2015.02.24 Tue

入場者数減に歯止めをかけた水族館再生の情報戦略

株式会社鳥羽水族館 代表取締役社長兼館長 仲野 千里 氏

“大人の水族館”を牽引する四代目館長

 名古屋駅から電車で1時間半。静かな鳥羽湾の海辺に佇むのが今年で創立60周年を迎える鳥羽水族館だ。隣には真珠の養殖を世界で初めて成功させた『ミキモト真珠島』があり、共に伊勢志摩国立公園の観光拠点となっている。現在約1,200種、30,000点もの生物を展示する同館は、“飼育種類数”で断トツの日本一を誇る。

 同館は1955年に創設され、1976年に世界で初めてスナメリの繁殖に成功して話題を集める。しかし、何といってもその名を一躍広めたのが、1977年から始まったジュゴンの飼育だ。2011年に死んだオスの「じゅんいち」の31年5カ月という人工飼育記録はいまだに世界一である。ちなみに、日本でジュゴンが見られる水族館は今でもここだけである。1984年には日本で初めてラッコの赤ちゃんが誕生し、ラッコブームの火付け役にもなった。

「最近では2013年にダイオウグソクムシが一躍人気者になりました。ダイオウグソクムシは大西洋やメキシコ湾の深海に棲む、体長が30cmほどのダンゴムシの仲間です。なぜ注目されたのかというと、うちの飼育員が『2009年に50gほどのアジを食べてから、5年間何も食べていない』とホームページの飼育日記に書いたところ、“絶食中の変わった生き物がいる”ということで、ネットで一気に火が着いたのです。これをきっかけに風変わりな生き物ばかりを集めた『へんな生きもの研究所』という新施設をオープンし、おかげさまで人気のコーナーとなっています」

 そう語るのは、鳥羽水族館の四代目館長、仲野千里だ。仲野は49歳の時、祖父が創業した鳥羽水族館に迎えられ、現在「株式会社鳥羽水族館」の代表取締役と館長を兼ねる。仲野によると、鳥羽水族館を訪れる大人と子どもの比率は「8:2」。他の水族館に比べ、大人の入場者が多いことが特徴だという。水族館の特集を組んだある雑誌では、“質実剛健な水族館”と評されたこともある。

「その言葉は、大人の目線にも十分に耐えられる展示を評価していただけたのだと思っています。当館には『人魚の海』や『海獣の王国』『極地の海』など、12の展示ゾーンがありますが、お客さまはご自由にどこからでもご覧になれます。順路がない水族館は日本では唯一ここだけではないでしょうか。好きな生き物を心ゆくまで何度でも見られるという点も“大人の水族館”として人気がある理由だと思います」

 

3分の1に減った入場者数をどう増やすかが、積年の課題

 鳥羽市で生まれ育った仲野は、「物心ついてから、祖父がいた水族館がずっと遊び場だった」と語るほどの根っからの“水族館っ子”だった。しかし、大人になってからは水族館とは無縁の暮らしで、鳥羽水族館にやってくるまでは、システム・エンジニアとして大手コンピュータ関連企業である日本IBMに勤めていた。全くの畑違いからの転身だったが、水族館の経営者として仲野に課せられた責任は当初から非常に重いものがあった。… 続きを読む

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仲野 千里(ナカノ センリ)
1953年三重県生まれ。長年勤めた日本IBMを2002年に退社後、49歳の時に祖父が創始者である株式会社鳥羽水族館に入社。2005年に代表取締役に就任し、2013年からは館長も兼任する。小さいころから鳥羽水族館が遊び場だった、根っからの“水族館っ子”。今年で創立60周年を迎えた鳥羽水族館の四代目館長として地域経済の発展にも尽力する。

株式会社鳥羽水族館について
■ 事業内容水族館の経営
・飼育動物:約1,200種、全30,000点(哺乳類16種、魚類605種、は虫類45種、両生類37種、鳥類11種、無脊椎動物474種など)
・総水量:約6,000トン(展示水槽のみ)
■ 設立年月1955年5月
■ 本社所在地三重県鳥羽市鳥羽3-3-6
■ 従業員数119名(平成26年11月末)
■ ホームページ

http://www.aquarium.co.jp

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