2016.08.09 Tue

69歳でベンチャーを創業した気鋭の起業家

エリーパワー株式会社 代表取締役社長 吉田 博一 氏

 吉田博一は69回目の誕生日を迎えた2006年9月28日、仲間3人と共に大型リチウムイオン電池を開発・製造するベンチャー企業、エリーパワー株式会社を立ち上げた。住友銀行(現三井住友銀行)で副頭取を務め、三井住友銀リース(現三井住友ファイナンス&リース)で代表取締役会長 兼 社長を歴任した重鎮、名誉職に就く道もあったし、悠々自適な生活を送ることもできた。しかし、吉田は過去の名誉や地位に拘泥せず、70歳を前にドン・キホーテのごとく未開の市場へ突撃する道を選んだのである。

 

知己を頼らず315億円を調達

 2002年に三井住友銀リースの特別顧問を務め上げキャリアに一区切りつけた吉田は、縁あって慶応義塾大学大学院の政策・メディア研究科教授に招聘された。同大学では環境情報学部が進めていた革新的な電気自動車「Eliica(エリーカ)」の開発プロジェクトに参画。プロジェクトを進める中で大型リチウムイオン電池の可能性に目を付けた。リチウムイオン電池は、マンガンやニッケル水素の電池と比べ安全性に難があることと、価格が高いことから、普及には時間がかかるといわれていた。

 しかし、吉田の見立ては違った。これは世界規模のビジネスを生み出す絶好のチャンス。安全で安価な大型リチウム電池を量産できれば、原子力発電でつくられた電力を無駄なく使える。太陽光など再生エネで発電した電気も蓄えて地産地消型エネルギーによる持続可能社会を実現できる。その結果、化石燃料への依存が減り国家の安全保障につながる、さらにCO2削減により地球温暖化問題にも貢献できる。これほど重要なテーマであるのに、既存メーカーは大型リチウムイオン電池の開発には及び腰だった。そこで、吉田は自らベンチャーを立ち上げ市場を切り拓いてみようと考えたのである。

 「ベンチャーは若者がやるものだという発想は、偏見に過ぎません。逆に、私は年寄りだからこそできる、若者にはできない、ベンチャーのやり方があると思っていました。それは、多額の資金と組織を動かさなければ実現できない装置産業のベンチャーです。金融畑を歩いてきた私だからこそできるという自負もあり、なかば発作的に起業してしまった感じです」と笑う。

 驚いたことに、吉田は多額の資金を調達するに当たり、在籍した銀行や当時の取引先には一切近づかなかった。

「近しい者には近づかない、安きには流れないというのが、ビジネスを成功させる鉄則です。もともと銀行にいたので、工場も担保もない当社に融資してくれるはずがないとわかっていましたから、まずは当社のビジョンや社会的意義を理解してくれる法人から出資を募る道を探りました。法人は個人株主と違い客観的に事業を評価し、問題があれば厳しく指導し、成長を支えるパートナーになってくれると考えたからです。このような理念のもと、300社以上の企業を訪問し、大和ハウスグループさま、国際石油開発帝石さま、東レさま、SBIインベストメントさま、大日本印刷さまをはじめ31社もの企業に賛同いただき、315億円という資金を調達しました」

 

銃で撃っても発火しない、全自動工場で製造した大型リチウムイオン電池

 創業初期のテーマは、どうやって安全な大型リチウムイオン電池を開発するかにあった。リチウムイオン電池は一般的に内部短絡や強い衝撃、過充電で発熱・発火が起こるなどの安全性に課題がある。一時期、携帯電話の電池が発熱・発火する事故が多発していたのは、この理由によるものだ。電池メーカーはBMU(電池管理システム)などによる制御で安全対策に取り組んできた。

 携帯電話に使う小型電池ですら危ないとされていたのに、吉田は大容量の電気を貯蔵する大型リチウムイオン電池を開発しようというのだから、難易度が高いのは当然のこと。電池に関わる技術者や専門家は、誰もがエリーパワーの挑戦は無謀だと考えていた。

 しかし、エリーパワーは業界の常識を覆し、… 続きを読む

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吉田 博一(ヨシダ ヒロイチ)
1961年慶応大学法学部卒業、住友銀行(現三井住友銀行)入行。1996年副頭取。1997年三井住友銀リース(現三井住友ファイナンス&リース)代表取締役会長兼社長。2002年同社特別顧問。2003年、慶應義塾大学大学院メディア研究科教授などを歴任し、2006年にエリーパワーを創業。

エリーパワー株式会社について
■ 事業内容大型リチウムイオン電池および蓄電システムの開発、製造、販売
■ 設立年月2006年9月28日
■ 本社所在地東京都品川区大崎1-6-4 新大崎勧業ビルディング19階
■ 資本金315億1,293万円(内資本金157億6,996万円)※2016年4月1日現在
■ ホームページ

http://eliiypower.co.jp/

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