2013.05.28 Tue

ロボットが「一人に一台」の未来をこの手で

株式会社ロボ・ガレージ ロボットクリエーター 高橋智隆 氏

ロボットクリエーター 高橋智隆

就職の失敗で選んだロボット作りの道

 アニメやSF映画に関心がなくても、近ごろテレビCMなどで非常に「人間的」な動きをするロボットを見かけて、思わずその愛らしい動きに目を奪われたという人はいないだろうか。

 単3型乾電池2本を背負って、細いロープを必死で上りながらグランドキャニオンの登頂に成功したロボット。洗剤メーカーのCMで、手足や頭部をダイナミックに動かしながら、女性タレントと一緒に製品を紹介するロボット。これらはいずれも、同じロボットクリエーターの手によって生みだされたヒューマノイド(人型ロボット)である。ちなみに前者には「エボルタ」、後者には「ロピッド」という立派な名前がある。

ロボットクリエーター 高橋智隆 彼らを世に送り出した高橋智隆は、現在ロボット製作を行なう「ロボ・ガレージ」という会社の代表取締役を務めながら、東京大学先端科学技術研究センター特任准教授として、駒場キャンパスの中に研究室を構えている。

 高橋は1975年に大阪府で生まれた。立命館大学産業社会学部を卒業するが、翌年には京都大学工学部に再入学。そこで、本格的なロボット製作を開始する。

「鉄腕アトム」を見て、ロボットを作ること、所有することへのあこがれを抱いたという高橋は、子どものころから、画用紙を使った工作や「レゴ」、プラモデル作りなど、一貫して「ものを作ること」に夢中になっていたという。

 その後、中学生の頃はブラックバス釣り、高校生の頃からモーグルスキーに熱中し、大学生の頃はクルマをいじって遊んでいた。立命館大学卒業時には、釣り具とスキー用品両方を作るメーカーを第一志望したが失敗。そこで改めて、自分の進むべき道を再検討した。

「クルマ好きだったので、その道へ進むことも考えました。ただ、当時は自動車産業に世界的な陰りが見えていたころ。そこで、自分のものづくりに対する興味の原点であり、究極の機械である『ロボット』を作る道へ進んでみることに決めました」

 当時は、後にペットロボットとして人気を博すソニーの「アイボ」も、2足歩行とスムーズな動きで大きな話題となったホンダの「アシモ」も、まだ世に出ていなかった。ロボットを作っていくことが、将来的にビジネスになるという目算はあったのかと問うと、高橋は「なかったですね」と即答する。

「アトムのようなヒト型のロボットを、自分のものにしたい。でも、当時はそんなものどこにも売っていませんでしたから、自分で作るしかない。そんな、あくまで個人的なモチベーションがきっかけでした」

 

「1人で作る」ことへのこだわり

 高橋のロボット作りで驚かされるのは、設計からデザイン、部品の成型から組み上げ、動作のプログラミングという、企画から完成までのすべての工程を1人で行なっているということだ。このスタイルは、大学時代から、ロボ・ガレージを会社化した現在も変わっていない。また「この先も変えるつもりはない」という。高橋が生みだす作品を最終的に「魅力的なもの」にするために、その工程を「1人」でこなすことは、重要な意味を持っているのだという。

ロボットクリエーター 高橋智隆「多くの人の思惑が入ってくると、出来上がる作品が無難で魅力のないものになってしまうだろうという恐れは常に持っています。たとえば、アップルの製品は、スティーブ・ジョブズが有能な独裁者として、本来の社長の守備範囲を超えて、製品を生みだすためのあらゆる部分に口と手を出すことで、多くの人を魅了するものになり得たのだと思います。実際に、あれほどの大きな会社でそれをやるのは、相当に難しいことだったでしょう。何かを作っていくにあたって、『他の人に任せる才能』というのもあると思うのですが、僕にはそれがありません。だからこそ、最終的な作品のクオリティを、自分で納得できるものにするために、すべてを1人でやることを選んでいます」

 もちろん、1体のロボットを作り上げるためには、機械工学やデザインだけでなく、電子工学、人工知能など、さまざまな分野にまたがった専門的な技術やノウハウが必要となる。そうした部分については「あくまでも一定の距離を置いた、リスペクトできるパートナーと対等な形で協力して、自分の理想とする完成形を目指していく」という。

 

コミュニケーションは「デザイン」である

 さまざまな分野の技術やノウハウをまとめ上げることで、1体のロボットは完成する。その全工程を手がける高橋にとって、多様な技術要素を、ロボットのボディにいかにパッケージングするかというのは、重要な関心事のひとつだ。

 高橋はiPhoneを例に取り、そのパッケージングの重要性を説明する。… 続きを読む

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高橋 智隆(タカハシ トモタカ)
1975年生まれ。2003年京都大学工学部卒業と同時に「ロボ・ガレージ」を創業し京大学内入居ベンチャー第一号となる。代表作に「ロピッド」「エボルタ」「週刊ロビ」「FT」「Gabby」など。ロボカップ世界大会5年連続優勝。米TIME誌「2004年の発明」、ポピュラーサイエンス誌「未来を変える33人」に選定。エボルタによるグランドキャニオン登頂、ルマン24時間走行等に成功しギネス世界記録認定。2013年夏に国際宇宙ステーションに向けロボット打ち上げ予定。現在、(株)ロボ・ガレージ代表取締役、東京大学先端研特任准教授、福山大学/大阪電気通信大学客員教授、ヒューマンキッズサイエンスロボット教室顧問。

株式会社ロボ・ガレージについて
■ 事業内容ロボットの研究開発、設計、デザイン、制作
■ 設立年月2003年4月
■ ホームページ

http://www.robo-garage.com/


・研究室 東京大学先端科学技術研究センター
・所在地 東京都目黒区駒場4-6-1

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