2014.07.08 Tue

食卓が人を育て、日本を救う――食育の真の狙いとは

学校法人服部学園 服部栄養専門学校 校長 服部 幸應 氏

食育の重要性を訴え、ついに国を動かす

 その特徴的な服装と穏やかな表情、そして落ち着いた口調で、長年にわたってテレビの料理番組などで存在感を発揮し続けている服部幸應。日本を代表する料理研究家でありタレントとしても人気の高い彼は、60代も終わりに差し掛かった今もなお、精力的に活動を続けている。食の有識者として政府の各種委員会の委員、団体理事などこれまで数え切れぬほどの役職を歴任してきた服部だが、その核となるのは、服部学園理事長であり服部栄養専門学校の校長でもある学校経営者、そして教育者としての顔である。

 そんな服部が、医学博士としての医学的な知見に基づいて20年近くも警鐘を鳴らし続けているのが、日本の“食卓の崩壊”だ。

「子どものいる家庭でもそれぞれ別々に食事をする孤食化が進んでいますし、さらに加工食品や“レンジでチン”する冷凍食品ばかりが家庭で出されるようにもなってきています。そのため、“おふくろの味”や“おばあちゃんの味”が日本の食卓で急速に失われつつあるんです。だけど、これらの味というのは、実は子どもにとって大切な教養の1つでもあり、幼少期に心と頭脳の奥深くに刷り込まれて大人になってもずっと失われないものなんですよ。いくつになっても、それらの味に接し、思い出すことで、ホッとして安心できるような…。それがなくなってしまったこれからの日本は非常に危ないと、ずっと言い続けているわけです」

 こうした危機感から服部は、1990年代半ばに「食育」の重要性に気付き、その後一貫してそれを提唱し続けている。今ではほとんどの人々にとって馴染みのある食育という言葉だが、普及のきっかけとなったのは1997年のことだ。厚生省の「21世紀の栄養・食生活のあり方検討会」の委員として招聘された服部は、自己紹介の折に、日本の教育現場の崩壊の原因が食育の不在にあるのだと説いた。その服部の意見に、当時の厚生大臣だった小泉純一郎が興味を示し、自民党本部で食育の意味や意義について話して欲しいと声をかけてきたのだ。

「国会議員の方々に話をするために何度も足を運んでいましたので、そのうちに『あ、食育が来た!』なんて言われてしまうほどでした(笑)」

 こうした服部の行動が引き金となり、2002年には自民党政務調査会に「食育調査会」が設置され、服部はそのアドバイザーに就いた。2003年の総選挙では小泉首相(当時)が食育をマニュフェストに盛り込むなど、食育をめぐる状況はまさに国家レベルへと拡大していった。そして2005年6月、ついに「食育によって国民が生涯にわたって健全な心身を培い、豊かな人間性を育むこと」を目的とした食育基本法が成立したのである。

 食育基本法は、総理大臣と12省庁の大臣、そして国家公安委員長が参加し、国家全体で食事の改善を目指すという、世界的にも例のない法律となっている。現在、国家事業としての食育は、内閣府が中心となり推進している。

 

食育の知名度は高まったが、正しい理解は進まず

 こうして食育の知名度は飛躍的に高まった。しかし服部は、… 続きを読む

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服部 幸應(ハットリ ユキオ)

1945年、東京都生まれ。立教大学卒業、昭和大学医学部博士課程にて学位を取得。服部栄養専門学校の理事長・校長を務めるほか、厚生労働省の「健康大使」他、さまざまな委員会や組織にて役職を務める。食育に関する活動の功績により藍綬褒章を受章。主な著書に「食育のすすめ」、「食育力」(ともにマガジンハウス)他多数。

学校法人服部学園 服部栄養専門学校について
■ 設立年月1939年
■ 本社所在地東京都渋谷区千駄ヶ谷5-25-4
■ ホームページ

http://www.hattori.ac.jp

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