2014.05.27 Tue

日本屈指の文芸出版社を支える“恋多き”編集者

株式会社新潮社 出版部部長 中瀬 ゆかり 氏

作家になる夢を諦め、編集者になる希望を抱く

 子どもの頃から典型的な文学少女だった。特にお気に入りだった作家は、「ショートショート(短編小説の一種)の神様」星新一だ。小説家に憧れ、自身もショートショートを書いたりして、姉や友達に読んでもらっていた。しかし、思い描くレベルの作品はなかなか生み出せず、やがて中瀬は、自身の力に疑問を抱くようになる。「小説家の才能は自分にはない。ならば作家を支援する編集者になりたい」──漠然とではあるが、中学校の後半頃にはそう思い描くようになった。いわば、客観的な視点で自分の作品そして才能への“ダメ出し”を、この時点でやってのけていたのである。

「作家として確たるテーマがあったのではなくて、とにかく本が好きだったので、ならば書くこともできるんじゃないかな、ぐらいの気持ちで書いていましたから。あのまま書き続けていたら大人になってから苦しんでいたのではないでしょうかね(笑)」

 大学に進学すると、もはや編集者になることは既定路線となり、1987年に念願の新潮社に入社する。狭き門で知られる大手出版社の入社試験にもかかわらず、中瀬が受験した出版社は、新潮社ただ一社だった。

「私の本棚に並ぶ本のほとんどが新潮社のものでしたので、それ以外の出版社に入りたいとは思いませんでした。一次選考で当たった当時の面接官は今では役員となっていますが、いい飲み仲間です。人間同士の相性も良かったのでしょうね」

 一方の新潮社にとって中瀬は、男女雇用機会均等法施行後の最初の女性編集者だった。それだけに、新人編集者・中瀬にかける会社の期待も大きかったのだろう。

 最初に配属されたのは、文芸書を中心に扱う出版部だった。文芸書籍の編集者を2年間務めた後、部内異動で文芸雑誌『新潮』の編集者となる。どちらも、文芸の世界に憧れ、編集者として作家をサポートする希望を抱いてきた中瀬にとって、理想的と言っていい職場だった。そんな環境の中で、精力的に数多くの作家との交流を深めていったのである。

 ところが、文芸畑の編集者として乗りに乗っていた矢先の1998年のこと、突然、月刊誌「新潮45」の編集部に異動となる。主に事件やルポを中心とする総合雑誌だ。 それまで文芸一本でやってきた中瀬だが、政治や経済といった、苦手としていたジャンルも勉強しなければならくなった。… 続きを読む

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 中瀬 ゆかり(ナカセ ユカリ)

1964年生まれ、和歌山県出身。奈良女子大学文学部英米文学科卒業後、1987年新潮社に入社。「新潮45」編集長、「週刊新潮」部長職編集委員などを経て2011年4月より出版部部長に就任。「5時に夢中!」(TOKYO MX)、「とくダネ!」(フジテレビ)、「垣花正 あなたとハッピー!」(ニッポン放送)などに出演中。

株式会社新潮社について
■ 事業内容書籍、文庫、新書、コミック、雑誌、マルチメディアなどの刊行物の制作・出版・販売
■ 設立年月1896年
■ 本社所在地東京都新宿区矢来町71
■ 従業員数393名(2013年10月1日現在)
■ 業種出版業
■ ホームページ

http://www.shinchosha.co.jp/

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