2015.01.20 Tue

晴れの日でも傘を売る「傘づくりのアーティスト」

株式会社シューズセレクション 代表取締役社長 林 秀信 氏

高品質ながらもロープライス、「良品薄利」で事業拡大

 唐突だが、あなたが現在使っている傘、あるいは家にある傘などに「water front(ウォーターフロント)」というネームタグがついていないだろうか。株式会社シューズセレクションは、この「water front」をメインブランドに、傘の企画から製造・販売までを手がける。

 創業社長の林は、同社の傘について「良品薄利」という理念を掲げる。実際、同社の傘は500~1,000円の低価格帯が多いが、品質に関しては従来品であれば数千円に値すると、林は胸を張る。高品質でありながらロープライスという、それまでの傘業界の常識を刷新したことで、傘の年間販売本数1,870万本、国内シェア17%、全国各地に5万店以上の取扱店を持つまでに事業を拡大してきた(2013年実績)。

 そんな同社の設立は1986年。創業から間もなく30年を迎える。林は「ウチは後発であり、老舗ではありません。しかしだからこそ、旧態依然の傘業界を見ていて、チャンスがあると思いました」と胸を張る。

 林は当初から傘づくりを生業にしようと考えていたわけではなかった。長崎で生まれ育った林は、「強くなりたい」という想いから武術に興味を持ち、高校を卒業すると武術を極めるために上京する。道場で日々鍛錬する毎日を送っていたところ、たまたま武術の師匠が東洋医学にも精通しており、同分野も学ぶように。やがて、東洋医学を用いた治療院を開業する。

 「今でもそうですが、昔からあまり先のことを考えない性格でしてね」と林は笑いながら説明するが、その治療院が大繁盛。下世話な表現を使えば、若くして成功を手に入れたわけだ。

 ただ、この成功の裏には、傘ビジネスにおいての成功との共通点が垣間見える。それは「顧客第一主義」である。

「特に腕が良いというわけではありませんでした。ただ、患者さんのことを真剣に考え、誠心誠意、痛みや不調で困っている人を1人でも多く助けたいと、日々働いていただけです」

 その後、治療院経営で得た資金を元手に、テナント事業などを展開。こちらの事業でも成功を収めていく。ただ、心のどこかに「ものづくりがしたい」という想いがあったそうだ。その想いの源泉は、故郷での幼い頃の体験に遡る。

「近所に番傘づくりをしている人がいたんです。今も基本的にはそれほど変わりませんが、傘づくりというのは骨組み部分に、一枚ずつ丁寧に生地を貼っていきます。その様子がとても見事でしてね。庭先の縁側にちょこんと座り、じっと見つめていました」

 40歳を迎えた林は、傘づくりをスタートさせる。

 

経営者ではなく「傘づくりのアーティスト」

 林に組織勤めの経験がないこと、それまでの事業で得た潤沢な資金があったこと、利益第一主義ではなく、顧客満足度が優先であること。これらの理由から、同社の経営スタイルはいわゆる一般的な企業とは異なる。

 具体的には「他社の動向は気にしない(実際に同社は業界団体に属していない)」、「『お客さまに感動を』が合言葉」、「社員の自主性に任せる」といったあたりだ。林の言葉に置き換えれば次の通りだ。… 続きを読む

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林 秀信(はやし ひでのぶ)
1946年、長崎県生まれ。86年、生産から加工、販売までの一貫した流通の確立を目指して株式会社シューズセレクションを設立。高機能、高品質でありながら、低価格の傘で注目を集め、販売数を伸ばす。国内外で取得した産業財産権は161件。全国シェア17%を誇る業界のリーディングカンパニー。

株式会社シューズセレクションについて
■ 事業内容洋傘の企画・製造・卸
■ 設立年月1986年5月
■ 本社所在地東京都目黒区緑が丘2-16-14
■ 資本金2,000万円
■ 従業員数35名(2014年12月1日現在)
■ 業種洋傘メーカー
■ ホームページ

http://www.water-front.co.jp/

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