2017.04.11 Tue

日本の技術力で宇宙と地上にイノベーションを起こす

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA) 理事長 奥村 直樹 氏

 未知に対する好奇心が強く、中学生の頃から見知らぬ地を歩くのが好きだった。そのルーツは、中学1年のときに母親が話してくれた国木田独歩の『武蔵野』にあるという。読書好きだった母から聞かされた『武蔵野』に興味を持ち、辞書を片手に文語調交じりの作品を読破。読むだけでは飽き足らず、作中の「武蔵野を散歩する人は、道に迷うことを苦にしてはならない。どの路でも足の向く方向へ行けば、必ずそこに見るべく、聞くべく、感ずべき獲物がある」との言葉に感化され、武蔵野まで足を運び、実際に作品の世界を歩いた。

「中学、高校、大学と日本中を歩きました。道なき地へ平気で入っていくので迷子にもなりましたが、そこで起きる予期せぬ出来事が楽しかったんですね。今にして思えば、その時々の状況に応じた対応力を、多少は学ぶことができたかもしれませんね」

 大学は理系に進学、量子力学、固体力学、高分子などを研究する物理工学を専攻。東京大学大学院応用物理学・博士課程修了後、新日本製鐵株式会社へ入社。鉄の強度を上げる加工法などの基礎研究および新規事業開発に従事した。2005年に代表取締役副社長に就任、2007年から2013年1月まで内閣府総合科学技術会議の有識者議員を務め、2013年4月、宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)の理事長に就任した。

「就任の挨拶で『私は宇宙に関心があったわけではない』と発言しました。その発言の背景には、総合科学技術会議にいたときに感じた思いがあり、宇宙開発で大々的に取り上げられるのはロケットや衛星ですが、それはあくまで手段であり目的ではないということです。宇宙好きの人は、この手段がどれだけ進歩を遂げたかに注目します。しかし、私は普通の人々にも実感してもらえるような“身近な宇宙の進歩”を実現したいのです。それを基に宇宙を理解・応援する国民の層を拡大することを目指すのが“新生JAXA”の基本理念です」

 

衛星の情報を使って社会の課題解決や産業振興につなげたい

 “身近な宇宙の進歩”を実現する上で重要な役割を担うのが人工衛星だ。人工衛星は大別すると、衛星放送に使われる放送通信衛星、GPSやナビゲーションに使われる測位衛星、気象観測などに使われる地球観測衛星の3種類がある。新生JAXAは、これらの衛星をフルに活用することで、さまざまな社会課題の解決に貢献することを目指している。

「たとえば、天気予報が当たるのは『ひまわり』の情報があるからですし、BS放送やCS放送を楽しめるのは放送通信衛星があるから、カーナビが使えるのは測位衛星の情報を使っているからです。このように私たちの身近なところで宇宙の情報はいろいろ使われているのです。衛星からの情報は、ほかにもさまざまな利用用途があり、今後の産業振興にも重要な役割を果たせると考えています」

 昨今話題となっている車や農機の自動運転なども衛星からの情報がなければ成り立たたない。さらに、地球観測衛星は地震などの災害時にも使われている。

「地上約600キロメートルを飛ぶ『だいち2号』は、地面の移動や隆起、陥没をわずか数センチのレベルで観測できます。このデータを活用すれば、… 続きを読む

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奥村 直樹(オクムラ ナオキ)
1973年3月、東京大学大学院応用物理学・博士課程修了。1973年4月 新日本製鐵株式会社に入社、1999年6月 同取締役、2003年4月 同 常務取締役、2005年4月 同 代表取締役副社長、2007年1月 同 総合科学技術会議議員。2013年4月、JAXA理事長に就任。

国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)について
■ 事業内容宇宙基本計画において政府全体の宇宙開発利用を技術で支える中核的実施機関と位置付けられ、同分野の基礎研究から開発・利用に至るまで一貫して行っています
■ 設立年月2003年 10月(3機関統合により発足)
■ 本社所在地東京都調布市深大寺東町7-44-1
■ ホームページ

http://www.jaxa.jp/

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