2016.09.13 Tue

権威ある人と僕らの差は“想像”する力

ラクスル株式会社 代表取締役 松本 恭攝 氏

 フルカラーのチラシ印刷が1枚1.1円~、両面カラーの名刺印刷が100枚税込500円など、印刷物の価格を劇的に下げ、業界に革命を起したラクスル株式会社。同社の代表を務める松本恭攝は、なぜ、斜陽産業といわれる印刷業界をスタートアップのテーマに選んだのか、業界関係者や識者らが声を揃えて「無理だ」と否定する領域で成功を納めることができたのだろうか。

 

「無理だ」「やめたほうがいい」の向こう側にチャンスがある

 大学に入学した松本は、ビジネスコンテストを企画するサークルへ入部。日中韓の大学生と院生を集めてビジネスのアイデアを競う企画に魅力を感じて入部したが、実際には中国や韓国側の組織が立ち上がっておらず、予算もスケジュールも決まっていなかった。

「このとき、組織の立ち上げから、資金集め、会場の手配など、ゼロから1をつくりあげた経験は、今の起業につながる原点だったと思います。

 特に、『実現できるはずがない』と否定された企画を、自分たちの力で成し遂げたことは、僕の価値観を変えました。当時、日中も日韓も関係が悪化していたこともあり、協力をお願いした大学教授やコンサルタントは、口を揃えて僕らの企画を無理だと断じました。でも、やってみたら半年で1千万円の資金を調達し、日中韓から90名の学生が参加するコンテストを開催できたんです。

 権威ある人たちが無理だといったイベントを、何の実績もない学生が実現できた理由は、“想像”する力の差だと思います。できると信じる人間だけが、ゼロを1にできるってことを、そのとき実感しました」

 大学卒業後、外資系コンサルタント会社に入社した松本は、大手企業のコスト削減に携わる。人件費、物流費、システム開発費、メンテナンス費、プロモーション費、さまざまなコスト削減を進める中で、削減効果がもっとも高いのは印刷費だと気付く。

 調べてみると、印刷業界の市場規模は約6兆円で、そのうち半分を大日本印刷と凸版印刷の2社が占め、残り半分を約3万の中小企業が奪い合ういびつな構造が見えてきた。しかも、市場規模に対して企業数が多すぎるため、印刷機の稼働率は40%台にとどまっていることもわかった。

「大きくていびつで非効率、しかも斜陽産業で新規参入者がなくイノベーションが起きていない。これに気付いたことが、起業のテーマに印刷業界を選んだ理由です」

 

印刷物の価格を透明化する価格比較サイトで業界に参入

 最初に立ち上げたのは、印刷業界の価格比較サイトだった。印刷物には定価がないため、業界では相手の懐具合を見て料金を吹っ掛けたり、大幅なディスカウントを仕掛けたりといったことが頻繁に行われていた。そこで、印刷料金を透明化し、サイト上で見積もりが取れるマッチングサイトを立ち上げた。このサイトは2,000もの印刷会社が登録する人気サイトとなり、マッチングの総額は3年間で6億円を超えた。

 しかし、次第に印刷会社とユーザーが直接取引するマッチングサイトゆえの問題点が顕在化してきた。… 続きを読む

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松本 恭攝(マツモト ヤスカネ)
1984年、富山県出身。慶應義塾大学卒業後、A.T.カーニー入社。M&Aや新規事業、コスト削減などのプロジェクトを経験。2009年、ラクスルを設立。印刷会社をネットワークする印刷物のEC「raksul」を立ち上げる。フォーブス・ジャパンによる「日本の起業家ランキング2016」で2位に選出される。

ラクスル株式会社について
■ 事業内容印刷のEC事業、オンライン配送サービス事業
■ 設立年月2009年9月1日
■ 本社所在地東京都品川区上大崎2-24-9 アイケイビル1F
■ 資本金79億円(資本準備金含む)
■ ホームページ

http://corp.raksul.com/

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