ごすようになった。

 一方で夢中になったのが「凧」。それも、平面ではなく立体型の「立体凧」だ。中学・高校、自ら“凧同好会”を起ち上げ、先輩や後輩といったしがらみのない、フランクな関係で立体凧に打ち込める環境を作りだした。

 大学は青山学院大学理工学部電気・電子工学科へと進学する。日々熱心に授業を受け、3年終了時には全単位を取得。いよいよ卒業後の進路を考えるのみとなったが、中村は「就職」という選択肢は持ち合わせていなかった。

 「とにかくサラリーマンになるのが嫌で、なんとか就職しないで暮らす方法はないかと真剣に考えました(笑)」

 そこで中村は、実用新案を考えて、ロイヤリティー(権利使用料)で暮らすことを思いつく。まず考案したのが、当時カーオーディオの主流だったカセットテープの出し入れを片手で操作して入れ替えられる仕組みである。試作品を多くの企業へ持参して、飛び込みで話を持ち込んだ。どこも喜んで担当者には会わせてくれたが、結果として、案を買い取る企業は皆無だった。

 「一通り真面目に話をきいてくれるのですが、最後には必ず『うちに就職しない?』となります。結局、欲しいのはアイデアではなく、理系の新卒生としての自分なんだと思い知らされて、だんだんと嫌になって止めました」

 ここで中村は一気に方針を転換し、大きな会社で人知れず研究開発や市場調査に打ち込むといった、地味で静かな道を模索し始める。そうして最終的に選んだのが、富士電機製造(のちの富士電機)であった。

 「家電メーカーのような知名度はないけれど、大きくて業績もいいようだし、ここならひっそり好きな研究ができるだろうというのが一番の理由でした(笑)」

 

気が付けば水処理部門のトップに

 1981年に入社。配属されたのは、放射線を応用した計測機器をつくる部門だった。当時、放射線関係の仕事は富士電機内ではマイナーな部類に属したが、そのなかでも計測器ビジネスはさらにマイナーな存在であった。

 「地味に静かに過ごしたい」という中村の目論見通りとも思える環境だが、いざ働いてみると… 続きを読む

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中村 靖(ナカムラ ヤスシ)
1957年、埼玉県浦和市(当時)に生まれる。1981年3月、青山学院大学理工学部電気・電子工学科を卒業し、同年4月に富士電機製造株式会社に入社。2003年、富士電機システムズ株式会社 環境システム本部 水処理統括部システム技術部長に就任。2008年 4月、メタウォーター株式会社発足時には、同社取締役およびエンジニアリング本部 副本部長に就任し、業界初となるクラウド型プラットフォーム「ウォータービジネスクラウド」を手がけた。2016年6月、代表取締役社長 執行役員社長に就任。現在に至る。

メタウォーター株式会社について
■ 事業内容浄水場・下水処理場・ごみ処理施設向け設備等の設計・建設、各種機器類の設計・製造・販売、補修工事、運転管理等の各種サービスの提供
■ 設立年月2008年4月1日
■ 本社所在地東京都千代田区神田須田町一丁目25番地 JR神田万世橋ビル
■ 従業員数2,889人 ※2017年3月31日現在、連結
■ ホームページ

http://www.metawater.co.jp/

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