2015.06.23 Tue

自身のがん克服から人類のがん克服へ

公益財団法人 がん研究会 理事長 草刈 隆郎 氏

 今や2人に1人が罹患されると言われ、高齢化の進展に伴い患者数はますます増大している「癌(がん)」。そんな中、 “がん克服をもって人類の福祉に貢献する”ことを目的とし、日々がんの研究に取り組んでいる組織が、公益財団法人がん研究会だ。

 日本初のがん専門機関として明治41(1908)年に発足された同会は、現在では研究所に加え、附属病院「がん研究会有明病院」や、遺伝子を専門に研究する「ゲノムセンター」なども併設し、がんの治療に多角的な取り組みを行っている。海外からも評価を受けており、アメリカの科学専門誌「サイエンス」にて、がん研究会の研究所は、生物科学の分野で“世界トップレベル”と取り上げられたこともある。

 そんな会の理事長を務めるのが、日本郵船の社長・会長を歴任した草刈隆郎だ。今年で75歳を迎えた草刈だが、彼自身もまた、がんに身体をむしばまれたひとりだった。

 

ラグビー一筋の海運マン

 1940年に東京・西麻布で生まれた草刈だが、小学生時代の半分は疎開先の千葉県市川市で過ごした。戦後に一度は東京へと戻るも、親の転勤により名古屋で中学生時代の一期間を過ごすなど、めまぐるしく住む場所が変わった。だがその分、多くの友人を得ることができた。

 やがて名門・都立日比谷高校へと進学するも、ラグビー部に入部し勉強よりもラグビー漬けの日々を過ごす。

「もうラグビーに夢中でほとんど中毒でしたね。ある先生からは『ラグビー部のお前たちは都立日比谷高校の生徒ではない。まったく別の“私立日比谷高校”の生徒だ』と言い放たれるくらいでした(笑)。進学校らしからぬ不良高校生でしたから。当時のラグビー部の仲間たちとは今でも固く結ばれています。72歳までは選手として共にグラウンドを駆けまわっていたぐらいです」

 1964年、慶應義塾大学卒業後に日本郵船へと入社すると、ここでも会社のラグビーチームに所属し、仕事の傍ら選手として活躍する。そして同時に、ラグビーのチームプレイ精神が、仕事にも生きることを学んだ。

「会社で働いてみて、まさに“One for All , All for One”が大切なんだと実感しました。海運業というのは環境がめまぐるしく変わる世界なので、自分だけ抜け駆けしていい子になったとしてもすぐに潰されてしまいます。皆で信頼関係を築きながら共に荒波を乗り越えていくのに、ラグビーの精神が大いに役立ちました」

 この頃の日本郵船には、約15,000人もの船員が働いており、対して草刈のような“陸上”の社員は1,500人ほどでしかなかった。そして、“海”で働く人々が主役であり、陸の人間は彼らのサポート役に過ぎないといった空気が社内に流れていた。

 しかし、1985年のプラザ合意を経て円の価値が上がり続けるなか、実質的な船員の賃金水準がヨーロッパ諸国のそれをも上回るようになると、やがて船員の人件費は会社にとって重い負担となっていったのである。草刈は労政課長として、労働組合とのタフな交渉を重ねたが、会社は大量の船員を抱えきれなくなり、リストラが敢行される。経営陣が船員の再就職先の斡旋に苦労するなか、草刈もこれを手伝った。

 その後は時代の流れとともに日本の海運業全体で外国人の船員が主流となり、現在、日本郵船に所属する船員は600人だけだ。仕事内容も、所謂「船乗り」専業でない外国人船員のマネジメントや港での顧客対応など、かつての船上での仕事から大きく変貌している。

 

突然のがん告知、大きく変わった人生観

 日本郵船の管理職として仕事に追われる日々を過ごしていた草刈に、人生を揺るがすほどの衝撃が走る。1991年の夏、健康診断の折に肺がんが見つかったのだ。… 続きを読む

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草刈 隆郎(クサカリ タカオ)
1940年、東京都生まれ。1964年慶應義塾大学経済学部卒業後、日本郵船株式会社に入社。1999年に代表取締役及び社長に就任、その後会長などを歴任し、相談役に就いていた2011年4月にがん研究会の理事長に就任。2015年4月からは日本郵船特別顧問に就任。2009年より日本・ベルギー協会の会長を務めるなど兼職多数。2005年には藍綬褒章を受章。

公益財団法人 がん研究会について
■ 事業内容がんの診断・治療の実施、がんの新薬と新しい診断・治療法の研究と開発、がんの予防研究と一次・二次予防の実践、がんの研究・診療・予防の国内および国際交流の促進、など
■ 設立年月1908年
■ 本社所在地東京都江東区有明3-8-31
■ ホームページ

http://www.jfcr.or.jp/index.html

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